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・仕切り直して……発電器を作……え? - ですわ -

「アグニア様はいいとして……おいっ、そこの不審者コンラッド・コーエンッ、何を勝手に殿下の部屋に入っているのだ!」


 俺たちの騒ぎを聞きつけてトーマが部屋にやってきた。


「ひょ、ひょぇっっ!? こ、ここ、これはついっ、つい出来心で……っ! というより、怒るならアグニア殿も怒ってほしいですぞーっ!?」


 トーマはコンラッドさんにだけ注文を付けて、ついたてごしにのぞくアリク王子の姿にニヘラと薄笑いを浮かべた。


「トーマ、すぐに出るから乗り物と、移動しながら食べられる物をお願い」

「はっ! して、お着替えはどういたしましょうか!? よろしければ、ここは自分が……!!」


「それはいらない」

「そう……ですか…………」


 ほらいらないでしょと、ズボンを身に付けた姿を見せると、トーマは肩を落として部屋を出ていった。

 王子様の着替えを手伝うことは、トーマにとってはとても楽しいことらしい。


「せや、アリクの馬車にベアリング、搭載しといたでー」

「悪いけど後で母上の馬車にもお願い。母上と父上、ベアリング式の馬車がすごく気に入ったみたいで」


「ええで、うちにドーンと任せとき」


 なんて頼もしい人だろう。

 これで人のお楽しみを横取りするところがなかったら、なおよかったんだけど……。



 ・



 少し横道にそれるけれど、1つ不可解というか、納得がいかないことがあった。


「では、わたくしは行ってまいりますわ、リドリー王妃様。あ、夕飯は唐揚げがええですわ、ほんま」


 それはアグニアさんだ。


「あら嬉しい。アリク、アグニア様がやさしい人だからといって、あまり無理を言ってはいけませんよ」

「う……うん……? うーん……うん……」


 母上の前でお嬢様言葉を使う、奇妙なアグニアさんのことだ。

 誰に対しても傍若無人なあのアグニアさんが、頭でもぶつけたのかと疑いたくなるほどに、猫をかぶっていた……。


「お世話になっているのはわたくしの方ですわ。アリク様はとても気配りのできる方で、それに気さくで、公平なところが魅力だと思いますわ、ほんま」

「あら……っ、あら嬉しい……っ! そうっ、うちの子ってとってもやさしいのっ、とてもやさしいのよっ、ふふふっ!」


 これが愛のなせる技……?

 気品あるアグニアさんは、俺たちからすれば違和感の塊。非現実的でシュールな嘘偽りだった。


「ほな、ではなく、うふふふ……それでは、行きましょうか、アリク様」

「え……? あ、う、うん……」


 昼食はバケットに厚いハムとチーズと、新鮮な青菜をはさんだ簡単な物になった。

 それを片手に、俺は快適なベアリング付きの馬車に乗り込み、しきりに首を傾げながら川辺の実験場を目指した。


「うち、案外やるやろー?」


 屋敷を離れるなりアグニアさんが元に戻ってくれてホッとした。


「父上と母上の前では、いつもああなの……?」

「せやな。王宮に寄るときは、基本アレや」

「ただちに止めるのである。己の女性不信をこれ以上悪化させくなければ、止めれっ、止めれであるっ、気色悪いっ!!」


 アグニアさんはコンラッドさんに大笑いした。

 唯我独尊なアグニアさんが猫をかぶるのは、それだけ兄上のことを好いているからだろう。

 そうでないとここまでしない。


「ああ、あそこや」

「知ってるよ。だってあそこ、僕が用意させた土地だし……」

「申し訳ない、アリク殿下。しかし、己たちも我慢できなかったのである……」


「せや。アリクが姫さん部屋に連れ込んで、朝までお楽しみしてなかったら、噛めた話や」

「そ、そんなことをぉぉっっ!? 嘘っ、最近の子っ、早過ぎィィーッッ?!」

「じゃあ今度、僕の代わりにコンラッドさんがリアンヌの相手をしてあげてよ……」


 リアンヌのことは大好きだけど、あの体力にだけはどうやっても付いていけない……。

 あの子の身体、いったいどうなっているんだろう……。


「さ、さささ、さすがは殿下っ! ご、業が深いですなぁっ!」


 なんか誤解されているけどそのままにして、俺たちは実験場である川辺で馬を下りた。

 川辺の実験場には真新しい木製の水車が1つ設置され、ベアリングシステムを搭載したそれが今も軽やかに回転している。


 あの陶器で覆われたバッテリーが馬車から下ろされ、バッテリーの電極と、水車の電極が銅線で結ばれた。

 銅線の保護には、リアンヌが手に入れてきた天然ゴムを利用していた。


「ではご確認下さい、殿下。帯電石はまだピカピカしておりません」

「ほないくでーっ!」


 アグニアさんが水車側のレバーを上げた。

 するとたちまちに、帯電石が紫色の妖しい輝きを放ち始める。

 バチバチと紫色の電流がうねり、帯電石が電気エネルギーを吸収していった。


「凄い……なんかあっさり成功してる……」

「そら設計図も何もかも、自分が考えたことやんか。成功して当たり前やろ」


 1発で成功するなんて考えていなかった。

 それに勝手に組んだのはこの2人で、俺は設計図を作っただけに過ぎない。


 それに俺は、組み立てからハブられたのがまだ不満だった。

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