・貴方が失ったのはこの綺麗なリアンヌですか? - 名誉挽回? -
勉強の才能を与え、半月で国家試験を通過した正規の文官を育てる。
この無茶な計画にコンラッドさんは喜んで協力してくれた。
ヨハンヌさんと、ゴードン・ゴドルフィン子爵令息と一緒に。
え、そいつは誰だって?
ほら、あの人だよ。
学生時代のコンラッドさんを陥れた意地悪な上級生、彼の顔にやけどを負わせた張本人のことだ。
「まさか俺に、名誉挽回の機会をくれるとは……。コンラッド、あの頃の俺は家柄に慢心する愚か者だった……許してくれ……」
「そんなことどうでもいいから手伝ってっ!! このままだと自分っ、死んじゃうっ!!」
人手が足りない。
そうなると、自宅謹慎中の彼を起用することになっても何もおかしくない。
名誉ある研究者としての人生を失って、彼もさすがに反省しているようだったし。
「か、変わったな……お前?」
「我が輩かね!? そりゃ変わるというものでありますよっ! ギルベルド殿下に何度も何度も酒に誘われれば、人だって変わるよフツーにさぁーっ!!」
コンラッドさんは兄上に気に入られちゃったらしい。
ド変人だが教養人で話が多彩で面白いと、兄上も褒めていた。
本人からすればとんだ災難だろうけど。
僕は面白いからいいと思う。
人が人と仲良くなって悪いことなんて、そうそうない。
「コンラッドのバックアップは私にお任せを、殿下。殿下は少しお休み下さい」
「え、僕を仲間外れにするつもり?」
「1日3時間しか寝てないと聞きましたが」
「うん、そうだけど?」
この身体は生まれ持った丈夫さを持っている。
こんなのなんでもない。
と言いたいところだけど、寝不足ばかりはちょっと堪えるかな……。
「王子殿下はまた成長期、ご無理はお体にたたりますよ」
「そうですな! 我が輩の聞くところによると、若い頃からあんまり夜更かしすると……身長が伸びなくなってしまうらしいですよ、殿下!」
グサッと胸に突き刺さるような言葉だった。
僕はいつまで、リアンヌに物理的に見下されながらお喋りしなければならないのだろう……。
「コンラッド、アリク殿下が言葉を失っておられる。お前は主君になんてことを言うのだ」
「あ、気にしてました? 自分はちっちゃい殿下が好きでありますよ? でっかくなったら、ナンカコレジャナーイッ、となります!」
チビのままでは困る……。
せめてリアンヌと対等くらいの背丈になれないと、男の沽券が……。
「ね、寝るよ……。2時間だけ、仮眠してくる……」
「大丈夫でありますよ、殿下! 男は身長じゃありません! 女どもは、我々の金と地位と名誉に惹かれて寄ってくるものなのです! もーっっ、自分、人間不信になりそうであります!!」
公式には同意しかねる発言に苦笑いを送って、俺は部屋に戻って仮眠を取った……。




