02 『信心』
自分に何が起きたのかは分からなかったが、身を守ろうと自然に構えを取ったことは覚えている。
周りには白っぽくてダボっとした衣装のおじさんが数人、こちらを見て呆気に取られている。
稽古以外で刃のついた槍を人に向けたことは無かったが、一応女である自覚はあったので全力でこの身を守ることは間違いでは無い、と構えに集中した。
部屋の外から西洋風の鎧に身を固めた初老の男が来て、私に頭を下げた。
事情を説明されて、別の部屋へと連れ出される。
ここは自分のいた世界では無いこと、
自分を含む数名がこちらに呼ばれたこと、
戦士としてこの国のために戦わねばならなくなったこと、
最後に、元の世界に戻る方法は無いことを告げられた。
武装した状態でこちらに呼ばれる猛者は滅多にいないので期待していると初老の騎士は笑っていたが、もちろん自分は笑うどころでは無かった。
了承も戻る手段も無しにこちらに呼んでおいて自分たちの国のために戦って死んでこいと。
こいつらは阿呆だ。
まともに相手をする価値も無い連中だったが、戻れないなら嫌でもこちらで暮らしていかねばならない。
別な部屋へと連れていかれる。
こちらの世界に呼ばれた者は、戦いに役立つ不思議な力をひとつだけ得ているそうだ。
心なしか周囲の目は期待に満ちているように見える。
固有スキルと呼ばれるその力。
私のそれは『信心』とあった。
周りにいた白装束たちがひそひそと話し合っている。
『信心』とはどのようなものか聞いてみたが、詳しいことは後日と言われた。
可愛らしい衣装を着た女性から自室へと案内される。