しまりの悪いおじさんのお話。
ぼくと一緒に住んでいるおじさんはしまりが悪い!
いつも部屋の隅っこでゴロンと横になり競馬新聞を眺ながら
口を開けて、ポカーンと新聞を見ている。
ズボンも丈が短く、お尻がいつも見えている。
無造作に置かれたおじさんの財布から3千円が見えていた。
ぼくから見るおじさんは“しまりの悪いおじさんだ!”
こんなおじさんのどこをどう好きになったのか?
ぼくのママは、おじさんと一緒に住むと言い出した。
『真心、今日から一緒に私達と生活する事になった孝夫おじさんよ。』
『・・・おじさん?』
『いずれは、ママと結婚して真心の“パパ”になるかもそれない人なの!』
『ぼくのパパに、このおじさんがなるの?』
『よろしくな、真心!』
『・・・ううん。』
・・・ぼくは、このおじさんの事が大嫌いだ!
だらしないし、ロクに仕事もしないで毎日競馬新聞を見てるだけの
こんなおじさんにママを幸せになんかできないよ!
ぼくに愛想笑いもしないし、おじさんからぼくに話しかけてもこない。
本当にママは、このおじさんの事が好きなの?
好きじゃないなら、今すぐにでもこの家から追い出してやりたい!
ぼくがママをこれから守っていくから。
だから、こんなだらしないおじさんと結婚なんかしないでほしい!
でも? ぼくの願いは虚しく月日が過ぎて行く。
ママとこのおじさんが一緒に居る時は物凄く仲がいい!
二人で仲良く料理を作ったり、ぼくの知らないママの顔をする。
ぼくの前だとママは、笑っているけど何だか別の事を考えている
というか? ぼくの前だと無理して笑っているように見えていた。
ママの笑顔も、このおじさんの前だと? 自然に笑っているママの
笑顔をぼくは見る事ができたんだ。
“あれが、本当のママの笑顔なんだ!”
ぼくには、ママにあんなステキな笑顔をさせてあげられない。
でもこのおじさんの前なら、それができる。
凄くショックだけど、それは認めないといけないな。
・・・ぼくはそれから、“本当のパパに会いに行った。”
ぼくのパパとママは、ぼくが10歳の時に離婚をしたから。
そういえば? ぼくの目の前でよくふたりは喧嘩をしていた。
ぼくがふたりに、【喧嘩はしないで!】というと喧嘩をやめて
くれていたけど、あの頃から二人は合わなくなったのかな。
いつの間にか、パパはこの家を出て行った。
そして後から、パパとママが離婚した事をぼくに話してくれた。
別にパパとママは、二度と会えないほど喧嘩別れした訳じゃなく
ちゃんと話し合いの結果別れたので、ぼくはたまにパパと会って
いいよとママに言われる。
本当は、パパとママに別れてほしくなかったけど...。
今は仕方がない事なんだと、ぼくも理解した。
しまりの悪いおじさんとも次第にぼくは仲良くなっていった。
おじさんがぼくと話す時、緊張して何を話していいのか分から
なかったと言った。
今思えばそうかもしれない。
元々、子供と接する機会もなく大人になって急にぼくみたいな
子供が自分の子供になると言われてもどう接していいのか分か
らなくてもしかたないよね。
ちゃんとこのおじさんと話せば、凄くいい人だった。
ただ相変わらず、“しまりの悪いおじさん”には違いないけど。
これからも、ぼくとママと仲良く3人で暮らしていこうね!
・・・いつか?
ぼくもしまりの悪いおじさんの事を、【パパ】と呼ぶからさ。
最後までお読みいただきありがとうございます。




