・温室を作ろう - イタズラしてみた - 1/2
カナちゃんを交えて午後のお茶を楽しんだ。
最近アイギュストス港では交易が以前にも増して活発で、連日のように貿易船が港を訪れているそうだ。
異国の果実や黒糖。それらを使ったデザートの話をリアンヌが饒舌に語ってくれた。
給仕をしながら耳を立てるターニャさんにも。
「黒、蜜……ごくり……。そ、そういう物もあるのね……」
そのターニャさんが見るからにお喋りに加わり加わりたそうに独り言をつぶやくので、俺はお茶会の席から外れることにした。
少しだけ仕事を片付けると言ってその場を離れると、背中越しの食堂からみんなの華やかな声が聞こえてきた。
王族が居ると人が盛り上がれない。
そんな悲しい現実を背中に感じながら階段を上がり、政務室に入った。
政務室ではトーマは書斎机に突っ伏して眠っていた。
あのトーマがこの書斎机を使うなんて、珍しいこともあったものだ。
「トーマ? おーい、トーマ? ……疲れてるのかな」
美しき男装小姓。3つ年上のお姉さんのトワ・タイスさんは、眠っているとまるで別人のようだ。
それにしても無防備だ。あのトーマとは思えないほどに、無防備だ。
今なら何をしてもトーマに起こられない。
そう思うとついついイタズラしたくなってしまい、俺は隣に回り込んでトーマのわき腹を指で突いた。
反応がなかったので、他のところも突っついた。
デリケートなところを平気で触れられるのは、俺が子供だからだろうか。
トーマは男装をしているけど、お尻と胸はしっかりと膨らんでた。
それが俺には大発見だ。
あの日見てしまったあの着替えは、幻じゃなかったんだと納得をくれた。
いや、それにしてもやわらかい。
服の下はどうなっているのだろう。
こんな窮屈な格好をして苦しくないのかな。
「んっ、んんっ……?!」
「普通に色っぽい。色っぽいけど、んーー……やっぱりピンとすらこないや……」
イタズラを止めた。
あまりに淡すぎるスケベ心に自分で自分にがっかりしながら、トーマが仕訳してくれた書類に目を通した。
必要な物にはサインや印を押し、淡々と仕事を進める。
それが一通り終わると、起きないトーマの隣に戻った。
「トーマ、そろそろ起きないと、またイタズラしちゃうよ?」
そう言っても起きなかったから実行した。
また色々やってみたけど、やっぱりしっくりとこない。
胸が高ぶるとか、嬉しいとか、そういう現象は全くない。
まったくもって今の俺はお子様だった。
「んっ……ぁっ、ぅっ、ぁ、ぁぁ……っっ?!」
「うーん……」
「で……殿、下……?」
「おはよう、トーマ」
「で…………殿下ぁぁーーっっ?!! い、今っ、今自分にっ、な、なななっ、何を……っっ?!!」
今のは微妙に意識があったようだ。
けれど俺、イタズラの犯人に動揺はない。
後ろめたいことをしたという実感が、これっぽっちもなかった。
体力が戻るまで更新の文字数が少なくなりそうです。