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04 教官殿


 固有スキル『信心』は、今までの召喚者には無い初めてのものだそうだ。


 正直、ホッとした。


 もし戦闘に直接役立つ強力なものだったら前戦送り確約だったろう。



 神官と呼ばれる召喚儀式の責任者たちから『信心』について何か気付いたら何でも話すようにと言われたが、もちろん言うものか。


 と言うか、何の役に立つものなのか皆目検討もつかない。


 力を抑えているとはいえ日々の訓練で何かが起こるわけでも無く、日常生活で何があるでも無い。


 もしかしたら命の危機が訪れた際に発現するのかもしれないが、それこそ今は確かめようが無い。




 黙々と日々の訓練を繰り返すのみの自分の姿は、周囲の人たちを落胆させていた。


 自前の槍持参の期待の召喚者さまが目立つ力も発揮せぬままただ訓練用の槍を振っている、これを続けているうちにいずれここを抜け出す方法を思いつくだろうという目論見は、とある騒動ではずれた。


 


 訓練教官の騎士から手合わせを誘われた。



 家柄を誇るだけのただの無能と思っていたが、最近は訓練生女子に性的な嫌がらせをする外道とまでに評価が堕ちていたその教官殿。



 立ち合いの最中にそういういやらしい目付きで視線を動かす阿呆がいるかと呆れていると、取り巻きの騎士連中が騒ぎだした。


 どうやら私は評判倒れのくせして生意気な勇者候補の面汚しらしい。


 望んで下げてきた自分の評価だが、いい加減鬱陶しいのでここらで少し黙らせた方が良いかも。


 あまり目立たぬようこの場を収めるには、



 教官殿御自慢の『高速回避』スキルで槍をかわされ体勢を崩した私が突き出した槍が偶然教官殿の剣に当たってお互い武器を落としてしまう、と。



 筋書きはこれで良し、後は突くのみと気を入れて前進した。


 今の自分の技量なら『高速回避』とやらも余裕で破れるだろうなどと考えてしまい、ほんの少しだけ立ち合いから心を離してしまった次の瞬間、



 教官殿が吹っ飛んだ。



 のたうち回っていた教官殿が大勢の取り巻きたちによって訓練場から運ばれていく様を見てても、自分は立ち尽くすのみであった。


 これはまずい。


 可能な限り目立たぬ様にと過ごしてきた苦労が台無しだ。 周囲の怯える様なまなざしが全てを物語っている。 もう今までの様にはいくまい。


 あの取り巻き連中全てが敵にまわった事も厄介だ。 もちろん教官殿も失墜した権威を取り戻そうと躍起になってくるだろう。



 一刻も早く、脱出の算段を練らねばならない。


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