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・文官が足りない? なら作ればいい - 芋ととうきび -

 兄上が当たった志望者さんがどうなっているかは考えないとして、俺は面接官として自分の仕事をした。

 10歳の少年面接官というのも、絵としてちょっと面白いかもしれないな。


 そう思いながら面接を始めた。



 ・



 さて、何せ志望者が多すぎるので、ある条件に一致したした人たちだけ紹介しよう。

 まずは1人目。


「志望の動機は?」

「サツマイモだべよ」


「え、芋……?」

「王子様、温室で、サツマイモさ作っとるべ? それオラが手伝うべ」


「それが志望動機……?」

「んだべ。芋さ作りながら役人すんべよ」


「はははっ、それは面白い発想だね。実は僕は乗り気じゃなかったんだけど、リアンヌのやつがどうしてもサツマイモを育てたいと言い出してなんかああなったんだ……」


 農家のおじさん、ゴーン・ベイさん。

 ちょっとマイペースだけど熱意があるし、農家の人たちとのいいパイプになりそうだ。

 合格。いつかリアンヌと一緒に芋を掘ってもらいたい。


 ・


 それから2人目。


「え、あのポップコーン、おばさんが売ってたの?」

「そうなのよー。殿下の噂を聞いて、うちの店も爆発するトウモロコシを仕入れてみたの。そしたら、大ウケ! 今はそのお金で、山の上のお家を買ったのよーっ」


 ポップコーン売りで一山当てたすごいおばさん。

 王都の人だったみたいだけど、最近1号区画に引っ越してきたそうだ。


「でもねぇー、すぐに他の人にマネされちゃったのよぉー……。そんなある日、殿下のあの張り紙を見たってわけ! おばちゃんねぇー、自分で言うのもなんだけどぉー、お役人様の才能もあると思うのよねぇー?」

「商人さんたちの内情に詳しそうだね。僕の動向を追うくらいに情報にも聡い」


「あらっ? もしかしておばちゃん、合格ぅー?」

「うん、合格。できるだけ、地元のしがらみに縛られている人間を使いたいんだ」


「あらー。それって、悪さできないようにするために?」

「そうだよ。余所者は悪さして逃げればいいけど、地元だとそうもいかないでしょ」


 2人は商機に聡いおばちゃん商人さん。

 俺が作った1号区画で幸せに暮らしているというのも、ひいき目につながった。

 後であっちでの生活も詳しく聞きたい。


 ・


 そして3人目。


「俺を雇ってくれ、アリク王子!」

「うわ……すごい声だね……」


 その子は会場でもとても目立っていた。

 でも他の志望者に負けてなんていなかった。


「俺、あそこの集配所で荷運びをしてるんだ!」

「えらその歳で?」


「それはアリク王子も同じだろ」

「まあ確かに」


「それでな、うちの親父、3年前に木工所を首になって、都に出稼ぎに行ってたんだけど、アリク王子のおかげで戻ってきたっ!」

「お父さん、製鉄所の人?」


「いや、港で働いてる。王子が作らせた港だ!」

「僕は拡張しただけで、港は始めからあそこにあったよ」


 書類を見ると、彼は5つ上の15歳だった。

 もし15歳で国家試験をパスしたら、なかなか面白いことになる。


 ちょっと荒っぽいところがあるけど、俺はこういう人の方が好きだ。

 名前はマーロウ。いい名前だ。


「細かいことはいいって! とにかく王子はすげーよ! 俺、王子を手伝いたいんだよ!」

「そう言ってもらえると嬉しいよ」


「努力は惜しまない! 頼む、俺に手伝わせてくれ!」


 熱意。これ以上に強い面接のカードがあるだろうか。

 人格優先につき、彼も合格だ。

 能力は後から付け足せばいいのだから。


「年上のお兄さん相手に言うのも失礼だと思うけど……合格だよ」

「本当かっ、アリク王子!?」


「ぜひお願いしたいな。人手不足が深刻で、全く自由に動けない状態なんだ……」

「なら俺に任せろ!」


「はは、頼もしいお兄さんだ」


 情熱は持とうと思ってもそう簡単に持てない。

 熱い情熱を持っているだけで、それはすごいことだ。

 俺は彼のエネルギーを買って採用した。


 外からきた人たちが真面目で模範的な一方で、グリンリバーの人たちは個性的だった。


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