楽譜14.サルバ・ノス1
憐れみの語り手、エレオスが政府の人間から逃れた後、私達は次の行動に移していた。テトラは通信機を片手に連絡を取っており、私とセレナーデさんは、周りの警戒を続ける。
「了解、列車に戻ります」
「シナヴリアさんらどうだったの?」
「一旦列車に戻って、エレオスの保護だって」
それが一番妥当な答えだ。現にエレオスは政府の人間に知られている。今眠っている政府の人間が、仲間に連絡をしていたら、かなり危険だ。いつ追手が来てもおかしくない。
「わかった。後気になったんだけど、この組織の拳銃って何で、皆眠っちゃうの?」
初めてテトラと会った時も、拳銃は実弾じゃなかった。現に眠っている人間は無傷だ。何か理由があるのだろうか?
「これ?催眠弾だよ、俺たちは自由の楽譜のために戦ってる。目的は殺しじゃないからね」
それを聞いて安心した。そうだよね、同じ殺しでぶつけたら、やっていることは、政府と同じだ。気になっていることも、わかったし、こんな暗い場所から移動しよう。
「行こうか、皆」
さて、列車までの距離だが、気張って行こう。重い腰を上げて、再びトウキョウの街中へ溶け込む。
「エレオス、トウキョウは初めて?」
「うん、音がいっぱい!すごく楽しい」
二人で仲良く手を繋ぎながら、街を見る姿は、側から見るとただの子供。
しかし、政府から追われている身。列車まで警戒が解けない。
「エレオス見て!ラッパがいっぱい」
「本当だ!オーケストラ楽器が多いね」
年が近いのか、二人の会話はとても楽しそうに見える。その姿にほっこりと、心が解かれる。セレナーデさんは時折、後ろを振り向き二人の様子を見守っている。
「楽しそうだね」
「うん、まだエレオスに聞きたいことは、あるけど、彼の心を溶かさないと」
「うん、急がずにゆっくりとね」
列車までの距離が近くなった頃、セレナーデさんは突然その場で止まる。
ヘードネとエレオスをこれ以上前に、進ませないように、腕を前に出す。
「誰だ」
人混みの中で、セレナーデさんは誰かに問い掛ける。政府の人間には見えない。しかし、セレナーデさんは正体が判明している。視線を真っ直ぐと、向けて声を掛ける。
この場から一切動かず、相手の様子を伺う。私は周りをぐるぐると見渡すが、政府の人間は姿はない。
「あんれ〜バレた?気配消したのに」
声だけが聞こえる。まるで、私たちを見下しているような、声色。声の主を探すが、まだ見つからない。そこで私は、セレナーデさんと同じ視線を向けて、隠れている人物を探す。
「テメェ政府の人間か」
「ハハっ、この服装見てそんなこと言える?わかってるくせに!」
人混みから風のように、飛び出してきた、真っ赤な制服の人間、制服と同じ赤い髪を揺らして現れた。コイツどこからきた!?姿が見えなかった!相手は小型のナイフをセレナーデさんに刃を向ける。
「うわ!」
エレオスが驚きの声を上げた理由は、ナイフを向けられた瞬間、セレナーデさんは、ヘードネとエレオスを抱えて、後ろへ飛んだからだ。そのお陰で、二人は無事だ。攻撃は軽やかに避けた。私は二人の前に出て、攻撃から守る。
「セレナーデさん大丈夫ですか!?」
「ささっと、チビ共を列車に急げ!」
こんな人混みの中で、戦うと言うの?でも、政府の人間は、街中で戦闘になっても関係ないのか?凶器を持っている人間を見て、街の人は混乱し始める。私たちは不安な視線が刺さる。
「おい、なんの騒ぎだ?」
「何かの撮影?」
「カメラないよ?」
街の人が戸惑っている、政府の奴は市民を気にしないの?もしかして、まさか一般市民も巻き込むことは、ないでしょうね?
でも、時間はない。時間が経つことでこっちは不利な状況に成りかねない。私は、セレナーデさんを信じる。
「ねー勝手に消えないでー」
私が足を一歩踏み出したが、セレナーデさんの背後からくるりと、振り替えて私に刃を向ける。私は何とか、二人を身を挺して守る。
「もう!何なのよ!」
腕に微かにナイフが新しい、服が避ける。幸いにも、破れてただけで済んだ。しかし、次は上手く出来るのか、わからない。
「おい!よそ見すんな!」
「してないよー」
エレオスが目的?早く動きたいのに、相手が邪魔すぎる。セレナーデさんも体術で攻撃しているのに、全然当たらない。
私も二人から、守りながら、攻撃を避けるだけで、苦しい。ドレスコードに換装出来れば、状況は変わるが、テトラにすら近づけない。
「おい、政府の人間だろ、市民様巻き込むな」
「犯罪者が市民なわけないでしょっ!」
セレナーデさんが持っている武器は、催眠弾の拳銃しかない。今は何とか、体術で何とかしているが、いつ崩れるのか、わからない。
必死に可能性の回路を導こうとするが、考えがまとまらない。私達が逃げようとしたら、相手に素早く近寄られる。この繰り返しだ。
「俺がちんちくりんの作り手と知って、近づかせない気だ」
「楽しい〜やっぱドレスコードないと、ただの人間?」
相手も私達がドレスコードの換装後がわかっている。だがら、意図的に換装させないように動いてる。
やっぱりドレスコードがないと、相手から逃げることも難しい。私だけでも攻撃に参戦して、セレナーデさんがドレスコードに、換装する時間を与えるのか?
「イロハ、まずは相手の距離を、取ることを考えよう」
そこで、イロハは私達と同様守りに徹していたが、ホルスターから、拳銃を取り出した。納得した。作戦の意図が…
「わかった」
「セレナーデと同じ拳銃だから、援護から射撃する」
イロハが拳銃に弾を装填する。ガチャリとシリンダーに銃弾が入り込み、相手に狙いを定める。
私はヘードネとエレオスの手をぎゅっと、強く握り、いつでも走る準備をする。ヘードネは平気そうだが、エレオスは怖さに手が震えていた。大丈夫絶対に逃げる。
「エレオス絶対に逃げるから、走る準備してね」
「うん…」
力なく答えたエレオスは、瞳が揺れていた。まだこの状況に慣れてないようだ。皆は弱くない。今は、私達を信じてほしい。エレオスに想いが伝わるように、手を握り直す。
「走って!」
テトラの銃撃音が響いた頃、私達は全速力で走り出す。後ろでは、物が激しくぶつかり合う音が鳴る。
振り返ってはならない。二人は、戦っている。私は今汽車に戻ることだけを考えろ!
今回も観ていただき、ありがとうございます。連続更新ができて嬉しいです。引き続き作品をよろしくお願いします!




