表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
180/271

・温室を作ろう - 僕ってスケベ? -

「あ、そうそう。なんかさっき、トーマの様子が変だったんけど……アリク知ってた?」

「うん、どうもあれは僕のせいみたい」


「あ、やっぱりっ! トーマの問題は、だいたいアリクが原因だもん!」

「なにか、あったのですか……?」

「うん、寝てるトーマにイタズラしたんだ」


「え……ええ……っっ?!」

「なっ、なななっ、なんでぇっ!?」

「なんとなく好奇心で。うーん……まずかったかな」


 隣のカナちゃんが逃げるようにリアンヌに寄った。

 リアンヌも同じように逃げるものだから、俺たちの間にはちょっと寂しい距離ができた。


「誤解しないで。僕は純粋に、好奇心に則って行動しただけだから」

「こ、こうきしん……っ、ですか?!」


「なんで逃げるの?」

「に、にげてません……た、ただ、すこし……しょうげきで……」

「いや普通逃げるしっ! トーマにイタズラって、マジで何やってるしぃっ!?」


「うーん……ダメだった……?」

「ダメに決まってるしぃーっっ!! いこっ、カナッ!」

「ぁ……っ、あの……しつれい、します……っ」


 カナちゃんとリアンヌに置いていかれてしまった。

 俺は少し涼しくなった温室で空を見上げた。

 西の夕日はかげり、東には気の早い夜が訪れている。


「僕って……」


 もしかして、もしかしたらだけど。

 俺って目覚めていないだけで、実はスケベ野郎の素質があるのだろうか。

 なんのためらいもなくトーマの身体にベタベタ触れたのは、俺がトーマの主人だから?


「うーん……わからない……。次に隙があったら、もう一度トーマで試してみよう」


 そう決めて、俺は倉庫に入ると夕飯の時間まで仕入れた金属を観察して過ごした。

 効率的な電熱線を発明し、それを使って温室を温めて、南国の花――とついでにイモを育てる。


 それが成功すれば、温室を使った大規模農業の可能性が少し広がる。

 既存の燃料に頼らない電気ストーブは木炭や油の相場を下げ、それを買う余裕のない家庭を豊かにしてくれる。


 そしてイモは――サツマイモはきっと、イモようかんや、スイートポテトとなって、紳士淑女をうならせるだろう。


 ……普通に南国からサツマイモを輸入した方が早い?

 確かにその通りだ。


 でも、手作りのサツマイモを使ったスイートポテトは、きっとすごく美味しいだろう。

 採算は合わないけど、道楽でやってみるだけの価値はありそうだ。


「で、殿下っ、お、お迎えに参りました……っ! 食堂で皆がお待ちです!」


 そんなことを考えていると、問題のトーマが温室にやってきた。


「わざわざありがとう、トーマ」

「い、いえ……。しかし暑い……暑いですね、ここは……」


「そう? 今はちょうどいい塩梅だと思うけど」


 そう答えながら立ち上がった。


「ひ……っっ?!!」


 するとトーマは突然後ずさった。

 不思議に思った俺が迫ると、壁をはって逃げ出した。

 あのトーマが半泣きになっていた。


「ごめんね、トーマ。次確かめるときはちゃんと言うよ」

「つ、つつつ、次ぃっっ?!」


「触らせて。ってちゃんと言うから、ダメかな?」


 その一言がトーマの顔を真っ赤に染めた。

 年下であり主人である特権を使ってお願いしてみると、困りに困り果てた姿を見れた。


「ダ、ダメ……ダメでございます……っ! ひ、非常に、惹かれる反面……自分には無理にございますっ、堪えられそうにありませんっ、殿下っ!」


「じゃあ、次はカナちゃんかリアンヌで試すよ」

「殿下ぁぁっっ?!! ダメですっっ、それは絶対にダメにございますっつ!!」


「さすがに冗談だよ。ごめん」


 リアンヌにするようにトーマの手に触れて一緒に歩き出す。

 いつものトーマなら不審者に変わるのに、今はいやに神妙で面白い。


「カッ……カッ……!」


 茹でダコのように頬を染めるトーマは、怪しいというよりもかわいらしく見えた。

 何かこう、もっとイタズラしたくなるような、そんな感覚を覚えた。


「こ、このトーマ……ッ、カナとリアンヌ様のことを思えば……か、覚悟を……覚悟を決めて、まいりまする……」

「だから冗談だってば」


「冗談では済みませぬぅーっっ!!」


 それもそうだ。

 だけどこのイタズラ、ちょっと癖になってしまいそうだ。


 ちょっとのイタズラで、こんなに沢山の人の心を揺り動かせるなんて知らなかった。

 トーマが女の子らしい反応を見せるところも面白い。


 恥じらい、困り果てる人の姿が楽しいだなんて、俺の精神はまだまだお子様のようだ。


「リドリー様に……顔向けできない……っ。ぁぁ、どうしてこんなことに……っ」


 大げさに苦悩するトーマの手を引いて食堂に入ると、リアンヌが明るく俺を迎えてくれた。

 カナちゃんの少し警戒したような態度がまた、俺には新鮮でおかしかった。


 僕ってスケベ?

 自分ではまったくわからない。


明日9月9日より、双葉社のアプリ・マンガがうがうにて、

コミカライズ

「ポーション工場に左遷された錬金術師、美少女に拉致され異国でいつの間にか英雄になる」

の連載が開始します。ぜひ、1話のメープル登場まで試し読みしてみて下さい。


成年誌での連載経験のある作画担当とだかづき先生による、かわいくてちょっと肉感的な作画が魅力です。


また、本作のストックが付きてしまいました。

更新できるかは明日の体調次第になります。

まだ体力が戻っておらず、執筆に時間を回せない状態です。

どうにかしてみます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ