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・スキルをトレードして極まったスキルを貰っちゃおう - 【からあげ職人】 -

「からあげくんがきたぜ。……けどよ、アイツのスキルなんて本当に必要なのか?」


 1人で悦に入っていると、レスター様がやってきた。


「うん、要るか要らないかで言えば、全く要らない」

「まあ、からあげだもんなぁ……」


「でもだからこそ、トレードで力になれると思うんだ」

「ま、そういう腹だと思ったぜ。……お、きたみたいだ。せっかくだから同席するぜ」


 そこに『からあげ』さん。本名ホンダさんがやってきた。

 なんか自動車メーカーみたい名前で親近感だ。


「ホンダですけど、なんですか? 早く帰りたいんですけど……?」

「おいこらっ、からあげ! 王子様になんだその口の聞き方は! せめて語尾に『ござんす』とかつけやがれ!」


「ホンダです。帰っちゃダメでござんすか?」

「ダメだ! 殿下に愛想良くしやがれやっ!」


 バインダーによるとホンダさんはまだ23歳だ。

 そんな彼が候補に上がったのは、本部でも有数の努力家という情報があったからだった。


「なんか口の荒いレスターに礼儀をどうたら言われると、ムカつくでござんすよ」

「それもそうだね」

「裏切らないでくれよ、殿下っっ?!」


 俺はレスター様に笑い返してから、ホンダさんに交渉を持ちかけた。


「ホンダさん。その通り名の『からあげ』だけど、良ければ僕にくれませんか?」

「え……っ? 王子様、こんなわけわかんないスキルが欲しいのか……?」


「うん。その代わりにホンダさんには【物理耐性◎】を譲るつもりだけど、どうかな……?」


 そう持ちかけると、ホンダさんの態度が急変した。

 何を思ったのかホンダさんは王子の足下にひざまずいて、頭を床に擦り付けていた。


「からあげ扱いはもう嫌だ!! お願いだ、王子様っ、この微妙過ぎるスキルを貰ってくれぇーっっ!!」

「なんでぇ、お前そんなに嫌だったのかよぉ?」


「嫌に決まってんだろっ!! 他のみんなはソードマンとか、炎魔法スキルとかなのにっ、俺だけからあげだぞ、からあげっ!? 自分が生まれた意味からしてわかんねーしっっ!!」

「うん、それじゃ交渉成立だね」


 世の中にはプラスではなくマイナスだったり、希望の職業と全く一致しないスキルを持ってしまった人がいっぱいいる。


 俺は喜んでホンダさんから【からあげ職人】スキルを抜き取り、【物理耐性◎】と交換してもらった。


「よかったな、からあげ」

「俺はもうからあげじゃねーっっ!! パワハラで訴えんぞっ!! 今日から俺は、鉄壁のホンダ様だ!!」


 からあ――ではなくて、ホンダさんは踊り回るほどに喜んでいた。

 あまりの歓喜に周りに見えなくなってしまったみたいで、彼はレスター様の書斎を飛び出して行った。


「一度付いた通り名は、そうそう変わらねぇと思うけどなぁ……?」

「レスター様が変えてあげなよ」


「嫌なこった。自分で切り開くんだよ、そういうのはよ」


 手伝ってあげてもいいのに……。

 そう密かに思いながら、俺はレスター様の隣でスキル合成を試みた。


―――――――――――――――――――――

【からあげ職人】 + 【筋力強化・小】

  → 【からあげ強化師】Get!


【筋力強化・小】x2 → x1


【からあげ強化師】

 からあげの調理、販売、強化の達人。

 強化されたからあげは非常に美味。

―――――――――――――――――――――


 う、うん……?

 面白いスキルに変化したら楽しいなと思ったんだけど、う、ううーん……?


「んなスキル、からあげ屋しか欲しがらねぇだろ……」

「うーん……俺、からあげ屋さんになる予定は、今のところないかな……」


「王子様だもんなぁ……。まったく、かわいくなりやがってっ、わはははっっ!!」

「わ、わぁぁーっっ?!!」


 アリク王子が悲鳴を上げると、人払いをしていたトーマが飛び込んできて、レスター様に怒り出したのは言うまでもない。


 俺はまたもや、トーマに背中に張り付かれて髪をとかされることになっていた。


――――――――――――――  

残った譲れるスキル


・物理耐性◎ x1

・MP+50 x1


譲らないスキル


【強靱】

【幸運】

【鷹の目】

【瞬間記憶】

【スキルマスター】

【物理耐性◎】

【自己再生・大】

【筋力強化・小】

【MP+50】

【毒反射】

【動物特効】47/100Exp


新規入手


 下級風魔法・五連

 鬼の心臓

 からあげ強化師


――――――――――――――  


 う、ううーん……。

 どうしよう、このからあげスキル……。


 俺はご機嫌のレスター様にちょっとだけお酒お酌をしてお喋りを楽しんでから、ほくほく顔でお城に帰った。



 ・



 離宮に戻ると母上が待っていた。

 ついつい嬉しくて、俺は母親に事の次第を報告していた。


「こういうわけで、僕は風魔法使いになったんだ。だから今度、リアンヌと一緒に冒険に行ってもいい……?」

「そう、凄いわね。でも、だーめ♪」


「だよね……うん、知ってたよ……」

「でもそのからあげ屋さんのスキル、とってもいいわね。そうだ、それお母さんに貸してくれる?」


 だけど俺にとって微妙なスキルも、他の人からすれば魅力的に映るようだった。


「え……。でも母上のスキルスロットには、もっと王妃様に相応しい良いスキルがあるんじゃ……」

「ちょっと借りるだけよ。ね、いいでしょ?」


「そ、そんなにからあげを作りたいの……? 強化とかしたいの……? たかが、からあげに……?」

「だってアリクとロドリック様に美味しい物を食べてもらいたいもの」


 どうしてもというので、俺は第二王妃である母上の貴重なスキルスロットに、凄いのか凄くないのかわからないスキルを移してあげた。


――――――――――――――  

アリク・カナン

【からあげ強化師】

  → 母上に委譲

――――――――――――――  


――――――――――――――  

リドリー・カナン

【ギルド職員】

【毒反射】

【物理耐性◎】

【からあげ強化師】

――――――――――――――  


 こうして母上はこの日、からあげ強化師になった……。

 母上手作りの美味しいからあげが俺たちを待っている……。


 どう考えたってハズレスキルだと、思うんだけどな……。


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― 新着の感想 ―
[良い点] >から揚げの強化 例えば品質が良くない肉とか、から揚げに適さない(有り体に言えば不味い)肉も、普通に食べられるから揚げとして調理できる可能性も?
[気になる点] からあげ強化はもっとマシなネーミングにしよ
[一言] ステータスバフスキル+料理スキル。 ……定番パターンだと実は大化けするやつの可能性
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