表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
153/271

・甘き、罠…… - くれぇぷだぁ? -

 そんな八草さんにターニャさんはずいと手のひらを突き出したそうだ。


「な、なんでぇ……?」

「私これからクレープ屋に行くの」


「くれぇぷだぁ? あんな甘ったるいもん食ってたらすぐ虫歯になるぞ」

「カナの分も買うんだけど?」


「へっ、先に言いな、そういうことは! ほらっ、これで好きなだけ買え! それから、これからもカナと仲良くしてやってくれよ!」

「普通にしてればイケオジなのに、そういうところが残念ね……」


「だったら金返せや、このクソアマッ!」

「はははっ、またね、おじさん!」


「親バカのおじさんで悪かったなーーっっ!!」


 俺は八草さんの親バカなところが好きだ。

 カナちゃんからすれば、少し干渉が過ぎて複雑なのかもしれないけれど、親が子供のことを大好きで何が悪いのだろう。


 川沿いの大通りをターニャさんは南に進み、昔からバザーが立ち並ぶ広場にやってくると、広場から見て反対側の川辺に目当ての移動販売車を見つけた。


 10人ほどの長い行列ができていたそうだ。

 ターニャさんはその最後尾に並んだ。

 カナちゃんにちゃんと買って帰れるか、心配になりながらだった。


「申し訳ない! 今の人で卵が切れてしまった! 今日はこれで閉店、材料が集まったらまたくるよーっ!」


 その不安は的中してしまった。

 行列に並んでいた女性や子供たちは、悲しそうに落ち込みながら広場のバザーに代わりを買いに行った。


「あ、君かわいいね?」

「え……? ええ、まあ……そういう自覚はありますけれど」


 カナちゃんになんて説明しようかと、ターニャさんは川辺にまだ立ち尽くしていた。

 ところが店のお兄さんがそんなターニャさんに声をかけた。


「こっちにおいで。実は1つだけキャンセルがあってね、お近付きの印に君にあげよう」

「あっ……本当ですかっ!? ああ、よかった……一緒に食べるって友達と約束していたんです……っ」


 普通、怪しむ。

 けれどその時のターニャさんは、カナちゃんのことで頭がいっぱいだったのだろう。


「お、その子もかわいい?」

「当然! 同姓から見ても、守ってあげたくなる自慢のお友達よ!」


「そうかい……じゃあ、そのお友達と、仲良く2人で食べてねぇ……」

「でもいいんですか? こんな立派なクレープが、タダだなんて……」


 クレープの材料の中で高価なのは卵と砂糖。

 スーパーで12個200円、1袋150円くらいで買える現代と違って、カナン王国ではそれなりの値段になる。


 そんな背景もあって、効率的な養鶏を実現すれば大きなビジネスになるだろうけれど、鶏からしたらそれはディストピアの到来だ。

 あまり気が進まない。


「いいのいいの。お金を払ってくれるのは次からでいいから……また、おいでね……?」

「必ずくるわ、次は友達と一緒に! ホントにありがとう!」


 ターニャさんは店の人に感謝して、幸せいっぱいで屋敷へと帰っていった。

遅くなりました。

ストックかつかつです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ