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・殺人鬼ラドムの起死回生 - 恩赦 -

 監獄での強制労働生活もこれで7年――いやもう8年目だ。


 ここに入ったばかりの頃は敵ばっかで死ぬかと思ったが、監視官時代の経験とギャング時代のコネが運良く生きてなぁ、今は運び屋としてどうにか生き繋いでいる。


 そんな俺の前によ、おかしな話が舞い込んできた。


「恩赦……? 看守さんよぉ、嫁さんでも寝取られたかぁ、おーい……?」

「嫌なら他の者に任せるだけだ」


「おい、ちょ、ちょっ待てよ……っ」


 その話はいかにも怪しいが、条件そのものはバカみてぇに美味しかった。


「マジでその催しに参加すれば、恩赦が下りるのか……?」

「そうだ。お前は無罪放免になる」


 貴族様ってのはバカ野郎ばかりだな。

 重鎧をまとった囚人と、新型の剣を持った軽戦士を戦わせて見せ物にしてぇらしい……。


 俺の力量を見誤りやがって、クソ貴族どもが。

 いいぜ。恩赦なんて信じちゃいねぇが、また1人誰かを殺せるならやってやるさ……。


「へぇ、ちなみに俺の相手は?」

「王国たっての凄腕の貴族様だ」


「そいつぁいい!!」


 俺を見せ物にしようとするその貴族様を、衆目の面前でぶっ殺してやろう!

 どこの誰だろうとかまわねぇ。


 人が殺せるなら、俺はもうなんだっていい……。

 俺はその話に乗った。


 すると話がはええ。

 俺はすぐに城へと護送されることになった。

 お高くとまった外交官どもの前で俺を見せ物にするそうだ。


 へへへ……最高じゃねぇか。

 重鎧を着た俺が、軽装の剣士になんか負けるはずがねぇ。どうとでもゴリ押せる。


 ここはせいぜい、シャバの空気と殺戮を楽しませてもらうとするぜ……。


「ふん、間抜けめ」

「ああ? なんか言ったか、兵隊さんよぉ……?」


「着けばわかる」


 囚人用の檻の付いた荷台に乗せられ、俺は懐かしの王都に帰ってきた。

 王都の連中は俺を恐怖に凍り付いた顔で見ていた。


 へへへ……。

 人の指をコレクションする危ないやつだって、俺ぁ結構評判になってたぜ。


 こんなことなら、もっと派手にやってりゃよかった!

 もっと、もっとあいつらを恐怖させてぇ……!


 俺は家畜のように檻に閉じ込められたまま、一生くぐることなんてねぇだろうと思っていたやつをくぐった。


「あれが殺人鬼ラドムか……」

「あの方、なんでニタニタ笑っているんですの……? 気味が悪い……」


 でかい馬屋と庭園がある。

 庭園にはお高くとまったバカどもが集まり、遠巻きに俺を恐れ混じりに見物していた。


「よそ見をするな、歩け!」

「痛ぇよ。俺は珍獣様だぞ? もっと丁重に扱えや、ヒャハッ」


 たかが雑魚兵士に背中を突かれて歩かされた。

 やがてでっけぇ練兵所が見えてきて、俺は宮殿から生えていた休憩所とやらに押し込められた。


 どう見世物を盛り上げてやろうかと妄想を広げると、ぶつぶつと独り言が漏れていた。

 監獄で付いちまった悪い癖だ。


「なぁ、兵隊さんよぉ……早く人を殺させてくれよぉ……?」

「お前、誰が相手か聞かされてないのか?」


「誰なんだよぉ……っ?」


 やっと聞き出せるのかと期待して、俺は外の社会じゃ見せられない狂った笑顔を浮かべていた。


「危ない危ない、どうやらそれも含めて見世物の一部らしい。意外な相手だ、期待していろ」


 なんだよつまんねぇ。

 まあいいさ。

 誰だろうと、貴族のボンクラ相手なら付け入る隙がいくらでもある。


 俺は見世物の準備が終わるまで待たされ、やがて鎧を着るように要求された。

 フルプレートアーマーにフルフェイスヘルム、ガンドレッドにグリーブときた。


 いったいこんな鉄の塊相手に、どうやって軽装歩兵がやり込めるつもりなんだか、貴族様ってのはどうも頭がおかしいみてぇだ。

 ま、俺にだけは言われたくねぇだろうけどな、ヒャハハハッ!!


「ラドムよ、何か言い残すことは?」


 さあ殺しに行くぜ。

 ってところで偉そうな坊さんが現れて、俺に哀れみを恵んでくれた。


 だから俺はよ。


「ああ、聞いてくれよ坊さん……」

「祈りを通じて、私は貴方の弁明を神にお伝えしましょう。貴方が異常者なのは、神が人を完璧にお創りに――」


「アンタ娘がいる歳だよなぁ……? ああ、神様……俺がこの男の娘の○○○にナイフをぶち込んで『助けてお父様ぁぁぁぁっ!』って、言わせてやりてぇ……ヒャハハッ」

「ぅっっ……?! な、なんという罪人……貴様など地獄に堕ちてしまえ、この異常者め……っ!!」


「ヒャハハハッッ、シャバに出たらマジでテメェの娘を切り刻んでやるのもいいかもなぁ……っ!」


 俺は小屋から蹴り出され、真っ昼間の日差しの歩かされて練兵所の中心に連れてゆかれた。

 異国の格好をした偉そうな連中がどうやら主賓様らしい。


 王冠を頭に乗せたいけすかねぇ男と、それに似たやたらでけぇ一枚目が俺を待っていた。

 王侯貴族には詳しくねぇが、ありゃどう見てもよぉ……?


「これよりこの蒼銀の剣、アオハガネの力をご覧に入れよう。対するこの男の名はラドム。快楽殺人者の疑惑をかけられるも、証拠不十分で無期懲役となった、クズの中のクズだ」


 ギルベルド王子じゃねぇか……。

投稿が遅くなってすみません。

台風と停電のコンボでネットに繋げませんでした。

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