・リアンヌのいない冒険譚 - 冒険への招待状 -
手紙が届いた。
運んでくれたのは冒険者ギルドのルーキーたちで、その足でこれから辺境の魔物討伐に行くそうそうだった。
俺は旅の成功を祝福して出立を見守った。
ギルド職員アリクだった頃は、仕事を斡旋し、無事を祈って見送ることが日常だった。
「殿下、もしやそれは、ルキの天秤の……?」
「うん、差出人はギルドマスターのレスターだよ」
手紙を開いて中に目を通すと、俺はいつもの応接テーブルで、返事の手紙に手を付ける。
「殿下……? なぜ、レスター殿からお手紙が……?」
「うん、コレはね……なんと冒険のお誘いなんだ!」
「なっ、何を言い出すのです、殿下っ!?」
「トレードのために、スキルをたくさん確保しておきたいんだ。そのためには、僕自身が冒険に加わる必要がある」
俺はモンスターからスキルを抜き取れる。
スキルのストックが増えれば増えるほど、トレードが有利になる。
トレードを重ねて勉強と文官の才能をかき集めて、それを使って文官を大量育成し、優秀な文官を人工的に作り上げる。
すると楽が出来るようになる上に、管理が行き届いて領地がさらに発展する!
「聞いてませんよ! 危険です、殿下!」
「大丈夫、僕は後方支援で前には出ないよ」
「しかし……い、いつ行くのです!?」
「明後日」
「なっ、なんでこのトーマに教えて下さらなかったのですっ!?」
「だってトーマって、いつも父上たちにチクるし……」
不意打ちの刃がグサッとトーマの胸に刺さったみたいだ。
まあトーマからしたら、報告が義務付けられていて、逆らうわけにはいかないのだろうけど。
「じ、自分も行きます!! このトーマが殿下をお守りいたします!!」
「うん、最初からトーマは数に入ってるよ」
「そ、そうですか……。仲間外れにされるかと、焦りました……」
「カナちゃんも連れて行こうと思う」
「カナを……?」
「心配させるくらいなら、隣に置いた方がいいでしょ?」
「はっ、カナなら立派に護衛の任を果たすでしょう!」
そこまで話すとちょうど手紙が書き上がった。
さっきの冒険者さんたちが帰りに寄って、レスター様にこれを届けてくれることになっている。
政務室の窓から外をのぞくと、もう西の空がほのかに薄黄色くなり始めている。
目が眠い。けどデスマーチが日常の毎日も今日までだ。
「殿下、彼らです。通してもよろしいですね?」
「うん」
今日。というか、明日は特別な日だった。
政務室に通された5名の文官志望者たちは、コンラッドさんの後ろで5列に並んで、その大半が大小なり緊張していた。
拙作「スコップ一つで作る反逆の地下帝国」がネット小説大賞二次を通過しました。
拙いところのある旧作ですが、もしよろしければ読みにきて下さい。




