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・今日はうちに泊まっていこっ、ねっ!? - 僕の婚約者は常に強引 -

 大公様はアリク王子が寄ってくれるとは思っもていなかったみたいで、彼はまるで久々に帰ってきた息子のように、俺のことをとても明るく迎えてくれた。


 ちなみにリアンヌは金貨1枚だけを残して、稼ぎの全部を父親に差し出した。

 『領地のみんなのために使って!』と、ナチュラルな聖人ムーブをそえて。


 残り1枚の金貨は自分で磨いて部屋に飾るそうだ。

 話がまとまると王子は公女の部屋に引きずり込まれ、そうしてやっと、トーマ抜きの二人きりの時間が訪れた。


 時刻はもう夕方だった。

 互いにまた子供に戻って遊びたかったけど、このままここでゆっくりしていたらすぐに日が陰ってしまう。


「泊まっていけばいいのに……」

「母上を心配させちゃうよ」


「使いを送ればいいじゃん! 今日はうちに泊まっていこっ、ねっ!?」

「本気で心が揺らぐから、止めてよ……っ」


「ならいいじゃんっ、決まり! うちの人間を使いに出すようにお父様に言ってくるねっ!」

「ちょ、ちょっとっ、そんなの勝手だよ、リアンヌッ?!」


 自分から部屋に誘ったくせに、すぐに飛び出してゆくリアンヌに明るいウィンクを飛ばされた。

 ちょっとそれが嬉しくて、俺はついぼんやりとしてしまった。


「あ……。ああもう、なんて強引な人なんだ……」


 そう独り言を漏らすと、自分の言葉が明るく踊ってしまっていて二重に恥ずかしくなった。

 母上には申し訳ないけど、まあ、いいかな……。


 日暮れの街道を馬車で進むより、安全なお屋敷で一晩を過ごした方が安全だろう。

 俺はリアンヌが机に起きっぱなしにしていた金貨を、継ぎ接ぎだらけのマントで軽く磨いてみた。


 その金貨はズッシリとした厚みがあって、アリク王子の人差し指より直径があった。

 現代に持って帰ったら、きっとこれ一枚でマンションが買えてしまうだろう。


「ただいまっ、お父様もそれでいいってっ! へへへっ、これで今夜はずーっと一緒に遊べるね!」

「戻ってくるの、早くない……?」


「全力疾走だから!」


 このお姫様、いつか床を踏み抜いたり、頭で天井に大穴を開けそうだ……。


「あれ、でも着替えなくもいいの?」

「やだ、ドレスは窮屈だもん。それに……へへへー、これが気に入ったからいいのっ!」


 急にご機嫌になるからビックリした。

 リアンヌは旅のために縛っていた髪をほどいて、自分のベッドに飛び込んだ。


「せめてパジャマになりなよ」

「あ、そうだ! 大事なこと忘れてた!」


「カードゲームの話?」

「違うよっ、そっちも大事だけどっ、スキルの話! 冒険者さんたちだけずるい、私も強化してよ!」


「いや、あのさ……。君のスキルを強化したのは、ついこの前のことでしょ……」


 そう自分で言っておいてなんだけど、リアンヌならば短期間のカンストもあり得る……。

 得意げに胸を張る小さな婚約者を見て、俺は『まさかね……』と思った。


「確認だけど、君はここ半月、大公様や領地の護衛をして過ごしていたんだよね……?」

「うん。このままじゃギルドの仕事に加わっても迷惑かけちゃいそうだし。それに私がいない間にアリクの塩田が襲われたら、凄くイヤだもん」


 彼女からすれば何気ない言葉だったようだけど、俺はそう言われてちょっと感動した。


 俺たちの努力の成果をリアンヌは守ってくれていた。

 こちらからは何も要求していないのに、それが当たり前であるかのように行動してくれていた。


 彼女との友情を感じた。


「ありがとう。君はやっぱり頼りになる人だよ」

「そんなことよりーっ! スキルッ、私のスキルを見てみてよっ!」


 しつこいのでその通りにしてあげた。そしたら――


――――――――――――――――

【女傑】

【物理&毒無効】400/400Exp

【自己再生・大】13/100Exp

【大根の達人】71/100Exp

――――――――――――――――


 え……ちょ……っ。


「あーっ、やっぱりカンストしてるっ!」

「ちょ、ちょっと待って……っ」


「え、何々?」

「こ、この大根スキル……これ、いったいどうしたの……」


 戦闘スキルの異常な成長速度は、もう慣れたからいいよ……。

 リアンヌにおいては、そういうものだと諦める……。


 でもっ、【大根の達人】スキルのこの異様な成長は何っ!?

 もうちょっとがんばったらカンストってっ、いったい君は、今日までどんな生活をしてきたのっ!?


超天才錬金術師4巻、本日発売です。

どうかこちらも応援して下さい。

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