・スコップの達人スキルでトンネルを掘ろう - 鋼鉄の女帝 - 1/2
王都にて――
俺たちがトンネル工事をエンジョイしている一方、我らがリアンヌ・アイギュストスは女帝の地位に上り詰めていた。
「つ、強い……強過ぎる……」
「ふっふっふっ……。これでも一応、このゲームのプランナーですから、私っ!」
女帝リアンヌの伝説は、城門前広場にある公園のベンチから始まった。
そこで金貨1枚の賞金に群がる初心者たちを、ちぎっては投げ、ちぎっては投げ……。
キッチリとおとなげなく銅貨1枚を徴収しては、無限のその体力でリベンジをいくらでも受けて立ったという。
公園から始まったデュエルは次に量販店の休憩室に移り、その次に王都のカジノに移ると、彼女の作ったボードゲームは王都で大ブームとなっていた。
負けず嫌いな敗者はリアンヌへのリベンジを誓い、定価でグリンリバー産のゲーム版を買っていった。
「もはや賞金などどうでもいいっ! 女帝よっ、再戦を!」
「よーしっ、受けて立ったーっ!」
聞いた話によると、現在のリアンヌの勝率は9割7分だそうだ。
この凄くがんばればなんとか勝てなくもないバランスがよかったようで、今も多くのチャレンジャーがリアンヌに挑んでくる。
舞台をカジノからさらに飛翔させ、城下の貴族や富豪が集まる有名サロン・サラサを舞台に変えると、参加料は銀貨10枚、賞金は金貨10枚に引き上げられた。
「知っておいでですかな。女帝は昨日から一睡もしていないとか」
「勝率、気力、体力。正しくリアンヌ公女殿下は女帝でありますな」
再戦希望者に限り、サロンは特例として平民の入店を許可した。
リアンヌに銅貨をふんだくられた再戦者たちは、銀貨10枚を握り締めて、底なしの沼にハマっていた。
「はい、首都陥落! 私の勝ちーっ!」
「ぐっ、ぐああああーーっっ?!!」
想像力豊かな一部の人は、イスからひっくり返ることもあったようだ。
「えへへー、アリクが相手じゃないと普通に勝てて楽しい!」
「ほぅ……女帝よ、アリク殿下はそれほどのデュエリストであると……?」
デュエルするからデュエリスト。リアンヌがそう言うから、王都ではこの言葉が定着しまっているらしい。
「アリクはね、覚えたことを忘れないの。だからルールが複雑になったり、覚えることが増えると、アリクはその分だけ強くなるの! あれ反則っ、あれ存在そのものがズルっこだよっ!」
なんか悪口も風の噂で聞こえてきたような気もする。
「ほぉぉぉ……一度デュエルしてみたいものですなぁ……」
「聞けば殿下はこのゲーム・デュパリエの共同開発者だとか……」
ゲームの正式名称は名前は【デュパリエ】となった。
「まあ一応ね。テストプレイとアドバイスだけで、根っこから作ったのは私だよ!」
リアンヌは次々と挑戦者を打ち破った。
運良くリアンヌに勝てた者は拍手喝采され、その栄誉に涙を流さんばかりに感動した。
たかが板切れの上で行われる空想上のゲームなのに。
よければ新連載を読みにきて下さい。
非公開の短編を元に膨らませたものなので、序盤だけで爽快なカタルシスが得られます。




