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・合格通知を聞いて、文官さんを完成させよう - なんでもかんでも -

「まあ、サツマイモくらいしか育たない土なら、サツマイモ畑にするのもありだね」

「おおっ、オラもそう言おうとしたところだべ! 実りが悪いとこは、オラにまかせるべ!」


「他のところもキッチリ、お願いね」

「野良仕事ならオラに任せるべ!」


「いや、だから、野良仕事だけじゃなくて……ううーん……」


 これはゴーン・ベイさんを監視、操縦してくれる部下を付けるべきかな。

 行動力と熱意を感じさせるおじさんだけど、公平な役人になるかはわからない……。


 ま、いっか。


「じゃ、次はマーロウお兄さんだね」

「お、おうですっ!」


 マーロウお兄さんの隣に行って、スキル画面を開いた。


「運搬の仕事をしていたマーロウお兄さんには、駅と、道路と、水運と、物資の備蓄を任せたい」

「そ、そんなにか? あ、ですか……?」


「現場を時々確認しながら、上から指示を出すだけだよ」


 そう伝えながら、俺は【物資管理】スキルをマーロウさんのスロットに入れた。


「俺にできます、かな……」

「自分1人でやらなくていいんだ。仕事仲間や昔の上司を頼ったり、荷運び屋だったこれまでの経験をそのまま活かせばいい」


「それなら、できそうかもしれない……」

「お兄さんならできるよ。なんでもかんでも、自分の力でやらなくていいんだ」


 そこを割り切れないと、領主とか王子様なんてやってられない。

 仕事の楽しいところを持って行かれたり、現場に立ち会えないことか、これまで何度あったことか……。


「この【物資管理】スキルは、特に軍人さんたちの間で厚遇されているんだって」

「え、なんでだ? ですか?」


兵站(へいたん)の管理ができる人がいないと、戦争で負けてしまうからだよ。このスキルは、人や物の流通、備蓄の才能を持ち主に与えるんだ」


 剣の才能に恵まれるとか、特定の属性の魔法が使えるとか、そういうスキルと比べると、すぐには目に見えないので把握しにくい。


 けど組織にはとても大切な才能だ。

 ここみたいに鉄鉱石や木炭を外から仕入れている工業都市では特に。


「要するに。今日までマーロウお兄さんをこき使ってきた荷運び屋の親分さんの上に、マーロウお兄さんが立つ。ってことだよ」

「お、俺が……!? ですかっ!?」


「そうだよ。だって今日からマーロウお兄さんは、お役人様だもん。当然だよね」


 意地が悪いかもだけど、せっかく人の才能をいじるんだから、こういうことをやりたかった。

 人間関係の上下がひっくり返るような抜擢って、やる方も気持ちいいし。


「お、おお……っ、な、なんか……なんかすげーですねっ、アリク王子!」

「荷運び屋の経験があれば、いい運輸担当になれるよ。これからよろしくね」


「任せてくれ! 俺は、おま――アリク様の力になるために志願したんです! なんだって命じてくれです!」


 それとこのやる気がやっぱりいい。

 細かく指示しなくても積極的にやってくれそうで、未熟さは感じるけど頼もしい。

 知識や経験は後からでもどうにでもなる。


「じゃあ、新しい馬車駅の建設をお願い。あと、アイギュストスとここを繋ぐ新しい馬車路線の新設も、マーロウお兄さんに任せる!」

「お、おうっ、具体的な方が助かるっ、俺に任せてくれっ、です!」


 マーロウお兄さんへのスキルの授与が終わると、残りの2名にも同じことをした。

 【会計の達人】スキルを与えた人には会計担当に。

 【十分な社交力】スキルを与えた人には窓口担当になってもらった。


 将来的にはそれぞれのために、小さな庁舎を造ってあげたい。

 動きやすさも考えると近所がいいだろう。


「ほな、お祝いパーティにしよかー!」


 こうして話がまとまると、待ちかねたようにアグニアさんが厨房から現れた。

 兄上と出て行ったと思ったら、いつのまにあんなところに……だった。


「うむ、コンラッドよ、我らの隣にこい」

「ヒギィッッ?! じ、自分はっ、自分はもうお腹いっぱいでありますっ!!」


「ほぅ、俺の誘いを断ると?」

「と……ととと……とんでもございましぇん……」


 かわいそうなコンラッドさん……。

 様子からして、兄上はコンラッドさんを飲み仲間――いや、友人と認識しているようだった。


「お前が薦めてくれた本だが、いくつかわからないことがある。教えてくれるな?」

「は、はひっ、ふ、ふひっ、よ、喜ん、で……ハッハッッフゥゥーッ、ハッハッフゥゥーッ」


「なぜ過呼吸になる……」


 それはコンラッドさんが小心者の中の小心者で、彼からすれば兄上は猛獣のようなものだから。


 遅い晩餐が食卓に並んでいった。

 それからカナちゃんやターニャさんも席に着くと、俺は立ち上がってみんなに声を上げた。


「皆さん、合格おめでとうございます! 皆さんと一緒にがんばってきたかいがありました!」


 感謝と祝福をすると、みんなが嬉しそうに笑った。


「そしてどうかこれから、未熟なこの僕にご支援を下さい! いや……リアンヌを治すための時間を、僕に下さい!」


 これでやっと動ける……。

 俺は志望してくれた5人の文官たちに感謝して、いつもよりちょっと豪華な食事を語らいながら楽しんだ。


 これからは陳情の時間と、相手を大幅に減らせる。

 俺がやらなくてもいい書類作りを人任せにできる。


 手を広げすぎて動いていなかった馬車路線の事業を始められる上に、都市開拓の細かなところをゴーン・ベイさんにお願いできる。


 もっと簡潔に言えば、人手不足が解消する!!


 やっと自由が手に入る感謝もあって、その晩の俺はいつもよりも饒舌で、ついつい笑顔が絶えず――


「と、尊い……っっ」

「はい……っ。こんやの、アリク様は……たくさん、わらって、かわいいらしいです……」


 トーマともかくとして、カナちゃんにまで温かい目で見守られてしまった……。


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