Ural region Russia / Dec 8th 19:18(Local Time)-6
(どうやら買いかぶりすぎだったか)
しかし装備があって困ることはない。その反対は、嫌というほど経験してきた。警備が手薄なら、それだけ楽になるというものだ。エイジはそう思いながら、それでも慎重に足を運ぶ。階段や廊下の角で目を凝らし、警戒しながら最上階へつながる階段までたどり着く。ここまでセンサーの一つもないとは。侵入者のことなどまるで考えていないのか。今日のパーティも、ボディチェックを厳しくして、ホールの周りに部下を厚く配置すれば大丈夫だと思っているのだろう。組織としてはまだまだ甘いようだ。
だが最上階はどうだろうか。さすがになんらかの警戒がありはしないか──そう考えていると上階に気配があった。エイジはすばやく角に身を隠す。パーティホールのテラス席にいた男が降りてくる。あのアンダーボス。この先にいくつかのセンサーがあったとしても、あの男ならそれらをパスできるIDタグを持っている可能性がある。
しかし、エイジは動かない。目的は組織の情報を得ることだ。あの男の顔は押さえた。下手に失点を与えて、ナンバーツーの人間が入れ替わってしまえば、さっそく情報を古いものにしてしまう。
壁に身を潜めるエイジの側を、アンダーボスは鼻歌を歌いながら降りていく。それを見届け、エイジは再度周囲の気配を探る。大丈夫だ。エイジは最後の階段へと足をかける。