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・ひなびた迷宮町ミタアで固有スキルを大量ゲットしよう! - 僕の婚約者はかわいい -

 異世界転生したら一度は行ってみたい場所、それが迷宮。

 俺はあの話をレスター様にされてからというもの、旅立ちの日が楽しみでしょうがなくて、毎日ところ変わらずに笑顔が絶えなかった。


「レスター様の言うことをちゃんと聞くのよ? リアンヌちゃんにカッコイイところを見せたいからって、無理をしたらいけませんからね?」


 子供じゃないんだからって言いかけて、ああそういえば、自分は子供だったんだって思い直して止めた。


「うん、気を付ける。お世話になっているみんなのために、凄いスキルを仕入れて帰ってくるね!」

「はぁ……っ、何もこんな大変な時に行かなくてもいいのに……。恨みますからね、レスター様……」


 それでも必要性を認めて行かせてくれるんだから、母上の分別には感謝しかなかった。

 いや、俺の知らないところで、父上とまた言い合ったのかもしれないけれど……。


「見た目はちっこいですが、アリクはもう立派な男ですぜ。ギルベルド王子にも勝ったって話じゃねぇっすか」

「勝ってないよっ!?」


 小さな体で大きなレスター様に抗議すると、控えていたトーマが密かに微笑んだ。


「とにかくコイツに危害を加えるなんて、この俺にだって無理な話でさ。安心して見送って下せぇ」


 レスター様は母上にそう言うけれど、男たちの理屈で母上が納得するはずもなかった。


「レスター様……」

「へい……?」


 普段の母上とは思えないほどの恨みがましい目だった。


「アリクがリアンヌちゃんみたいになったら、どう責任を取ってくれるんですか……」

「ははははっ、さすがはああならんでしょうよ! なあ、アリクッ?」


 うん、羨ましくはあるけどマネはできそうもない。

 魔法で魔物をやっつけるのは楽しいけど、それを日常にするなんて頭のネジが数本飛んでるよ。


「迷宮が面白かったら、また連れてってとお願いするかもしれないくらいかな……」

「ダメッ、今回だけよっ! 迷宮なんて、王子様が行くところではありません!」


 まあ、それはその通りだ。


「ま、まあまあ、リアンヌ様……。アリク殿下は自分が命にかけてもお守りしますんで……」


 そういったわけで、出発前はこんなことがあった。


 俺たちは王家の馬車ではなく、冒険者ギルドが所有するほろ馬車に乗り込んで、アイギュストスより北に行ったところにある、迷宮町ミタアを目指して城を旅立った。


 昔なじみの冒険者たちは、ギルド職員アリクと同じ名前を持つ王子にとても親切にしてくれた。



 ・



 アイギュストス領に続くあの大橋を渡っていると、やっとリアンヌに会えるんだって急に胸が高鳴ってきた。

 前に会ってまだ半月も経っていないのに、今はリアンヌのあの明るい笑顔に会いたくて仕方がない。


 俺はほろ馬車の御者席にレスター様と並んで座って、アイギュストス領に続く道をこのアーチ橋の上から見つめていた。


 現代では道はまっすぐに伸びるものだけれど、馬などの家畜がトラックやバスの代わりになるこの時代では、道はくねっていて当たり前のものだ。


 重い荷物を引く家畜に、急勾配の道を走らせても結局誰も得をしない。

 だから異世界の道は常にくねっていた。


 生前の現代を振り返れば、あのちょっとしたアスファルト道路一つにしたって凄い技術と努力の結晶だ。


 あれは古くより人々が平らな道を求めてきた結果、ああいうふうに平らになっているんだって、人類の底知れなさを俺に振り返らせた。


「あ、きたきた! おーいっ、こっちこっちーっ!!」

「え……リ、リアンヌッッ!?」


 だけどそんな感慨は、リアンヌに似た遠い声により吹っ飛ばされた。

 鷹の目の力を使って橋の終点に注目すれば、そこにはブロンドの髪を片側で縛って、革の軽鎧をまとったリアンヌがこちらに手を振っている……。


「はははっ、自分からお出迎えたぁ、元気な公女さんだなぁ……。おっ……」

「リアンヌッ!!」


 リアンヌが俺に手を振ってくれている。

 さすがにあっちからは俺の姿は小さくて見えないだろうけど、そこはすぐに距離を縮めればいいだけのことだ。


 俺は居ても立ってもいられなくなって、走行中の御者席から飛び降りた。

 前への慣性に転げそうになりながらも、8歳不相応の俊足で石橋の上を走り抜けて、リアンヌのいる対岸へと飛び込んでいった。


「アリクッ、会いたかった! 元気してたっ!?」

「僕も会いたかった! リアンヌこそそっちは大丈夫だった?」


「うん、今んところは変なやつらはきてないよっ。それよりその格好、どうしたのーっ!?」


 今日は俺はいつもの王子の礼服ではなく、木綿の服とパッチレザーのマントを身に着けている。

 腰にはあの鈍色のナイフを吊し、地味な格好で通していた。


「リアンヌこそ、凄いガチな格好……」

「へへへっ、かわいいでしょっ、お父様が作らせてくれたのっ! これ、結構気に入ってるんだーっ!」


 リアンヌの姿はまるでRPGのヒロインみたいに華やかだった。

 今日はドレスではなく短いスカートとノースリーブを着ていて、随所を守る革鎧がそれを飾り立てていた。


「どうっ!?」

「え。えっと、それは……。い、いいと、思うけど……」


「えーっ、何その微妙な反応っ!? アリクは地味カッコイイよっ! さっ、お返しにもっと私を褒めて!」


 いつものことだけど、この子は明る過ぎる……。

 腹に一物あって当たり前の王宮の人々に囲まれて暮らしている俺からすると、リアンヌはあまりに健全というか、健康的でまぶしい……。


「あの……えっと、すごく、その……。か……かわいい……」

「わぁーっ、軽く褒めさせようとしたら、なんかガチな反応返ってきたーっ!?」


「だ、だって……っ。そもそも言わせたのは君じゃないかっ!」

「やっばっ、ショタ王子様かわいい……っ!!」


「そっちだって立派なロリ姫様じゃないかーっ!!」


 元大学生のショタ王子は、元JKの年上のお姉ちゃんに手を取られて、つい気恥ずかしくなってしまった。


「とにかく会いたかったしっ、会えてよかったしっ、一緒に冒険できるなんて夢みたいっ! 今日はがんばろうねっ、アリク!」

「うん……サポートは任せて。僕はリアンヌの大活躍を後ろから見守っているから」


 やがてほろ馬車が追いついてくるとリアンヌは御者席に飛び乗って、レスター様を荷台にグイグイと追い出した。

 そして御者を自分がやるからアリクは隣に座れと、ポンポンと席の隣を叩く。


「元気な嫁さんだなぁっ、ガハハハッ!」

「ま、まだ結婚なんてしてないよーっ!?」

「ふ、ふふふ……っ、い、良い……っっ」


 レスター様や昔なじみの冒険者にからかわれたり、トーマの怪しい笑い声を聞かされたりしながら、王子は笑顔と元気いっぱいの公女と並んで座って、迷宮町への爽やかな青空の旅路を再開した。

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