下調べがメンドクサイ
小説投稿にまつわるつぶやきエッセイです。
自分の小説って何度も読み直したくなりません?
「いや~、メチャクチャおっもしろいな~」と浸ってしまいます。
そうやって何度も読み返してみると、いろいろ気がつきます。
投稿初心者なら、いや、おそらくベテランの方でもやってしまうだろう、誤字脱字。
そして、知識不足ゆえの間違い。
小説家になろうに載せた私の長編『「日本人」最後の花嫁』の宣伝を兼ねたお話です。小説の執筆途中で気がついたけど、放置した問題があります。この小説のあとがきに書きましたが、大きなネタバレではないので、このエッセイでも取り上げます。
1 未来の日食
この小説には、日食や月食といった天体現象が登場します。発生する時間と場所は、実際にこれから起きる月食や日食に合わせました。
元にしたのは、In-The-Sky.org というサイトで、2199年までの日食や月食が確認できます。日食が発生するルートが、世界地図にわかりやすく表示されています。
エジプトで小説の年代に皆既日食が起きることがわかり、取り入れてみました。というか、この日食の日付をベースにして、物語の時系列を設定しました。
エジプトといえばピラミッド。ギザの三大ピラミッドで起きる皆既日食シーンってカッコいいよな~と日食のルートをよーくみたら……この皆既日食、エジプトを通過しますが、ギザのあたりは部分日食になってしまいます。
リアリティに拘った小説じゃないから、ピラミッドで皆既日食にしてもいいじゃん、その方がカッコいいって。
が、モヤモヤする自分は、小説のシーンを、実際に皆既日食が起きる町に設定しました。マイナーな地名だったので、ウィキペディアやGoogleの地図を参考にして描写しました。
ここまではよかったのですが、小説を完結させて半年経ち、In-The-Sky.orgで調べてみたら、その皆既日食が、ただの皆既日食ではなく金環皆既日食ということがわかったのです。
金環皆既日食とは、ひとつの日食で、金環食と皆既日食が発生するもので、かなり珍しい日食です。金環食になるか皆既食になるかは場所によって違います。
で、小説の舞台では金環食ではなく皆既食となっているので、まあ描写を変えることはないよなあ、と直してませんが、未だにモヤモヤしてます。
・小説内で金環皆既日食だとまったく突っ込んでいない
・小説の町では太陽が完全に隠れる時間は四十秒だが、小説の皆既日食シーンは、ざっと三百字。早めに朗読して一分で時間オーバー。
・金環皆既日食では、金環食と皆既食が見られる特別なポイントがある。マニアはこの特別ポイントに出かけて観望する。小説では登場人物が、わざわざ日食を見に遠いエジプトに出かける。しかし金環皆既日食だと知ったら、エジプトではなく金環食と皆既食が見られる特別ポイントに出かけるのでは?
すみません。これだけモヤモヤしているのに、直していません。
2 月の日食
小説には、地球からの日食だけではなく月から見る日食も登場します。月の日食とは、太陽を地球が覆い隠すことで発生します。
この月の日食では、地球の周囲は赤くなり街灯りが見える、と言われています。当初、この通りに書いたのですが、月周回衛星「かぐや」の撮影した写真では、地球の周囲は青白く光っています。なので描写を変えました。
あと、地球の街灯りが月から見えるのか、ちょっと私にはわかりません。少なくとも、月から撮影した写真には映っていないようです。国際宇宙ステーションからだとはっきり見えますが、距離が全然違うのでどうなんでしょう?
3 ビザンツ帝国末裔の宗教
小説に、とにかくヨーロッパの高貴な血筋のお坊ちゃまを出したい! と考えたのですが、私はその手の知識が全然ありません。
ないなりに思いついたのが、ビザンツ帝国皇帝の末裔、という設定でした。
ビザンツ帝国とは東ローマ帝国とも呼ばれ、ローマ帝国分裂後、千年以上も続いた国です。ローマ帝国の王朝は頻繁に交代しますが、ビザンツ帝国最後の王朝がパレオロゴス朝で、二百年近く続きました。
調べてみると、ビザンツ最後の皇帝の直系は残っていませんが、傍系がイタリアに亡命し今も残っているそうです。
ということで小説に、ビザンツ帝国皇帝の末裔、イタリア貴族パレオロゴを父に持つお坊ちゃまを登場させました。
このお坊ちゃまは、教会に通っています。小説でキリスト教とも書いていませんが、カトリックと言わんばかりの描写をしています。
が、世界史ダメダメ作者は、連載後半で気がつきました。ビザンツ帝国の宗教は、カトリックではなくて東方正教会です。世界史の基本中の基本なのに、ど忘れしていました。
私のリサーチ力では、実在のイタリア貴族のパレオロゴさんの宗教がカトリックか東方正教会なのかは、わかりませんでした。
ただ貴族かどうかはわかりませんが、カトリックのパレオロゴさんはいらっしゃるようです。ということで、そのままにしてあります。
以上、調べたつもりが調べきれてない話でした。
小説を書くにあたって「下調べをちゃんとしましょう」といわれます。
プロ作家を目指しているなら、必須でしょう。
一方、小説を誰にも公開するつもりがないなら好きに書いても問題ないでしょう。身内限定の小説なら、限られた読者を想定して書けばいいわけです。
しかし、ウェブに公開し誰かに読んでほしいけど、プロ志望ではなく趣味として活動している私みたいな人間の場合、どーしたらいいのでしょう?
下調べってキリない~永久に書けない~って思いません?
今回の小説も自分なりに調べたつもりですが、やっぱり粗が出ます。
流行りの異世界ファンタジーだって、本気で調べるならラテン語勉強しないとって話になりそうです。
最初からそういうスキルのある方は、スキルを活かした素晴らしい作品を書けばいいと思います。
が、スキルがない! 調べるの面倒だ! それでも書きたいんだあ!
という場合……
とりあえず書いちゃえ!
わからないところは、妄想する、または書かずにすむよう、ごまかそう!
え? ちゃんと調べろって?
もちろん、調べるに越したことないです。
ですが、書きたいのにいつまでたっても話ができないよりは、見切り発車し、未熟でも間違いがあっても、何か書いて完結させる方が大事じゃないかって思います。
当然、素人が書いた小説、私のも含めて微妙な小説、いっぱいあります。
●イチャイチャしてるだけで、オチないんかあ!
●オリジナリティゼロ、どこにでも転がってる話じゃん
●スキルゼロのおばさんに、スパダリの束縛愛ってありえなくねえ?
読む人は文句いいます。
誰よりも、最初の読者である自分自身が、脳内で突っ込みたくなります。
私もそうでした。
脳内で突っ込む読者と戦いながらの執筆でした。
しかし、ですね。
オリジナリティゼロだろうが、無知だろうが、願望丸出しだろうが、小説を完成させるってだけで、中々すごいことなんじゃないかって思ってます。
まるパクリとかコピー&ペーストは論外だけどね。
脳内の厳しい読者と戦いすぎて、リサーチなどに時間がかかりすぎて、未完の大作で終わるぐらいなら、チャッチャと完結させた方がいいんじゃないでしょうか。
私もアップしてない未完の小説、たまってます。多分それらはずっと未完のままです。
有料の小説・漫画でも未完の大作がゴロゴロしてます。
趣味の小説書きは、学校や仕事や家事育児の隙間時間で活動しています。学生さんは受験勉強が迫ったら小説書きどころじゃありません。社会人だって主夫・主婦だって、環境の思わぬ変化で、小説を中断せざる得ないこともあるでしょう。
何となく飽きた、気が乗らなくなった、で、中断するのも自由です。
でも、知識がないから、調べるのが大変だから、で、中断しちゃうのはもったいない。
自分の持ってるカードを駆使して、開き直って完結した方がいいと思います。
紙の本と違ってウェブ小説はいくらでも直しがききます。
誤字脱字は、アップする前に見直すべきですが(でも、見つかるんだよ~)、知識のなさは、あとでカバーすればいーんです。
と、書く人間である自分はそう思いますが、読む側としては、違うんだな。
私は小さい時から宇宙の本が好きで、入門書をチョコチョコ読んでいます。
なのでタイトルに「宇宙」と掲げてあるなら、児童書レベルの宇宙の知識はあってほしいと思っちゃうんです。
もちろんウェブの無料小説にはそんなことは求めませんが、プロならSF作家じゃなくても、「宇宙」小説を出す以上、流星・彗星・衛星・小惑星・惑星・恒星・銀河……ざっくりこの程度の単語の意味は抑えてほしいな~というのが、宇宙好きの願いです。
趣味の小説では、どこまでリサーチすべきか?
作品の完成を優先し、どーしても自分がモヤモヤするところを、できる範囲で調べる。できる範囲で解決しなかったら、ゴメンナサイ。
メインテーマに知識の補強が必要なら、入門書一冊は読んでおこうね、という、無難な結論に落ち着きます。
何でこんなことを書いたかといいますと、X(旧ツイッター)の影響があります。
私は小説投稿にあたって、Xで宣伝すると良い、という記事を見かけたので、つぶやきを開始しました。
私なりに小説の宣伝をしてみましたが、その効果は……うーん、どうかなあ? コツがあるんでしょうね。
なので自分でつぶやくより、ずらずら~と展開されるタイムラインを見る方にシフトしてきました。
しかしXを見すぎると、レベル高い投稿者さんの話に引きずられます。
もっと調べないとダメなんだ! こんな下手くそな文章じゃ書く意味ない! と思いつめ、書けなくなってしまいました。
でも、Xってすごいです。
プロットを書いたのに書き進められない、なんて愚痴を書いたら「まず、書きたいことを書いてからプロットを書く、という方法もある」とプロの作家さんから返信をいただきました。
本当にありがたいことです。
次回も、小説についてダラダラ語ります。ぜひともお付き合いのほど、よろしくお願いします。