・電熱線を試作しよう - なんでなんでなんで -
リアンヌと遊ぶということは、すなわちそれは朝までコースってことだ。
「アリクはさー、偉いよねー」
「わっ、リアンヌッッ?!」
一緒に遊んだ――いや、遊び倒した夜のその翌朝、俺はやけに近いような気がするリアンヌの声にふと目を開いた。
そして隣に寝そべるリアンヌの姿に、否応なくも飛び起きた。
「ロングソードさんの話聞いたよー。というか、トーマにメチャクチャ愚痴られたっ! あのオヤジは礼儀がなってないって、ぷりぷり起こってた! あはははっ!」
「ロングソードじゃなくて、ロンソさんだよ……。どうして君は、人の名前を覚えるのがそんなに苦手なんだろうね……って、わぁぁぁっ?!」
リアンヌって人は、時々何を考えているのかわからないところがある。
彼女はベッドの上をクルンと回って、2つ下の生意気な婚約者、つまり俺の上半身にドスンとのしかかってきた。
今の俺に性欲はない。
だけど好意を持つ女の子にくっつかれたら、そんなの動揺して当然だった……。
始まりは政略結婚だったけれど、俺はリアンヌのことが好きみたいだ……。それも、かなり。
「アリクだってトーマみたいに怒ってもよかったのに」
「そ、そう、かな……っ」
「そうだよーっ、町発展させて何が悪いのっ? アリクのおかげで、グリンリバーのみんな楽しそうにいつも笑ってるのに、何で逆恨みされなきゃいけないのーっ?」
「そ、そんなこと……今はっ、どうでも、いいから……っ。は、離れてよ、リアンヌ……ッ」
羞恥を堪えてそうお願いすると、リアンヌは弾けるような笑顔を浮かべてこう言った。
「へへへーっ、お子様がいっちょ前に女の子意識しないのーっ!」
「トータルでは君よりずっと年上だよっ!」
さらに首に二の腕を巻き付けて、2つ上のお姉ちゃんはちょっと乱暴に年下の婚約者をかわいがった。
リ、リアンヌのやつ、もう……二次成長が始まっているのか……。
「あ、今日は電熱線っての作るんでしょ!? なんか面白そうだし、私が手伝ってあげる!」
「それはいいから早く離れてよ……っっ!」
「んーー……」
「んーじゃないよっ、こんな現場、もし誰かに見られたら笑われちゃうよ……っ」
「てか……。アリクってさぁー? トーマにイタズラするくせに……、なんで私にはしないの?」
「で、できるわけないよーっっ?!」
「えーっ、なんでー?」
「そ、それは……」
それはなんでだろう……。
だって、リアンヌ相手だとシャレにならないし……。
それにこんなに綺麗なお姫様に、変なことなんてとてもできない。
こんな本音を口にしたら、俺は彼女に笑われてしまうだろう。
「ねーねー、なんでー? なんで私にはイタズラしてくれないのー?」
「で、できないよ……」
「なんで? なんでなんでなんでー?」
「だって、君は特別じゃないか……」
自分でもなんでそんな言葉が出てくるのかわからなかった。
ところが俺が俺の返答に困惑する一方で、リアンヌは『特別』という単語にとても気分をよくした。
「ふぅぅーん♪ 何がなんでも私にイタズラさせるつもりだったけど、やっぱ気が変わった! 特別ならいいやーっ!」
「というかこれ、君が僕に、現在進行形でセクハラしている状態だと、思うんだけどな……」
「おっぱい触ってもいいよ?」
「触らないよぉっっ!!」
俺は笑い出すリアンヌの拘束から逃れて、部屋の出口側に逃げた。
「てか、停滞を破ったのはアリクだし。あ、でもカナには変なことしちゃダメだよ? カナはガチでアリクのこと大好きだし、いい加減なことしたら八草さんに斬られちゃうよ?」
「あり得なくもない話だね……。しないけど」
「ならなんでトーマにはするしーっ!?」
「そのトーマにイタズラしたくなったんだから、しょうがないじゃないか……」
そう答えて俺はリアンヌから逃げた。
ちょっとしたイタズラがきっかけとなって、人間関係が揺らいでいる。
これもまた、好奇心任せに好き放題した俺の自業自得だった。
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