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・スコップの達人スキルでトンネルを掘ろう - 初めての開通 -

 トンネルから見る外の世界は強い色彩を感じられて美しかった。

 猫車を押しながらトンネルを出ると、眼下には山道を整備する労働者たちの姿が見える。


 八草さんが帰ってきてくれたおかげか、街道整備は順調だ。

 むしろあまり順調過ぎて、今日のうちにここのトンネルを開通させなければ、明日の彼らの仕事が滞ってしまうかもしれない。


「殿下、お休みになられますか?」

「あ……ごめん。ちょっと目を奪われてただけ。中に戻ろう」


「はい。カナがトンネルの続きを掘りたそうに、中でソワソワしていますので」

「たまにはこういうのもいいね」


「はい。いずれ書類仕事に戻ることになると思うと、ブルーな気分になるほどに……」

「そうだね……本当にそうだね……」


 みんなで力を合わせてトンネル工事を進めた。

 カナちゃんが穴掘りに満足すると、カナちゃんからトーマにスキルを移してあげた。


「自分、厳しい家に生まれましたから、こういった遊びには縁がありませんでした」

「そうなんですね……」


「これが童心というというものでしょうか。やってみると、やはり楽しいものですね!」

「はいっ、たのしいです……! つぎは、うち、うちのばんですよ……!」


 次は俺のターンにはならないそうだ。

 まあ十分に楽しんだし、そんなにやりたいなら2人に任せよう。

 外と行き来するたびに、トンネルの全長がガンガン伸びるこの感覚は他では味わえない。


 そよにこういうのはやっぱりいいものだ。

 屋敷に閉じ込められて、無心に書類仕事をしたり、人事に頭を悩ませるよりずっと、気持ちいい……。


 リアンヌもここに残ればよかったのに……。


「あ……っ」

「殿下っ、ご覧下さいっ! 壁に、光の筋が!」


 リアンヌを思い出して急に寂しくなってしまったところに、白く美しい光が射し込んだ。


 トンネルの開通だった。

 俺たち3人は立場を忘れて子供みたいにはしゃいで喜びを確かめ合った。


 なんか凄く! テンションが上がった!

 これって凄く楽しい遊びだ!


「トーマ、お願い」

「はっ、開通させます!」

「すてきです……。あっちと、こっちが、つながって……。なんだかうち……うれしいです……」


 カナちゃんは決して映像を映さないその目で、白妙のように射し込む外の世界の光に見とれている。


 俺たちはとても楽しい遊びを見つけてしまった。

 この調子で次のトンネルも掘ってゆこう!


 トーマがスコップを振るって正面を崩すと、目を覆わずにはいられない強い光が射し込んだ。


「まぶしい……です……」

「な、何も見えない……っ、殿下っ、殿下はどちらにっ?!」


 俺とカナちゃんは猫車で土砂を運んでいたから多少目が慣れていたけど、トンネルにこもって掘っていたトーマには強烈だった。


 仕方ないのでトーマを支えてあげると、不可抗力なんだろうけどトーマは俺の胸にしがみついた。

 俺は今半裸で、労働で汗ばんでいた。


「殿下……」

「なあに、トーマ?」


「見るだけならあれだけ興奮した殿下のお胸ですが……実際にこうして触れてみると……恐怖が勝ります……」

「え、恐怖? なんで?」


「この件は、ご両親やギルベルド殿下にはご内密に。特にジェイナス様には絶対にっ、黙っていて下さいっ!」

「ジェイナスはそんなに恐い人じゃないよ」


「ジェイナス様がやさしいのは殿下とリドリー様にだけですっ!」


 父上はそこから外されるんだ……?

 俺は過剰反応なトーマを立ち上がらせて、彼女の手を誘導してトンネルを開通させた。


 トンネルの向こうは盆地で、報告通りの手付かずの森林地帯だった。


 木漏れ日と爽やかな空気の香る森林にカナちゃんの手を引いて出て、俺はカナちゃんに情景を解説した。


「とても、いいにおいします……」

「ここに休憩所を建てるのもいいね」


「はいっ、それはすてきかと……!」


 新天地に満足すると、俺は背後を振り返った。

 やっと目が慣れてきたトーマが、身を低くしてこちらに歩いてきている。


 このトンネルの全長は80mほどだろう。

 もしここにトンネルを掘らずに迂回路を作ると、300m以上の道のりになるはずだ。


 馬車が走行できるだけの緩やかな道を造るとなれば、大規模な土地の造成と迂回路が必要になる。


 俺たちはスコップだけで、工期を大幅に短縮し、街道の利便性を飛躍的に高めた。


「へへへ……やったねっ、トーマッ、カナちゃんっ!」

「はっ、これはハマってしまいます! ですが、先ほどはとんだ失礼を……っ」


「大丈夫、セクハラならされ慣れてるから」

「なっ!? どこの不埒な輩にですかっ!? まさか、コンラッド殿……っ!?」


 お前だと、トーマを指さしてやった。

 トーマは『あ、なるほど』と手のひらを叩いて、反省の陰も見せずに安堵した。


 コンラッドさんって、トーマにそういう目で見られていたんだなぁ……。

 コンラッドは確かに変態だけど、アレは内向きの無害な変態だ。

明日夕方から新作!

【勇者パーティの『底無しの預かり屋』 勇者のお姉さんと蒸発する】を公開します


非力な少年が、人に依頼された時に限り無制限に品物を預かれる力を使って、武力ではなく知恵と工夫で依頼人を救うお話です。


他の無限アイテムボックス系のお話とは味付けが異なります。

主人公の力は、他者に依頼された時に限り発動します。

本人の意思に反して自動発動してしまう力なので、全く融通が利きません。


ですが、その融通の利かなさがこの物語のスパイスです。

発動さえすれば誰も逆らうことの出来ない絶対的な力を駆使して、意外な方法で悪党をやっつけるこの新作を、どうか応援して下さい。追って下さい。

ざまぁ展開だけなら冒頭2万字いないで終わるので、そこまでだけでもぜひ!

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