表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
150/271

・殿下の第二ステップ バッテリーを導入しよう - 古巣 -

 城下に出ると、俺たちはそれぞれ寄り道をすることになった。

 乗り物は人力車が1台。母上の馬車が1台だ。


「じゃ、また後でね!」

「レスター様にご迷惑をかけてはダメよ? ただでさえ、ロドリック様がお世話になっているんだから……」

「コンラッド殿、このトーマ、心より心中お察しいたします。気を強くお持ちを!」


 母上とリアンヌとトーマはおみやげのお菓子を買いに行った。

 向こうで待ってるカナちゃんと美味しいケーキが食べたいって、トーマも一緒になってそうはしゃいでいたのを俺は知っている。


「お、おおおっ、己もっっ、己もあっちがいいのですが、殿下ぁっっ?!!」

「それはダメ」


「なっ、なぜぇぇーーーっっ?!!」

「だって、誰かを乗せて走らないと楽しくないじゃないか」


 コンラッドさんは人力車に残ってもらった。


「下僕の自分が引きますッッ!!」

「下僕にした覚えはないよ……。僕たちは対等な共同研究者、遠慮しないでくつろいでね」


「も、もももももっ、元無職の本のクズにも立場というものが、あ、ある……っ、ああああーーーっっ?!!」


 ベアリングシステムがもたらす快適な人力車で、青い顔をしっぱなしのコンラッドさんを乗せて、俺は冒険者ギルド・ルキの天秤に向かった。

 少しだけスリリングなスピードとコーナーリングでね。


「んーー、次は上下の衝撃を吸収するサスペンションが欲しいね」

「ひ、ひふっ、ひっひっふっ、ひっひっふっ、ひっひっ、ふぅぅーっっ?!!」


 そういったわけで俺がルキの天秤の本部を訪ねたのだけど、ちょうどレスター様は不在だった。


 だけど行き先はわかっている。

 レスター様はちょうど今、サザンクロスギルドの本部を訪れているそうだ。


 俺にとってはそこは因縁の場だ。

 ちょっと気が乗らなかったけど、幸い俺にはおもしろいオモチャ――じゃなくて、同行者がいたので今度は彼に人力車を引いてもらった。


「ああっ、下僕でよかった……下僕でいたい……ずっと、ずっと、殿下の下僕でいたいのです、己はっ!!」

「そんなに僕に引かれるのが嫌……? みんな嫌がって、僕としてはとても心外なんだけどな……」


「嫌ですっ!! そんなかわいいお目目で見られてもっ、子供をっ、しかも王子様をっ、馬のごとき扱いをするクズの中のクズと思われるのは……っ! さすがの己もプレイ外です……っっ!」


 こんなに明るい人が話相手になってくれるから、サザンクロスギルドまで退屈しなかった。

 俺はコンラッドさんと小説の話をしながら、王都を自由気ままに闊歩した。



 ・



 元職場、サザンクロスギルド本部までやってくるとさすがに緊張した。

 ギルド職員アリクだった頃の人格が蘇り、嫌な思い出が頭の中でとぐろを巻いた。


 サーシャとギムレットは今頃どうしているのだろう。

 ギムレットの息子についてはもう名前も思い出せない。


 あの事件はもう10年以上前のことだ。

 ギルド職員アリクをハメた実行犯があのギムレットの息子でも、裏で糸を引いていたのはサーシャだった。


 彼女は今もここで働いているのだろうか。


「己……だんだん……気持ちよくなってきまひた……。これが、トーマ殿が普段感じている、喜び……いいっ!」


 変態と変態は惹かれ合うのだろうか。

 そうふと思い、自然体でトーマに失礼な印象を持っている自分に気付く。


 コンラッドさんにより人力車はギルドの軒先に停められ、俺は車の席から飛び降りた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ