・スキルをトレードして極まったスキルを貰っちゃおう - お着替えと男装小姓 -
翌日、リアンヌのいない朝がとても寂しくなった。
だけどトーマが部屋にやってきて『おはようございます、アリク様』と言ってくれると、今日もがんばろうと、起き上がる気になった。
「そ、その、ア、アアアッ、アリク様……ッッ」
「え、急にどうしたの?」
「リ、リドリー様が……っ、け、今朝は、お、お忙しいそうで……っっ」
「うん……?」
「殿下のっ、おっ、おっ、おおっっ!!」
うわ、怪しい……。
面と向かっては言えないけれど、今日のトーマは口元がゆるゆるで不審者そのものだった。
「本日私がっっ、殿下のお着替えを仰せつかっておりますぅぅっっ!!」
「自分で着替えるからいいよ」
「……いえ、ダメですっっ! この国の第二王妃のご命令を反故になどできません!! さあっ、殿下っ、わ、私にっ、お任せを……っっ!!」
ニタァァァァ……っと、愉悦丸出しの笑みが怖かった……。
「トワさん、それはまずいよ。落ち着いて、トワさん」
「殿下、私は小姓として、王妃様のご命令を忠実に遂行するだけです。他意はありません、他意は……ふっふへへ……っ♪」
3つ年上のお姉さんは後ずさる少年王子を捕まえて、脱がして、着替えさせた。
さすがにパンツまでは手にかけようとはしなかったけれど……。
「小姓になって、良かった……っっ」
「へ、変態だ……」
「変態ではございません、これが私の職務でございますっ! は、はぁぁぁ……っ」
俺の周囲って変な人ばっかりだ……。
だけどトワお姉さんはとても幸せそうだった。
着替えを終えるとトーマと2人で朝食を食べて、それからお昼過ぎまで授業を受けた。
冒険者ギルド・ルキの天秤本部に立ち寄れたのは、だいぶ出遅れたお昼過ぎのことだった。
・
本部に着くと、挨拶もほどほどに奥の事務所に落ち着いた。
今はギルドの職員さんに遠巻きにのぞかれながら、用意してもらったバインダーに目を通している。
「王子様、何かご不便は……?」
「ううん、僕のことは気にしないで」
「気にしないでと言われても、いえ気になるものでして……」
「そうだね、邪魔してごめんね」
「いえそんなことは! 我ら一同、王家の方々には感謝しております!」
そこは昔馴染みの知り合いが多かった。
サーシャという悪女はいたけれど、サザンクロスギルドはとても良い職場だった。
俺はみんなの注目を浴びながら、バインダーを次々とめくって情報を頭の中に移していった。
何をしているのだろうと、みんなが王子の挙動に密かな視線を送っていた。
全部で大きなバインダーが8つ。
1000件ほどを読み通せば、情報収集はこれでおしまいだ。
ペンを借りて紙に名前をリストアップして、職員さんに話を持ちかけようとすると、そこにレスター様が帰ってきた。
「くるならくると言って下さいよ、殿下。すっ飛んで戻ってくることになったじゃないですかい!」
「ごめん、レスター。でもレスターにも仕事があるんだから……」
「おいお前らっ、アリク殿下に茶も出さねぇとはどういうことだっ!?」
「僕がいらないって言ったんだよ」
ちょうどいいのでレスター様にメモ書きを渡した。
レスター様はその名前にピンときたようだった。
「へぇ、なんのリストわかんねぇか、なかなか良い目をしているじゃねぇですかい」
「詳しい話はレスターのお部屋でしたい。トーマは人払いをお願い」
「はっ!」
こっちにこいとレスター様が指で合図して、俺はその後を追ってギルドマスターの書斎に移動した。
書類も多いけれど、酒や刀剣、筋トレグッズが置かれたレスター様らしい部屋だった。
「ジロジロ見るなよ、アリク、なんか恥ずかしいだろ……?」
「虚栄ばかり張ってたギムレットの部屋と大違いだ」
「ああ、あいつか? アイツは月に3――」
「それはコッホさんからもう聞いた」
「なんだよ、あのジジィ……俺が教えてやった話だってのに……」
「それでね、そのリストだけど……」
「こいつらと会いたいのか?」
「うん。その人たちと、俺はスキルのトレードをしたいんだ」
2人だけなので昔の自称『俺』に戻してそう伝えると、レスター様はニカリと笑った。
「お前、面白ぇこと考えるな。やっぱ昔より頭良くなったんじゃねぇか?」
「うん、瞬間記憶スキルのたまものかな」
「風使いロウンデール、アーチャー・トルス。それに『からあげ』のやつか。この3人なら、もうすぐここに戻ってくるぜ」
「ロウンデールさんは覚えてる。他の人は覚えがないな、僕に紹介してくれる……? わっ?!」
せっかくトーマがクシ削ってくれた髪を、レスター様にクシャクシャにされた。
でも悪い気がしない。
昔に戻ったかのような気分になった。
「お前の頼みなら喜んで! まったくかわいくなりやがって、わはははっ!!」
「ありがとう、レスター様」
いつまでもトーマを外に立たせているのも悪いから、その後は彼女を中に呼んで、しばらく3人で雑談を交わして時間をつぶした。
「豪腕のレスター、お会いできて光栄です。ですが殿下の頭をクシャクシャにするのは……」
「別にいいよ」
「良くありません!! 殿下が乱暴をされたと勘違いされるでしょう!!」
ちなみに雑談はトーマに髪をクシ削られながらになった。
大切に過保護にされている姿を昔なじみに見られるのが、俺はとても気恥ずかしい気分になった。
「殿下を大切にしてやってくれ。そいつは本当に良いヤツだった」
「知っています」
「ははは、そうか、ならいい!」
僕たちはターゲットの帰りを待った。
体調を崩してしまいました。
申し訳ありませんが、更新がどこかで滞るかもしれません。




