・温室を作ろう - イタズラしてみた - 2/2
「はっっ?! こ、こここっ、ここはギルベルド殿下の書斎机っっ?!」
「いや、気持ちはわかるけど、一応僕の机のはずだけど……」
トーマはイスから飛び上がり、男装小姓なのに内股になって、高い背丈から俺のことを見下ろした。
若干責めるようなその目が俺には新鮮だ。
トーマの目が潤んで揺れている。
なんか色っぽいけど、やっぱり何も感じない。
「殿下……先ほど、自分に、いったい何を……?」
「イタズラしてみた」
「は、はうぁっっ?!!」
子供に戻って綺麗なお姉さんにイタズラとか、男なら1度は夢見るけど、今の俺にはなんの感動もない。
むしろ動揺するトーマの姿に、はしゃぎたくなるような気分になった。
「誓って言うよ、先ほどの行動にスケベ心はない。ただトーマにイタズラしてみた結果、自分がどんな感情を抱くか興味が湧いただけ」
「ど、どうなりましたかっ!?」
「特になんにも感じなかった」
「なっ、んなぁっ?! そ、それはそれで酷いですよぉーっ、殿下ぁっ!?」
「うーん……でも」
「でもっ!?」
「もう少し大人になったらわからないかも。こんなに綺麗なお姉さんが、ずっと自分の面倒を見てくれているんだから」
現代の成人男性視点から見ると、とても刺激的な関係に見えなくもない。
その気になれば俺は、トーマを手込めにすることも容易だろう。
……今の俺にはなんのメリットもないけど。
「はっ、大人にならないで下さい、殿下っ! せめてお姿だけは、そのままの愛らしいお姿で!」
「寝ぼけたこと言ってないで仕事しよ。……僕が遊んでいる間、政務を進めてくれてありがとう、トーマ」
「貴方を支えるのが自分の役目。貴方が望むなら、自分はロバとなって働きましょう!」
「ロバ? トーマはロバじゃないよ、やさしくて面倒見がよくて情熱的な綺麗なお姉さんだ」
トーマと一緒に残りの仕事を片付けた。
いつか自分に年齢相応の欲が身に付いたとき、俺はどう行動するのだろう。
大人にならないでと願う、彼女の気持ちもわかった。