31 事後紹介
ある意味、本日一番インパクトのあった出来事な昼食も終わり、いよいよお話し合い。
何を置いても、まずは一番気になっていた事から。
「この町に着いてから、自分の考え方にバイアスが掛かっているみたいなのですが何かご存知無いですか」
「俺もそうでしたが、そういうものらしいので諦めてください」 と佐州さん。
そういうものならしょうがない、よね。
それから、自己紹介。
佐州 亜乱さん。
いろいろあってこの屋敷の主人に。 今はギルドの依頼をこなしながらパーティーリーダーとこの屋敷の主人に相応しい自分になれるよう努力中とのこと。 正直頼りない見た目なのだが、横にいるふたりの信頼のまなざしは伊達ではあるまい。
固有スキルは『盗賊』
アイテム・スキル・魔法などなどを、『鑑定』出来たら何でもひとつだけ盗めるそうだ。
「さっきの戦いで爆発寸前の爆弾っぽいのを『収納』に入れちゃったんだけど、早くどうにかしたいです」
うん、頑張れご主人。
梨想 マユリさん。
いろいろあって佐州さんの妻に。 少々頼りなげな夫を支えつつでっかい屋敷の家計をやりくりする毎日。 ちなみにくっ付いたのはここに来てからでお城にいた頃は清い関係だったそうだ。 後学のために清くない関係のことを詳しくっ。
固有スキルは『魔法使い』
両手の指の数だけ好きな魔法をコピー出来て使い放題だとか。
「私が寝ちゃうとさっきの人の『拘束』、解けちゃわないかな」
頑張れ、奥さま。
リリシア・バストネートさん。
リリシアさん曰く、運命に導かれるままに佐州さんの妻に。 一夫多妻についてはこの世界のことだから私がとやかく言うことでは無いと思う。 隣のノルシェが目をキラキラさせて聞いていることから、この世界的にも良縁なのだろう。 ぜひ後ほど手合わせを、と希望したらとても嬉しそうだった。
凛々しく、強く、美しく、
ノルシェが夢中になるのも納得の騎士さま。
「私の後始末が不味かったようで皆に迷惑をかけた。すまない」
どうやらケープ野郎と因縁があったようだ。
ニエルさん。
仕事の内容を見てもらえれば充分ですので私のことなんかどうでも良いですよぅ、だそうだ。 いろいろあったが、この人(?)と知り合えたことが旅の一番の収穫な気がする。
家事能力の高さはご存知の通り、
このカオスな顔ぶれの中でも一番の謎。
「お夕飯のリクエストはお早めに、ですよぅ」
私もリクエストして良いのだろうか。
続いて私も。
秘崎萌乃果です。
自己紹介中、例の教官殿の件を聞いていた佐州さんが突然椅子から転げ落ちて土下座した。 どうやらあれは佐州さんのスキルのせいらしい。 平謝りの彼に気にしてませんからと笑顔で礼を述べた。 実際あの事件のおかげでこうしてここにいられるのだ。 私の固有スキルも、人に良い影響を与えるものであって欲しい。
固有スキルは『信心』
能力不明と告げた時の周囲の視線が今までで一番、生温かった、気がする。
ノルシェ・ラルシエ。
家名を聞いた時とバストネート家との繋がりを聞いた時、リリシアさんの表情にわずかな変化があった。 ノルシェによって語られるたくさんの武勇伝に徐々に赤らんでいくリリシアさんの顔色を見るに私の見間違いだったのかも。
リリシアさんに向かって舞い上がっていた気持ちが、激戦によって激情から冷静を得て、お姫様抱っこでとどめを刺されて、今に至る。
感情のジェットコースターにも程があるのだが、それがこの娘の良いところ。
しばらくご厄介になってもよろしいですかと佐州さんに聞くと、ぜひと言う快いお返事。
とても喜んでいるノルシェだが、リリシアさんと温泉出来るからでは無いよね。
本当、頼むよ相棒。
ちなみに、ケープ野郎は佐州さんと梨想さんと私とでえっちらおっちら運んで玄関脇に転がされております。




