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・その王子、物理無効につき

 その後、父上の政務室に呼び出された。

 叱責されると思ったのか、トーマは顔面蒼白だった。

 年上のお姉ちゃんが今にも泣きそうな顔をしていた。


「も、申し訳ありません陛下! わ、私が、至らないばかりに、こんなことに……っ」


 ジェイナスも父上もトーマにやさしい言葉をかけてくれなかった。

 大切なアリク王子を狙われて、はわらた煮えくり返っているって感じだった。


「父上、トーマは悪くないんだ。えっと、その……」


 7歳の子供だったらこの状況、どう説明するのかなとしばらく悩んだ。

 考えに考えての結論は、『トーマを守るために弱い子供を演じることを止める』だった。


「どういうことだ、トーマ? アリクを放置して功績を焦るなど、お前らしくもない」

「わ、私は……」


 よっぽど子供を狙われたことがショックだったんだろう。

 父上たちは冷静さを失いかけていた。

 これじゃトーマが可哀想だ。


「僕が囮になるって言ったんだ。父上とアイギュストス大公の同盟を引き裂こうとした相手の正体を、ただ知りたかったから」


 普通の子供を演じることを止めると、父上たちの強い興味がこちらに向いた。


「ほう。詳しく説明せよ」


「トーマは撃たれるなり機敏に動いて、物陰へと僕を運んでくれた。けれど僕は、自分から元の場所に戻ったんだ。そして狙撃手の居場所を見つけると、そこへトーマと兵隊さんを急行させた」


 こういった場でなければ、父上は我が子の知性を喜んでくれただろう。

 だけど今回ばかりはとても難しい顔だった。


 腹心のジェイナスと内緒話まで始めた。

 政治家としての父上は、とても難しく、厳しい人だ。


「トーマよ、よくやった。タイス伯爵も聞けばお喜びになるだろう」

「も、申し訳ありません……っっ!!」


 トーマは王の前にひざまずき、首を捧げて平謝りをした。


「もういい」

「ええ。それに下手人を死なせることなく拘束出来たのは、大きな収穫でした」


 2人はトーマよりも、無茶をした俺の方に文句を言いたげだ。


「アリクよ、次は毒矢を使われるやもしれぬ……。もう無謀なことはするな……」

「あ、そっか……。ごめんなさい、父上」


 こうなると毒耐性が欲しくなるな……。

 そんなスキルが実際にあるのかわからないけれど、ないと身動きが取りにくい。


 父上がこれからアリク王子の護衛を増やし、自由を減らすのが見えていた。


「どんな手を使ってでも首謀者を吐かせます。申し訳ありませんがアリク様、しばらくは離宮でご自愛を」

「トーマよ、アリクの監視を命じる。何があろうとも、アリクを離宮から出すな!」

「はっっ、この命にかけましても!!」


 俺とトーマは協力して暗殺者を拘束した。

 なのに俺たちは離宮に閉じこめられることになり、戻るなり母上にまで長いお説教をされるはめになっていた。



 ・



・黒衣の侯爵


「矢が弾かれた?」

「はっ、確かにこの目で……」


「嘘を吐きなさい、そんなことあるわけないじゃない」

「本当です! 頭と肩に、強弓が命中するのをこの目で見ました! なのにあの王子……、あの王子、何かがおかしいです!」


 暗殺計画は失敗。

 王は同盟の要であるアリク王子を離宮に隠してしまった。


 下手人は捕らえられ、いつ口を割るかもわからない。

 ロドリック王は議会で私たちを暗殺計画の首謀者と名指しして、偉そうに恥知らずと非難してきたわ……。


「そう、人間の身体は強弓を弾くのね……」

「こ、侯爵様……? なっ、何をっ!? お、お待ちをっっ!!」


 ちょうど手元にあったから、小型のボウガンで捨て駒を撃ってみたわ。

 矢に胸を貫かれた城の女官は、胸を撃たれて獣みたいに鳴いたわ。


「なんだ、ちゃんと死ぬじゃない?」

「な、な、ぜ……」


「大丈夫よ。関わったお馬鹿さんたちも、あなたの後を追うはずよ」

「ゲ、外道……ぅっ……」


 すぐに始末人を呼び、間者にしていた女官を始末させた。

 さすがに、これは少しまずいかしら……?


 私を処する権力は王にはないけれど、議会で暗殺者扱いされたら発言力を削られかねない。

 大鉈を振るった口封じがいるわね……。


「こいつと、こいつと、あとこいつね。ああそれと、ついでにギムレットの息子も始末しておいて。ちょっと様子がおかしかったから、念のために消しておきましょ……」


 暗殺計画の口封じに新しい暗殺を命じて、私は安心を得た。


 そうだわ。

 アリク王子を上手く殺せないなら、リアンヌの方を消せばいいじゃない……。


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