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・経済戦争に勝利するために、製鉄事業を拡大しよう - 城壁より彼方へ -

「お役目を離れるのは断腸の思いですが……殿下、リドリー様の護衛はお任せを!」

「うん、成果を期待しているね、トーマ」


 トーマと母上にはある重要な任務が任された。

 それは俺が迷宮で手に入れたあるスキルに起因することだった。


「大丈夫、アリク? 夜、一人でも眠れる……? ああ、心配だわ……」

「子供じゃないってば……。子供だけど……」


「そうよ、まだ貴方は子供よ。子供は子供らしく、もっとゆっくり親離れしてちょうだい」


 リアンヌを見送った次は、母上とトーマの見送りだった。

 母上は我が子を抱き締めて、そのスベスベの頬を頬へと擦り付けた。


「いってらっしゃい、母上。母上が帰ってきたら、たっぷり甘えることにする……」


 リアンヌとの別れで気持ちが弱っていたから、ついつい声もか細くなってしまっていた。

 そんな子供の様子を察して、母上は何度も背中を撫でてくれた。


「いってきます。お母さん、アリクとロドリックのためにがんばってくるわ」

「うん、父上のためにもほどほどにして帰ってきてね。父上は母上がいないと妙に静かで困るんだ」


 俺はスキル【ダウジング】と、気配察知能力を持つ超優秀な護衛トーマを母上に預けた。

 二人の役目はこの離宮を出て、国内に眠る砂鉄や鉱山を探し出すことだ。


 ちなみにトーマは昨晩遅くに結局帰ってきて、この急な話を父上に指名された。

 ヤクサさんに負わされたあの傷は、俺がトーマのスキルスロットに自己再生スキルを貸し与えることで、一晩で完治させた。


 母上は父上の見送りを待つことなく、トーマと一緒にこの離宮を出て行った。



 ・



 庭園で芝生に腰を落ち着かせて二度寝をしていると、そこに間に合わなかった旦那様と、その小姓が飛び込んできた。


「アリク、リドリーは……?」

「ん……。少し遅かったね、もう行っちゃったよ」


「くっ……。すまん、外交官とのやり取りが思いの外に長引いてな……」

「陛下、王自らが王宮を全力疾走するのは、シュールというか、さすがにいかがかと……」


 父上とジェイナスは外交とバックアップ役だ。

 中央から人員や資金、物資を運ぶ役をこれまで通り受け持ってくれている。


「父上には僕がいるよ。せっかくだし、少し一緒に休もうよ」

「いや、実は……。次の外交官を待たせてしまっている……」


「父上……」

「困った国王陛下です。相手の機嫌を害したらどうするのですか」


 父上たちが受け持つ仕事は煩雑で気を使う激務だ。

 自分が社交界に縁のない庶子で良かったと思わざるを得ないほどに。


「しょうがないな……。じゃあ一緒に城壁に寄らない? もしかしたら、【鷹の目】スキルでまだ母上たちが見えるかも」

「いえ殿下、只今のロドリック陛下にそんな余裕は……」

「行こう、アリク!」


「ジェイナスは時間を稼いでおいて」

「……無粋を承知で言いますが、お急ぎ下さい、陛下」

「う、うむ……すまん」


 父上の手を引っ張って離宮の庭園を走ると、急に幸せな気分になった。

 後ろを振り返ると、父上も我が子をゆるゆるの笑顔で見ている。


「アリクッ、我の背中に乗れ!」

「え……わぁっっ?!」


 開き直った父上は息子を背中におぶり、王宮を駆け抜けて城壁を上った。

 父上の固有スキルは【政治・LV3】で、それを【鷹の目】と入れ替えてあげた。


「いたっ、リドリーとトーマだ! はっはっはっ、リドリーのやつ、あんなに笑って……っ」


 まるで自分を見ているかのような気分になった。

 リアンヌを別れた後の俺も、もう見えないとわかっていても彼方に目を送るのを止められなかった。


 だから『外交官さんはいいの?』とは言えなくなってしまった。


 俺たち現場が経済封鎖を破る鍵を提供し、父上たちがそれを使って封鎖をこじ開ける。

 そのためには、さらなる塩と鉄の大量生産が必要だ。


 特に最初の一歩は諸国への販売ではなく、試供品の寄贈という形の買収になるだろう。


 満足に母上の見送りもできないほどにがんばる父上の熱意に報いるために、俺も再びグリンリバーに出向する日のために、こつこつと下準備を進めていった。

宣伝となります。

拙作、ポーション工場のコミカライズ担当さんが決まりました。

既に別名義で商業で活躍されている「とだかづき」先生です。


まだ少し先ですが、マンガがうがうでの連載が(多分)もうじき始まります。

この機会にアプリ・マンガがうがうをインストールして、公開を楽しみにして下さると嬉しいです。


世にがっかりコミカライズも多いですが、非常に良い仕上がりになっています!

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