07 転機
以前のようなひとり稽古ではなく、ノルシェ殿との打ち合い稽古で修練を重ねる毎日。
転機は突然訪れた。
ある日、部屋でくつろいでいるといきなりノルシェ殿とササエさんに問い詰められた。
「モノカ様はこれからどうしたいのですか」 真剣なまなざしのノルシェ殿。
「勇者としての自分の道は閉ざされたと考えている。今は下職への道を探している途中だ」
「どうして声を掛けてくれないのですか」 ノルシェ殿はとても頻繁に目を潤ませる。
そして自分はその目に弱い。
「ノルシェ殿の人生に深く関わること、簡単には決められない」
「私がモノカ様の騎士になったのは、もう全てを捧げる覚悟があったからです」
「あの時『乙女の守り樹』を受け取ってくれたモノカ様なら、覚悟、ありますよね」
腹を決めるか。
「遅くなって済まない。 ついて来てくれるか」
「どこまでも」
それまで何も言わずにこちらを見つめていたササエさんが、突然大粒の涙をこぼした。
「ありがとうございます。 これがあるから頑張れるんです」
しばし待って、落ち着いてきたササエさんから話を聞いた。
ササエさんは城内で活動する、召喚者の保護を目的とする勢力の一員だそうだ。
派閥やら何やらの問題があって、活動は極秘とのこと。
この国の都合で呼ばれた召喚者がきちんとした余生を過ごせるように導くのが活動目的らしい。
私のような脱落者に下職の道を付けるよう下準備するのがササエさんの仕事のようだ。
「モノカ様がノルシェさんを待たせっぱなしで、見ていてやきもきさせられました」
「行き先はもちろんあそこですよね」 ノルシェ殿の目が輝いている。
まずは、あの三人のところへ。