表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
174/271

・温室を作ろう - カニ、ベリー、胡椒 -

 翌朝、朝食を済ませるなり俺たちは庭園に集合した。

 といっても建築のプロはタルバさんだけで、俺たちは彼のアドバイスを頼ることになる。


 建設労働者は橋建設に持って行かれてしまっているので、具体的な人員はリアンヌとカナちゃん、トーマに、3名ほどの若い近衛兵さんたちだけだった。


「いつでも野いちごが食べられるようにすると、そううかがいました! 素晴らしい……!」


 トーマはやる気だ。

 あれから一晩明かしてみると、勝手にイチゴ畑を作ることにされていた。


「ホッホッホッ、若いもんはええですなぁ……。ワシは、サツマイモ畑と聞きましたが」


 タルバさんは結構なお爺さんだった。

 頭がつるっとハゲ上がっていて、モコモコの白髪が頭の左右に広がっている。


 労働者としては全く使い物になりそうもなかった。


「イチゴやサツマイモより、香辛料の方が経済が回ると思うんだけど……?」

「うんっ、ご飯は美味しくなるかもしれないけど、それってつまんない!」

「うちは……ブルーベリーの木が、いいです……」


 何を栽培するのかはさておいて、さあ温室造りに入るとしよう。


「さすがに大きな温室を作る予算はない。というより、温室については予算の承認が下りてないから、まずは小さいのを作る」

「でもんすとれいしょん、ということですな、ホッホッホッ」


「そう。父上や兄上、母上に温室を見せつけて、その有用性を認めさせるんだ。そうすれば予算が出る……かもしれない」


 ビジョンとしては、高価な香辛料を栽培する大型の温室だ。

 電気ストーブで温室を暖めて、なんでもいいから金のなる木を育てたい。


「ブルーベリーが、いっぱい……。いいと、おもいます!」

「いやイチゴがいいよっ、クレープにも合うし!」

「この際、自分は食べらればなんでもいい気がしてきました!」


 果物では大した稼ぎにならないし、それなら南方の花を育てた方が諸侯の気が引ける。


「それで構造だけど、北と西をのぞく2方向を二重構造のガラスで囲う。もちろん、天井もガラスを敷くよ」


 これだけでかなりのお金がかかる……。

 本当にビニールがこの世界に存在していれば、どんなに助かることか……。


「その前に土台工事ですな。気張ってまいりましょう、おっ、とっとっとっとっ……?!」

「いやいやっ、タラバお爺ちゃんは見てるだけでいいからーっ! ここは私に任せてっ!」


 タラバじゃないよ、タルバだよ、リアンヌ……。

 こっちまで間違えそうになるから、何度も間違えないでよ……。


「いやワシはこれでも若い頃は、現場で怒号を上げて……おっと……? ほっほっほっほっ、金槌がすっぽ抜けてしもうたわい」


 これから作るのは奥行き6m、横幅2.5mほどの小さな建物だ。

 その予定地に俺たちは平らな土台を組み、その上に煉瓦の床を敷き詰める。


 それが終わったら北と西側の壁とドア。壁はレンガを二層にして積み重ねて断熱性を高める。

 ドアの自作はさすがに俺たちには無理だったので、出来合いのドアをタルバさんから買った。


 そのドアには天然ゴムのパッキンを盛って、気密性を高める予定だ。


「カナちゃん、疲れてない? 疲れたらちゃんと言ってね」

「ありがとうございます……。でも、たのしいから、へいき、です……」


 カナちゃんには低いところのレンガを重ねてもらった。

 これがとても丁寧な仕事で、ほれぼれとするほどに整然と積み重ねてくれている。


「いい仕事、してますなぁ……ホッホッホッ」

「きょうしゅく、です……」


 背の高いトーマには高いところ、リアンヌには力仕事全般をお願いした。

 近衛兵さんたちには西側の壁を任せている。


「リアンヌも疲れたら言ってね」

「全然! アリクこそ、壊したいところがあったら言ってね!」


「壊す予定は今のところないかな……」


 リアンヌはグレートモールを使って地中深くに杭を打ってくれたり、地面を叩いて平らにしてくれたり、レンガや粘土を軽々と運んでくれる。


 それはお姫様の姿をしているだけの、頼もしく男らしい重機そのものだ。


「まるでブルドーザーでユンボでフォークリフトだね」

「へへへ、収穫期はコンバインにもなるよー!」


 顔にドロを付けたじゃじゃ馬が、少し無防備なシャツとズボン姿で笑っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ