・グリンリバーを照らそう - それが人生 -
「まるで、太陽がそこにあるかのよう……。素敵……!」
5つの白い光と影がもたらす陰影に、ターニャさんも無邪気にあたりをクルリと見回して、興奮と感動に笑った。
「これが殿下が想い描かれていた夢……まるで、天上の世界に迷い込んでしまったかのようです!」
トーマは僕ばかりを見ていた。
白い光に照らされる僕に、一人で恍惚としていた。
トーマには深くは触れないでおこう……。
公衆の面前に、トーマの暴走モードをお見せするわけにもいかないし……。
「問題発生です、リドリー様。近隣の者たちが次々と外に集まってきています……。どういたしましょう……?」
「今夜だけ特例と断って入れてあげて。それと、警備の強化を」
夜を照らす強い光は、この屋敷に人を引き付けた。
近衛兵さんと母上の会話を聞いて盗み見ると、正門の辺りにたくさんの人だかりができている。
その誰もが白い光に照らされるモクレンの木を見つめていた。
人々は屋敷の中へと通され、誘蛾灯に導かれるように、夜を駆逐する白い光に群がった。
後は、電球の耐久性と、電力の消費量が問題だろうか。
もしもバッテリーがすぐに干上がるようなら、明るい未来計画が頓挫してしまう。
「あのー……あーーのーー……殿下? 殿下っ、アリク殿下! 己を無視しないでーーっっ!!」
「あ、ごめん、ちょっと考え事してて……で、何?」
「ビリビリ保存機です! 己のビリビリ保存機は、いつ頃、返していただけるのでしょうか……。あ、いや、無理にとは言いませんが……はぁ……」
それは不幸な事故というか、ちょっとした貰い事故だ。
アグニアさんが手当たり次第にギャラリーをかき集めなければ予定通り、バッテリーは寝る時間までには返却されていた。
「コンラッドさんが自分で回収するなら、僕は止めないよ」
「己にできるわけないじゃないですかーっっ?!!」
「じゃあ、ごめん」
「おのれ、おのれアグニアァァァァ……ッッ」
「なんや、呼んだかー?」
「いえなんでもありません! あっち行って下さい!」
電球の様子を観察してみると、なんとリアンヌが照明を使って影絵遊びをしている。
屋敷の壁をスクリーンにして、狐を作ったり、ウサギを作ったり、鳥を作ったり、現代の子供だましに拍手喝采だった。
到底、コンラッドさんの私物を返せと言える雰囲気ではない。
要求しても、そんなこと言わないでもっと貸してくれと、そう言われるのが目に見えた。
「アグニアめぇぇ……っ」
「だからなんや?」
「なんでもありませんっっ!!」
こうして彼らは、電球の耐久性の検証を代わりに行ってくれた。
光が鈍ってきたらダイナモ発電のハンドルを回して、彼らが一晩中電球の明かりを維持してくれることになった。
コンラッドさんは涙を流して客室に去り、僕たち子供もまた夜が更けてくると、『もう寝なさい』と寝室に戻された。
みんな興奮したせいで疲れていたのか、寝ると決めると寝るのが早かった。
だけどそこには一人だけ例外がいた。
「さあっ、昨日の続きしよーっ!」
「眠くなるまでは付き合うけど、眠くなったら即降りるからね」
「えーーっ、せっかく二人っきりなんだから、朝までずぅーっと遊ぼうよーっ! ねーってばぁーっ!?」
「君に付き合って何度後悔したかわからない、って言っているんだよ……」
「何度だって後悔すればいいよ! それが人生!」
「良い話にしようとしても、付き合えないものは付き合えないよ。今日という今日こそは、頃合いになったら僕はゲームを降りる」
みんなと一緒の夜もいいけど、リアンヌと一緒の夜も気持ちが高ぶって盛り上がった。
俺の目から彼女は綺麗なお姫様だったし、彼女も俺を合法ショタとか意味わからないこと言って、とても容姿を気に入っている。
「私たち、大人になっても絶対仲良くできるね! 死ぬまで付き合ってもらうから、これからもよろしくね!」
「よろしくしたいけどよろしくしたくない僕の気持ち、いつかわかってくれると嬉しいな……」
結局、リアンヌの明るい誘惑に負けて、その晩も朝までコースになった。
だってこんなにかわいくて綺麗なお姫様に、もう1ターン、あともう1ターンと言われたら、とても断れないよ……。