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・文官が足りない? なら作ればいい - 職歴、年齢、性別、資格不問 -

 やるべきことを済ませて領地に戻ると、すっかり日が沈んでしまっていた。

 季節は秋。もう少しで晩秋といった時期とあって、最近は日没が早く、それに肌寒い。


 ここはあの大橋。

 新たに増設された街灯が、鉄と石のアーチ橋を幻想的に照らし上げている。


 たくさんの人が橋の上を行き交っていた。

 その中に俺も混じって早足で歩くと、小さな領主に気付いた人が振り返ったり、挨拶をしてくれた。


「王子様、ご機嫌麗しゅう!」

「いつも助かっています! この橋のおかげで!」

「おかえりなさいませ、アリク殿下!」


 今のところ俺はいい領主だから、みんなが慕ってくれた。

 中には他の人の逆がやりたい逆張りさんもいたけど、そういう人はそういう人なので割り切った。


 グリンリバーは今、大橋の完成とアイギュストス港と通じる山道の開通により、飛躍的な発展を遂げている。


 特にこの辺り、橋を抜けた先の大通りの賑わいは凄まじい。

 橋の先の先の十字路を中心に、十字に輝く白熱電球が街を照らし出し、その発展を俺たちに見せつけている。


 夜の終わらない通りに店と人が集まり、ひしめくように建物や大型の屋台が建ち並ぶ。

 最近では王都からわざわざ騒ぐために、ここに遊びに来る若者も多い。


 その賑わいの中心核で、トーマが馬と寄り添って俺のことを待ってくれていた。


「お迎えに上がりました、殿下」

「まさかずっとそこにいたの……?」


「いえ、そろそろお帰りかと思い、1時間ほど前に」

「心配かけてごめん。でも……これだと僕がこの橋を通るって、バレバレだったんじゃないかな……」


「はっ?! 申し訳ありません、心配のあまり、つい考えが及ばず……」

「でも待ってくれて嬉しかった。屋敷まで乗せてくれる?」


「はっ、喜んで!」


 トーマが騎乗して、俺はトーマの手を借りて後ろに乗った。

 そしてこれが当然の権利であるから、トーマの腰に両手を巻き付けた。


「ぶ……ぶひぃ……っ」

「トーマ、前向いて、前。もうこの辺りは昔と違うんだから」


「はっ! 市民に興奮を悟られぬようにいたしますっ!」

「自分で声高々に明かしてどうするし……」


 リアンヌのことで気弱になっていた俺は、トーマの背中に身を擦り付けて甘えた。


「ふ、ふひひ……っ、け、計算、通り……。はっ!? いえ、なんでもございません!」

「トーマはぶれないね」


 俺を守ってくれるやさしいお姉さんにくっついて、白い光の道の下を運ばれた。

 それから屋敷に到着すると、カナちゃんとターニャさんが迎えてくれた。


 それとデフォで厳しいヨハンヌさんも。

 恐いお爺さんを前にするとトーマも背筋を伸ばし、キビキビと王子を馬を降ろした。


「ヨハンヌさん、例の計画、どうにかなりそうだよ」

「それは僥倖。教えがいがあるというものでございます」


「あまり厳しくしないでね。やっぱり文官辞めるとか言われたら、たまらないから……」

「かしこまりました。飴と鞭を意識いたしまする」


「う、うん……くれぐれも鞭は控えめにね……?」

「飴より鞭の方を喜ぶ者も多いですぞ。カナ、殿下をお部屋にお連れしなさい」


 厳しい人だけど、カナちゃんに対してはヨハンヌさんは言葉づかいが甘い。

 どうしてなのか以前聞いたら、優秀なので厳しくする必要がないと、そう言い訳していた。


「リドリー様は、どうでしたか……?」

「父上とイチャイチャしてたよ。見てるこっちが恥ずかしくなるほど熱々で困った」


「うちも、アリク様の子ども……あ、いえ……なんでもありません……」

「はは、仮にそうなったら、八草さんがどうなるかな……」


「きっと、よろこんでくれます……」


 どうだろう。こればかりはわからない。

 カナちゃんに連れられて部屋に落ち着くと、机に腰掛けて紙にペンを滑らせた。


 紙は王家公式の書簡で、ジェイナスと父上のサインが入ったものだ。

 これを使って、国内の主要都市全てにおふれを出す。


――――――――――――――――――――

 職歴、年齢、性別、資格不問。

 アリク第二王子が治めるカーソン領の文官になりたい者は、指定の日時にグリンリバー領主邸を訪ねたし。

 繰り返すが資格不問。国家資格取得まで厚く支援するゆえ、我こそはと思う者は集まりたし。


 カーソン公アリク・カナン

――――――――――――――――――――


 こんなところだろう。

 ここまで文官が見つからないとなると、こうする他にない。

 優秀な人材を自分で作る。


 せっかくそういう力を持っているのだから、使わない理由はない。

 頼れる配下をたくさん作れば、俺はリアンヌを元に戻すために積極的に動ける。


「アリク殿下、お夕食の準備ができました」

「ああ、ありがとうターニャさん」


 ちょうどいいところでノックが鳴り、俺は扉を開けてターニャさんを迎えた。


「よければご一緒に行きませんか?」

「え……珍しいお誘いだね……?」


「いけませんか?」

「そんなことないよ。……気を使ってくれてありがとう、ターニャさん」


 いつもは並んで歩いてくれないターニャさんが隣を歩いてくれた。

 ちょっもしたことだけど、俺にはそれが嬉しい。


「はぁっ。ほんと、調子狂うよ、あれ……。私、元のリアンヌの方が好きだったな……」


 さらには昔のようなしゃべり方で愚痴ってくれた。

 俺もそう思う。あのリアンヌは調子が狂う。

 あれは俺たちの友人にして、違和感の塊だ……。


「どうにかしてみせるよ。そのために今、足場固めをがんばってるんだから」

「がんばってね、アリク様。……じゃ、元のノリに戻るから、私」


「ええ……ずっとそのままがいいな、僕……」

「申し訳ありません。サービスはここまででございます。……結婚式までに戻せるといいね」


「うん……」


 がんばろう。

 心配させないためにもしっかりしよう。

 ターニャさんも元のリアンヌを望んでくれている。


 明日から少しずつ、文官作りの下準備をがんばってゆこう。

投稿が遅くなりました。

いつもながらすみません。

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