幸せに満ちる島-12
ポーターが荷物を持とうとするのを断り、二人は自動ドアをくぐった。ドッジがカウンターにむかい、エイジはロビーラウンジのソファに腰をおろす。照明は、やや暗く感じる。ホールのスタッフにコーヒーを二つ頼む。
チェックインを済ませ、ドッジがもどってくる。運ばれてきたコーヒーに口を付けながら、二人は人間の動きを眺める。ロビーの客、従業員、出入りする人物、不審な動きをする者はない。見える範囲で建物の構造も確認すると、二人はコーヒーを飲み干した。
エレベーターで客室へあがる。三階の隣あったシングルルーム。廊下に人影がないことを確かめると、二人はまずエイジの部屋へとはいった。荷物を下ろし、ドッジだけがすぐに部屋を出ていく。エイジは荷物から小型の電子機器をとりだしてテーブルの上に置くと、さらに小さな機器を壁にペタペタと貼っていく。タバコに火をつけ、ゆっくりとくゆらせながら部屋を回る。バスルームも、簡易なクローゼットの四隅にも煙を回す。やがてドッジが戻ってきた。
「部屋は快適そうだ」
エイジの言葉に、ドッジはテーブルの機械を確認する。
「なにかを発信している様子はないな。カメラやホールはどうだ?」
「それも大丈夫そうだ。外は?」
「廊下も階段も問題ない。階段は内も外も使える」
「じゃあ次はお前の部屋だな。俺は建物を見てくる」
エイジは廊下を歩いていき、ドッジは荷物をもって自分の部屋へ入った。