・ひなびた迷宮町ミタアで固有スキルを大量ゲットしよう! - 震・養女無双 -
「なんか期待してた結果とちげぇな……。まあいい、こいつらが希望するスキルを合成してやってくれるか?」
レスター様がそう言うと、既に詳しい話を聞いていたみたいで、冒険者さんたちはそれぞれが欲しいスキルに指を向けた。
そこで両手剣士のお兄さんには【HP+50%】を。
氷魔法使いのお姉さんにはギルドで不足している【下級炎魔法】を。
弓使いのおじさんと、双剣使いの若いお姉さんは【電撃付与】でカッコイイ電撃武器使いに。
そして盾剣士のお兄さんは……。
「おい、本当にそれでいいのか……? まあ、お前が希望するんなら、これ以上は言わねぇがよ……」
「悪い、レスター……。俺、小さい頃からずっと、漁師になりたかったんだよ……。漁師、いいじゃないか……」
【漁師】スキルを取って、釣って戦えるサバイバル系剣士にクラスチェンジした。
「まあ、パーティを支えるサバイバルスキルだと思えば、そう悪かねぇか……。ははは、面白ぇかもな」
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残った入手スキル
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【子沢山】×43
【採集上手】×1
【焚き火】×1
【暗視・弱】×1
【ボルト魔法MP消費半減】×1
【盾強化】×1
【狩人】×1
【ダウジング】×1
【炎魔法・下級】×4
【土魔法・下級】×1
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これで戦闘準備は完了だ。
強化された冒険者たちはあふれる力に感動ながら、最後のターゲットであるヘルハウンドに刃を構えた。
「それで、本当に、あんな怪物と戦うつもりなの……?」
「まあ見てろって。公女さん、そろそろ本気出してくれてかまわねぇぜ」
「へ……?」
「うん、わかった! ここからは本気で行くねっ!」
え……?
今までの獅子奮迅の身のこなしは、リアンヌの本気じゃなかった……?
「ふっふっふっ、自分がどんな怪獣を生み出してしまったか、アリクはまだわかっていなかったみたいだね……」
「ちょ、危ないよっ、あんなのと戦ったら死んじゃうよっ!?」
「大丈夫っ、見ててね、アリク!」
「待ってっ、待ってよリアンヌッ、あ、ああああっっ?!!」
俺とトーマは信じられない命知らずたちを見守るしかなかった。
リアンヌとレスター様が競うように先陣を切り、強化された冒険者たちもまたその後ろに続いていった。
あんな巨大な怪物に勝てるわけがない。
そう思いながらも援護のウィンドボルトを連射して支援すると、俺の目の前で超戦士たちの無双プレイが始まっていった。
リアンヌが大狼の腕を剣一本で受け止め、跳躍したレスター様が危険な牙を見せる大狼の顔面へと、質量任せの鋼の斧を叩き付けた。
あの一撃に比べたら、俺のウィンドボルトなんて待ち針だった。
電撃を帯びた矢と剣が大狼の動きを鈍らせ、遅れてやってきた両手剣士さんが、その分厚い剣で狼の顔面を殴り飛ばした。
「努力っ、友情っ、そして勝利っっ!!」
リアンヌは意味がわかるようなわからないような叫びを上げると、大狼の前足を忍者みたいに駆け上がった。
そしてリアンヌはその背を走り抜けて、脊椎にあたる腰の部分までやってくると毛皮にしがみついて立ち止まり、斧や両手剣すら防ぐ分厚い皮膚へと、そんな防御力などものともせずに剣をそこに突き下ろした。
「うわ……幼女、強過ぎ……。ハンターモンスターやバトルマンガの世界だこれ……」
大狼ヘルハウンドは、一方的な電撃戦により赤い光となって消滅していった……。
・
ちなみにだけど、ヘルハウンドが守っていた奥の部屋には、最も単純明快な富、金貨と銀貨の山が眠っていた。
頭割りでそれを分け合うことになり、俺とリアンヌは金貨21枚、銀貨47枚を持つちょっとしたリッチなお子さまとなった。
そして、ヘルハウンドの魔石に秘められたスキルはというと、えっと、その……。
なんというか、もし期待させていたら申し訳ない……。
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入手スキル
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【子沢山】×1
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「もういらないよぉーっっ!!!!」
大物からレアスキルが手に入るなんてのは、ゲーマーの発想だ……。
俺は合計44ストックになってしまった【子沢山】スキルに、甲高い少年の声で天に吠えずにはいられなかった……。
俺は使えるスキルと一緒に、おびただしい数のハズレスキルを抱えて、母上の待つ離宮へと帰った……。
どうしよう、この大量の【子沢山】スキル……。
俺は自分の固有スキルがいかにバランスが狂った物であるかを、迷宮の深淵よりも深く知った……。
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