28 決着
玄関の扉越しに聞こえた叫び声、気付いたら表に飛び出していた。
見えた人数は四人。
足元から崩れ落ちた男の人は佐州さん、
佐州さんを支えようと抱き留めているのは梨想さん、
剣を抜き駈けていく女騎士は、あれがリリシアさんか、
その向かう先にはケープ野郎、ケープが無いのは構わんが何で右腕があるんだ。
必要以上に気合いが充実していた私の身体が動いた。
ちらっと佐州さんを見ると足腰に力が入らない様子、毒とか生き腐れじゃないようなのでひとまず安心。
梨想さんが佐州さんを支えながら左手の小指で彼の身体を突いてるのはなんなんだろう。
向かうはリリシアさんとケープ野郎の立ち合い。
明らかに私と戦った時とは違うケープ野郎の激しい剣筋を、踊るような剣さばきでいなすリリシアさん。
見惚れそうになった私を追い越したのは、雄叫びをあげながら駈けるノルシェ。
ノルシェに気付いたケープ野郎が、右腕を振ったのは針だ。
短剣で全部叩き落としたノルシェ、そのままの勢いでケープ野郎に突進。
って、ノルシェ吹っ飛ばされたっ。
何だよあれ、新しい義手の新機能かよ。
飛んできたノルシェを抱きとめて「落ち着け」 と声掛け。
悔しそうなノルシェだけど、走りだそうとしてこけたのは足をやっちゃったみたい。
私たちに目線を向けたリリシアさんのスキを見て、ケープ野郎が右腕を振った。
チンッという音と、青白い魔法の光がリリシアさんの鎧の胸元で。
凛々しい表情を変えずに間合いを詰めるリリシアさんを見て、にやりと笑ったケープ野郎。
なんかヤバいと思った瞬間、ケープ野郎の右腕が黒く光りだした。
魔法が得意では無い私にでも分かるほどの異常な魔力量が義手に集まっていく。
「終わりだ」 と叫んだケープ野郎が義手を高く掲げると、
義手が消えました。
へっ? ていう顔をしたまま固まったケープ野郎の脇腹にリリシアさんの会心の一撃が叩き込まれて見事に吹っ飛んでいった。
気が付くと私の隣にいるのは佐州さん、とすんと腰を下ろした。
佐州さんの隣には梨想さん、左手薬指をかっこよく突き出していたけど佐州さんが座り込んだら慌てて介抱しだした。
払った剣を顔の前に、祈るように構えてから納刀、美しい仕草でたたずんでいるリリシアさん。
こりゃあノルシェには目の毒だと思っていたら、本人は痛む足もお構い無しでリリシアさんに飛び掛かって、抱きついた。
私はこういうカオスな状況、苦手なんですけど。




