11 針
現れたのはケープのようなものを羽織った男、体の線は見えづらいけど脚さばきで分かる。
着ている物は小汚いが、正しく剣を学んだ者の脚さばき。
持っている獲物が見えないけれど短槍は不味かったかななどと考えていたら、身体が勝手に短槍を振っていた。
発射音も無く飛んできた何かを払い落としたせいで出来た隙に向かって突き出されてくる剣。
強いけど弱いなっていう変な感覚。
剣だけならかわせるけど飛び道具混じりは面倒だなとか考えていたら、近づいてくる足音複数。
ケープの男は走って逃げた。
飛び道具、どんなのか見たかったな。
ノルシェが連れて来た衛兵さんたちに事情を説明。
最近裏通りに出没している単独犯の殺人鬼、通称ケープ男。
まんまだった。
目撃者の話では、針のような物を飛ばしてくるとか。
痺れたり、毒を受けたり、生き腐れになったり。
なかなか多才ですな。
事情聴取があるとのことで、衛兵さんたちと一緒に門の側の詰め所へ。
詰め所の待合室でノルシェに忠告。
「相対した状態なら、ノルシェも私も針はかわせる」
問題はそれ以外の状態から飛んでくる針。
「先に片付けてからの方が、旅を楽しめそう」 と、真面目顔のノルシェ。
可愛らしく議論している私たちに衛兵さんが一言。
「アイツは嬢ちゃんたちみたいな娘が大好物だから気を付けな」
ご忠告、感謝。




