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自由の楽譜 〜音を禁じられた時代に〜  作者: 如月
第2章:快楽の楽譜編
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楽譜13.ライト・オブ・ライフ

「テトラ追いかけよう」


「うん」


 ヘードネたちが男の子を追いかけ、路地裏へ入り込んだ。私達も明るい街から、暗い街へ入る。


 路地裏は明かりが入っておらず、空気感がジメッとしている。奥へ進むたびに政府の騒がしい声が響く。


「近づくな。まだ相手の手が分からねえ」


「はい。もちろんです」


 しばらく進んだ先にはしゃがんだ状態で、セレナーデさんとヘードネが相手の出方を待っている。流石経験値が違う。私も二人を見習って、相手の出方を見る。


「貴様からオン源が出ている。楽譜を持っているな」


「ち、違います!」


「いや、間違いなくそうだ拘束する」


 男の子は空色の瞳に涙を貯めて、首を横に振る。紺色の髪が左右に揺れている。

 必死に否定している姿は、男の子の気持ちがひしひしと伝わる。


 オン源?この子が楽譜の作り手?本当にそうだったら、この子が殺されてしまう。急いで助けないと!身体が青年に向く前にセレナーデさんが前へ出る。


「貴様何者だ!グハッ!」


 セレナーデさんの手元には、拳銃が握られていた。正確に政府に向けられた弾丸は、一発で仕留められていた。だが、血は一切流れてない。


「おい、生きているか?」


「あ、ありがとう」


 拳銃をホルスターに収めたセレナーデさんは、男の子の無事を確認した。身長に合わせて目線を合わせる。やっぱり、小さい子の扱いに慣れている。いや、今は男の子の無事だけを考えよう。


「名前言える?」


「エレオスです」


 私は男の子の元に近寄り、名前を聞いた。しかし、政府の尋問の影響で、瞳はゆらゆらと揺れている。私達を怖がっているのだろう。


 できるだけ、声色を優しく、表情も柔らかく。目線もまっすぐと見つめる。


「そう、エレオスね私はイロハ、こっちの人がセレナーデさん、で可愛い子がヘードネ、最後にテトラ」


 メンバーを順に紹介したことで、エレオスも私達を怖がっている様子が薄れてきたようだ。


 こんな幼い子供でも、簡単に命を奪うなんて、政府はどうかしている。怒りの感情がふつふつとわいてしまう。


「どうしたの?」


 エレオスが私をじっーと見つめており、何か気になることがあったのか、と確認の声を掛けた。何か聞いたげに、そわそわとしていたが、覚悟を決めて声を出した。


「あなた方は…作り手なんですか?」


「そうだよ、どうしてわかったの?」


「貴方方から、楽譜の音色が聞こえるんです」


 楽譜の音色。それは、私たちが持っているもので間違いないだろう。


 セレナーデさんと私はオン源ミュートを、付けており、オン源の反応が無いはずだ。それなのに、エレオスは私たちが楽譜を持っていることを当てている。


「テメェ語り手か」  


 セレナーデさんが、問いを出すと驚いた表情で私達を見つめていた。それは、秘密を隠している子供が、暴かれたような表情だった。


「やっぱり、作り手の方なんですね、僕は憐れみ曲の語り手です」


 語り手つまり、楽譜の曲を創造する者。憐れみの曲を語る者。もし、エレオスが始末されていたら、憐れみの曲が永遠に曲が創造されなかった。


「セレナーデさん何で、エレオスが語り手だって、わかったのですか?」


「語り手には、オン源ミュート関係なく、楽譜の音色が聴こえるってあんだよ」


 シナヴリアさんは、楽譜以外にも語り手の保護のために、大勢の行動を提案したのか?


「そう言うことですか、エレオスの曲の楽譜はあるの?」


「これしかありません」


 差し出されたのは、半分以上が燃やされた楽譜。エレオスの手のひらを見ると、痛々しい火傷の跡が見えた。しかし、何か事情があると考え、言葉を押し殺した。


「僕の作り手は殺されたんです」


「殺された…」


「だから、僕は求めては駄目なんです。曲を語っては駄目なんです」


 エレオスはまるで、自分のせいかのうよに責めているように見えた。殺された理由なんて、政府が悪い。現にアイツからは幼い子供でも殺しを躊躇しないのだ。


「駄目じゃない!エレオスは悪くないよ?」


「メロドラマが殺されたのは、僕が全部悪いです!」


 この場から逃げ出そうとしたエレオスに、手を掴むにも間に合わない。目の前で狙われている命を奪われるわけにはいかない。


「おい勝手に消えるな」


「ひぃ!」


 パッシと反射的に掴んだ手首をセレナーデさんがエレオスを捉える。思わず声を漏らしたエレオスには、私も同情した。あれは、流石に怖がるのは仕方ない。でもよかった。


「セレナーデさん、エレオス怖がっていますよ」


「怖くねーよ!」


「エレオスは危ない目に合っている。私達は曲を語る人を守りたいの」


 今のでわかった。遅かれ、速かれ、政府は何が何でも、楽譜をこの世から消したいようだ。そんなの絶対に許さない。


「怖いと思うけど、私達に着いて行ってほしい」


 腰を下げて、再度エレオスに問いかける。私達を信じてほしい。絶対に命は守る。


 作り手は守れなかったけど、私もこれ以上命が消えるのは、嫌だ。


「行こ、セレナーデ、イロハ、テトラ、シンフォニア、シナヴリア、みんな優しいよ」


 セレナーデさんの隣のヘードネも、エレオスに小さな手を差し伸べる。


 彼女の純粋な言葉が、心を動かしたのだろう。伸ばされた手を震えながらも、エレオスは強く握った。

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