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25 顔色
この部屋に渦巻いている恐ろしいほどの殺気。
もしニエルさんがこれに気付いていて無視しているのであれば、自分が読み違えるほどの底知れない使い手だろう。
気付いていないのであれば、見た目通りのお気楽メイドだ。
ニエルさんは数ヶ月前の出来事、
リリシアさんたちのプロポーズ事件のことを、
うっとりとしたまなざしで、
それはそれは楽しそうに語ってくれた。
ちらりとノルシェを見る。
なんかすごい青いんですけど、顔色。
「いけない、ご主人さまたちに知らせないとっ」
突然立ち上がったニエルさんが、どこかへぱたぱた走っていった。
「ノルシェ、大丈夫?」
かつて聞いたことが無い声色のノルシェの声。
「リリシア様、ご本人から、直接、聞くまでは、死ねません」
死ぬなノルシェ。




