・スキルをトレードして極まったスキルを貰っちゃおう - 【下級風魔法・五連】【鬼の心臓】 -
「どうかな、ロウンデールさん。悪くない提案だと思うんだけど……」
「条件は悪くありませんな」
最初に帰ってきたのは知り合いのロウンデールさんだった。
俺の狙いは彼の持つ【下級風魔法】スキルで、これは魔法の獲得条件となるスキルだった。
代わりに俺が提示したのは【MP+50】だ。
「風魔法を新たに覚えたいなら、交渉の席から降りるべきだと思う。でもそうでないなら、こっちの【MP+50】と交換した方が、ロウンデールさんの助力にもなると思うんだ」
ロウンデールさんは40過ぎのおじさんだ。
そんな歴戦の冒険者の持つ【下級風魔法】スキルは、俺の期待通りカンストしていた。
そしてロウンデールさんには、魔力容量がやや少ないという弱点がある。
だからこそ、【MP+50】スキルは彼にとって貴重な能力だった。
「私に虫が良すぎる気もしますがなぁ……」
「僕はレスター様とルキの天秤の支援がしたいんだ。それに僕にはその、【下級風魔法】がとても価値ある物なんだよ」
「昔、私の古巣には、アリクという冴えない男がいましてな」
冴えなくて悪かったね。
「これもご縁でしょう。交換しましょう」
「本当っ!? ありがとう、ロウンデールさん!」
「……その呼び方、私を呼ぶイントネーション……ふぅむ……」
俺は正体を怪しむロウンデールさんから、スキルをトレードした。
ロウンデールさんのスキルスロットに【MP+50】を渡して、代わりに【下級風魔法】を貰った。
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【MP+50】x3 → x2
【下級風魔法】Get!
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それからロウンデールさんがレスター様の書斎を出て行くと、すぐにスキル合成を試してみた。
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【下級風魔法】 + 【MP+50】
→ 【下級風魔法・五連】Get!
【MP+50】x2 → x1
【下級風魔法・五連】
下級風魔法を修得可能。
1度の術の発動で、術が5発発動する。
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わ、凄い……。
これで俺も今日から憧れの魔法使いだ……!
1度に5発出るってことは、攻撃力も5倍!
これって、戦闘以外にも応用できるかも!
そんなふうに1人で興奮していると、そこに新しいノックが響いた。
「トルスです。用があると、あ、ご用がある、らしいっすね? 中に入ります!」
次のターゲットのアーチャー・トルスさんだ。
自信を付けた俺はロウンデールさんにしたように、彼のスキルがカンストしているのを確かめると、早速の交渉に入った。
「この商売、いつ命を落とすかわかんないっす。俺、こんなんだけど嫁がいて……。だから、そのスキルとぜひ交換したいっす! 嫁、安心すると思うんす!」
「ありがとう、トルスさん」
交渉はすぐに成立した。
俺はトルスさんのスキルスロットに【物理耐性◎】を移して、代わりに【スタミナ強化】スキルを貰った。
これでルキの天秤は、積極的に前に出れるアーチャーを手に入れた。
俺は【スタミナ強化】という、少し地味だけどあるととても便利そうな力を手に入れた。
「ははははっ、こりゃいいっす! 宴会芸が1つ増えたっすよ!」
「その力でレスター様を支えてあげて」
「了解っす! 俺、ギムレットに逆らってずっと干されてたんすよ! 喜んで支えるっす!」
笑顔で彼はレスター様の書斎を去っていった。
最後のターゲットの『からあげ』さんがくる前に、俺はまたスキル合成を試みた。
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【スタミナ強化】 + 【自己再生・大】
→ 【鬼の心臓】Get!
【自己再生・大】x1 → x0
【鬼の心臓】
通常環境下において絶対に呼吸が乱れない。
驚異的な心配能力は、水中下でも有用。
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自己再生効果は失われてしまったけれど、地味に便利なスキルが超便利スキルに変わった。
今のスキル構成からして怪我なんてそうそうしないから、自己再生を失おうともこっちの方がずっといい。
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