・グリンリバーを照らす電球を作ろう - 爆裂種 -
「ずこー! なにそれーっ、ずっこい! そんなのただの力業じゃん!」
「同感。でもできちゃうんだから、しょうがないじゃないか、魔法の力で」
なんと言われようと、現代式にやるよりもっと楽な方法があるんだから仕方がない。
石ころで缶詰を開ける人なんていないんだ。
「ガラス容器と、フィラメントと、プラスとマイナスの電極が繋がった蓋を用意して、風魔法で容器の中を真空にしてから蓋を完全密封すればいい」
そう説明しながら俺はテーブルの上の布をまくり上げて、電極が付いた蓋と、ガラス容器と、乾燥トウモロコシの種が入った皿をリアンヌに見せた。
「え、なんでトウキビ……?」
「サトウキビじゃないよ、トウモロコシだよ」
「だからそれってトウモロコシのことじゃん」
「……言葉の定義なんてどうでもいいよ。こっちにきて、リアンヌ」
右手は皿を、左手では勇気を出してリアンヌの白い手を握って、厨房に引っ張った。
リアンヌのやつ、引っ張られると犬みたいに無邪気に笑う……。
「いやぁ……最高ですな、合法ショタ……」
「もう5年もすれば、生意気なニキビづらの青年ができあがるかもね」
「現実残酷過ぎっ!!」
カマドに火を入れて、フライパンにオリーブオイルをたらして、その上に乾燥トウモロコシをダバァーッした。
後は焦げないようにあぶるだけだ。
「え、これって、まさか……」
「どうなると思う?」
「もしや……ポップコーンッッ?!」
「正解。弾けるトウモロコシを食べる地域があるって、最近読んだ旅行本で見つけたんだ」
誰が名付けたか爆裂種。
爆裂種のトウモロコシを加熱すると、なんと爆ぜてあのポップコーンになる。
ポンッとフライパンの上で爆ぜて、リアンヌが高く跳ねたポップコーンをナイスキャッチした。
「あちちちっっ?!」
「そりゃそうだよ」
「はむっ! わーーっっ、味気ない! バターとお塩と醤油とキャラメル足さなきゃ!」
「醤油もキャラメルも手元にないから、今日は塩バターだね」
勝手知ったる人の屋敷。
リアンヌは食堂の地下にある食料庫に駆け下りていった。
俺の方はポップコーンを1つ取り出して、ガラス瓶の中に入れた。
1つ味見をしてみたけれど、確かに塩がないとあまりに味気ない。
それでももう一口、二口と口に運ぶと、懐かしさについ後を引いてしまう。
これに塩とバターを足せば、カナちゃんとトーマもきっと喜ぶかな。
「お待たせーーっっ!! カナたちも呼んでポップコーン大会しよーっっ!」
「それは電球の試作が終わってからにしよう」
「えーーーっっ、そんなのどうでもいいよーっっ!!」
「電化への偉大なる第一歩が、ポップコーンなんかに負けるだなんて遺憾だよ……」
「だって電球は食べられないもん。美味しい分だけ、ポップコーンの勝ちーっ!!」
「なんてハッピーな思考回路だろう……」
塩とバターを加えたポップコーンに、リアンヌが震えるのを見ると、そんなに美味しいのかと俺も手を伸ばしてしまっていた。
異世界で食べるポップコーンは、震えるほどに美味しくて、そしてとても、日本で暮らしていた頃が懐かしくなった……。
ストックありません。
明日更新遅くなります。