楽譜11.りんりん
何とか、カラオケで100点を取り、一旦解散になった私はテトラを探しに汽車内を散策。オン源楽譜が見つかるまでは、今はアオモリで姿を隠している。
「鈴の音?」
奥の部屋からは、鈴の音が鳴っている。一つじゃない。多分4つぐらい。ある音は、ちゃんちゃんと控えめな音。もう一つは鈴を大きく振っており、音が大きい。
鈴の音がする部屋から、ドアノブに手を掛け、中を覗き見る。そこには、カーペットの上に、テトラとヘードネが座っていた。
「もっと、大きくして!」
「でも、これだと音が乱れるよ?」
「いいの!」
年上の兄に一緒に遊ぶように懇願する姪っ子を見ているようだ。それに、鈴の音はリズムの役割り、スピーカーからは、快活な音楽が響いてる。私のカラオケみたいな特訓?
二人の邪魔にならないように、静かに去ろうとしたが、ぱっちりと、ヘードネと目が合う。バレた。
「あーイロハ!」
「バレちゃった」
「どうしたの?」
私に気づき、ヘードネはトコトコとドアの前に来た。両手には鈴を持っており、歩くたびに鈴が鳴り、小動物が歩いてるようだ。
「鈴の音が聴こえて見に来たら、癒されてた」
「癒されて?癒されるんだ?」
「両手に楽器を持って、一生懸命音を鳴らすは癒されるよ」
にしても、おもちゃみたいなデザインの鈴だ。持ち手は大きく、カラーも緑やピンク色のカラーリングされている。子供向けの楽器なのかな?
「ヘードネ癒される?」
「癒された。カラオケ特訓で結構疲れちゃったし」
それでも、セレナーデさんのお陰で人生初の100点を取れたので、一件落着。
あれからもう一曲歌ったが、セレナーデさんが激怒した残念無念。
もしかすると、歌が上手になったと思ったが、違った。
「カラオケ…音漏れ入れたよね」
「嘘、恥ずかしすぎる」
曲が創造出来るテトラに聴かれたとなると、本当に恥ずかしい。
やっぱりカラオケは苦手だ。いつぞやか、友人とカラオケに行っている時、他人に部屋を間違えられた時の現象だ。
「途中から上手になってたよ」
「ならいいか、テトラは何やっているの?」
「俺とヘードネは互いに好きな楽器を弾いていた。他人のリズム知るのは、語り手に必要だろうって、シナヴリアが言ってた」
語り手の特訓方法も独特だ。私たちはカラオケで原曲を理解する。対して、語り手は創造の幅が増える。いままで、曲について深く考えなかったけど、奥深いものだ。
「特訓って身体を鍛えるイメージが強かった。結構頭で考えることが多いね」
「それも大事だけど、基礎は曲の理解度を上げることだよ」
基礎はやっぱり今までの知識の応用。政府によって制限されていた。音楽の知識を知らないと!作り手以外にも語り手のことも、テトラを知るためには語り手のことも知る!
「ねぇ!何か手伝えることある?」
「そうだな…ヘードネのリズム感が掴めなくて、少し困っている」
ふーむ。ここに行く前の音を思い出す。大きい音と一定の音。曲で良くあるテンポだ。メインの楽器を大きくして、サブのリズムを取る音は小さい。でも、微妙に食い違っている。
「さっき聴いていたけど、大きな音と不規則な音よね」
「そう、普通なら一定の音がいいと思うけど」
「うーんでもなんか違うのよね」
それだと、ヘードネのチャーミングな動作と子供らしい音の良さが活かせないし、一定の音も勿論良いけどな。
「ちゃんちゃん~」
両手に鈴をもって、はちゃめちゃに奏でている音を、鳴らすヘードネはやっぱり愛らしい。
「似合っているんだよね。演者の気持ちが伝わるなら、いいと思うの」
まだまだ、分からないけど、ソナタの曲のような正確な音、私のアドリブだらけでバラバラな音。だけど、全部良いと思う。
戦っている中で私は敵の曲に魅了された。それは、演者の奏でる姿が必死に音を奏でようとするからだ。
「演者の気持ちが伝わるなら…いいのか」
「そう、どれだけ下手でも一生懸命な姿は美しいものでしょ?実際私も毎回バラバラな音だらけでしょ?」
「確かに俺も無意識にバラバラな、音を創造していた。うん、わかったよ、イロハやってみる」
考えがまとまったようだ。いつも、テトラに曲を創造してもらってばっかりだから、少しは助けになったかな?
「テトラ!早く!」
「うん」
待ちくたびれたヘードネは、テトラを呼び出し、二人で名のない曲を奏でる。しかし、鈴の音はいずれバラバラだ。
「音はバラバラでも、二人良さも出したいしね」
お節介かもしれない。でも、美しい音が目の前に誕生するかもしれない。その誕生を私も手伝いたいな。
二人の元に近寄ると、互いの瞳が私を見つめる。別に悪い音じゃないから、そう、見つめないで、大丈夫。その意味合いを込めて、声色は優しくする。
「テトラ今の一定の音をもう少し、小さくしてみて、ヘードネはもっと大きく振っていいよ」
二人は、互いにうなずき合い、鈴を振る。ひとつの楽器だけでも、耳が心地よい。
二人の姿を見ると、納得する音が出たことによって、表情が晴れる。
しゃん、しゃんと静かな空間の部屋に響き渡り、うっとりしてしまう。二人は納得するまで、鈴を鳴らした。
「ありがとう、イロハ分かった気がする」
「お役に立ってよかった」
「イロハ、良い音でた!」
この小さな曲の誕生に私も清々しい気分だ。前の生活だったら、絶対に出来なかったことだ。些細な出来事だけど、やっぱ音楽には幸せがいっぱい詰まっている。
「おい、ちんちくりん何やってんだ」
「あれセレナーデさん、どうしたんです?」
「てか、何で俺の楽器部屋にいるんだよ」
あっ此処はセレナーデさんの部屋だったんだ。全く分からなかった。
どちらかと言うとヘードネの部屋だ。ファンシーなカーペットにピンク色の壁紙は、セレナーデさんの部屋のイメージがない。
「あっ、すみまんせん流れで、居ちゃいました」
「別にいいけどよ、珍しくちんちくりんが、しっかりした音で奏でていたからよ」
「ほんと!?」
ヘードネは扉の前のセレナーデさんに一直線に走って、身体へぴょんとジャンプした。
「急に抱きつくな!」
腰元へ勢い良く飛んだヘードネは、セレナーデさんによってキャッチされた。慣れていらっしゃる。怒っている割には、嬉しそうだ。
「セレナーデさん嬉しそうじゃないですか」
「うるせぞ!新人」
もう、その怒りには慣れましたよ、セレナーデさん。
それにしても何処で、音が流れているのか気になりますよね。
非常に共感する。考えることは似ている。なんだか、嬉しい。
「皆緊急!直ぐに先頭車両に集合」
汽車内のスピーカーから、シナヴリアさんの声が響く。
この場の全員がほのぼのした空気から一変する。また、戦いが始まる空気感が漂った。
いつも観ていただきありがとうございます!今回が修行回一旦終わりです。新章突入しちゃいます。ヘードネ、セレナーデ中心です。




