第47話〜夢限鳥居〜
仕事先の異動にともない、引っ越し先を探したり内見したり、でも仕事をしたりと書く暇が取れなかったので更新がかなり遅れました。恐らく、ひと段落するまで2日に1話とか比較的安定した投稿は難しいと思います。
気長に思い出したら読んでください。
東京魔王47
雲ひとつない晴天は、超大型ダンジョン初挑戦をお天道様が祝ってくれているよう……って言いたかったんだけどなぁ。
「マ〜ジかぁ」
ザーーーーッ。
まさかのどしゃ降り。
鈍色の空から降る雨が葉に当たり、ボツボツボツと弾ける音がそこかしこから聞こえてくる。
雨の中でも映える真紅の鳥居は陽の光を浴びている時の神々しさと打って変わり、どこか入ると二度と帰って来れないと思わせる不気味さがあった。
母浄さん、器部、鷹虎は二度目の超大型ダンジョン。俺とセンセーははじめて。
そして、真正面から正当に攻略しようとしているのは全員がはじめて、という記念すべき日に……雨かぁ。
「な〜んか、幸先悪いっすねぇ。今日辞めときます?」
「ダンジョンの中に入っちゃえば変わらないでしょ。気にしすぎ」
「ふふ、良いじゃないですか。逆に、嫌なことが今起きたおかげでダンジョンの中では良いことが起きるかもしれないですよ?」
「インドア派は雨の日は休業って決まってるんだけどな。ねぇ、センセー」
「ッ、そ、そうです、ねッはい」
反応は様々だが、大きなことをやるかって日にこういうことが起きると少しテンション落ちるよなぁ。
「ま、嘆いても仕方がないか。よし、改めてダンジョンに入ってからの最終確認をしておこうか」
「先頭は私が」
俺が率先して最終確認を行うと、即座に鷹虎が返事を返してきた。
さも当然といった顔で、鷹虎は先頭の位置を名乗り出る。
それについて、パーティの誰も否と言わなかった。そりゃあ、俺達の中で攻撃力、守備力ともにトップの鷹虎が先頭に立つというのは半ば必然と言えることだからだ。
まぁ、純粋な戦闘タイプが鷹虎しかいないってのが大きいんだけどな。
母浄さんはステータスUPバフによる支援。器部は武器や防具の製作による戦闘支援。二人の戦闘能力ももちろん低くはないが、前衛で鷹虎と並んで戦うには若干の力不足。俺は言わずもがな。
むしろ、鷹虎じゃないとパーティの先頭は務められない。
「サポートのモンスターは2体で本当に良いんだな?」
「“最初”の階層はそれでイケると思うわ。北海道、白神山地、沖縄、3つの超大型ダンジョンの情報を照らし合わせても、最序盤のモンスターは流石に手強くはない。この夢限鳥居も例に漏れないはずだから、節約も兼ねて最初のサポートは2体で充分」
「じゃあ、ヨシコ達を鷹虎のサポートに。予定通り、パワーとタフネスに定評のあるボタンちゃんと猪助は俺達支援組の守りに回そう。あとは適材適所、その場その場で出すモンスターを変えていくってことで……大丈夫かな?」
返事をするように鷹虎は拳と拳をかち合わせ、手に嵌めた籠手の音を鳴らす。
母浄さんは身に纏ったローブを一度見下ろし「行ける」と言わんばかりに力強い笑みを浮かべた。
器部は得意気に「へへへ〜」と自分の剣で肩をトントンと叩き、サムズアップ。
センセーは遠慮がちに俺の服の裾を少しだけつまんで、ちょいちょいっと引っ張る。
「……うん! じゃあ、行きますか──夢限鳥居、超大型ダンジョンへ」
──◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ ──
真紅の鳥居を潜り、体感では数十分が経過しただろうか。
前も後ろも、終わりが見えない鳥居の列が続いている。
随分と歩き、すでに千本以上の鳥居をくぐったが……その間、モンスターの姿は全くなかった。影すら見えていない。
夢限鳥居というダンジョン名からして、この鳥居をくぐった時点でダンジョンという認識で良いはずだから、そろそろモンスターの一体でも見えて良い頃合いだと思うんだが? 頃合いというか、居ても当然だと思うのだが?
「なぁ、鷹虎。鳥居の出口はありそうか?」
先頭を歩く鷹虎に話しかけると、
「全然。鳥居が延々と続いてる」
という返事が。ウンザリという感情が言葉から滲み出ている。
流石に、超大型ダンジョンだからと1ヶ月と少しを使って準備をしてきたのに数十分間なんの戦闘もなし、ひたすら鳥居を歩き続けているだけだからな。
戦闘狂の気質がある鷹虎からすれば、見飽きた鳥居が連なる景色続きでウンザリもしてくるだろう。
「しっかし、本当に何も起きないし、何もいないな」
「本当にダンジョンの中なんすかね、ここ」
「分からん。北海道の超大型はどんな感じだったんだ?」
「ん〜、……山、でしたね。めっちゃデカい山っす。その山に足を踏み入れたら、裏ルートを使えって通知来たんで。でも、北海道そのものがダンジョンみたいなもんだったんで、ぶっちゃけダンジョンとダンジョンじゃない場所の明確な境目とかは良く分かんなかったすね」
「へぇ〜……じゃあ、この鳥居もダンジョンじゃねぇ可能性もあるってか? そんな馬鹿な。明らかに空間が狂ってるだろ。外から見た時、こんなに長くなかったろ。この鳥居」
憂さ晴らしがてら鳥居をゴンゴンと叩き、そう呟いた。
これじゃあ夢限じゃなくて“無限”だ。この先の鳥居も半永久的に続いてるよって言われても不思議じゃねぇ。
……今の俺達と似たシチュエーションの映画、前に見たことがあるな。
近所の森で遊んでいた子供達が、自分達の家に帰ろうと来た道を辿るが……どんなに歩いても家にたどり着けず、同じ道をグルグルと歩き続け、試練を乗り越えなければ帰れない、そんな展開。
なんというか、“それ”と同じ臭いがする。
ダンジョンをクリアしない限り、帰す気はないって感じだろうか。
クリアって言われても、まずスタートすらさせてもらえていない件について。
首に手を置き、うんうんと唸りながら首をさする。どうしたものか、と。
この鳥居がダンジョンなのは、当たっていると思う。しかし、“中”に入れていない。
例えるなら、今の俺達は家の庭をウロチョロしているだけで、本命である家の中に入れていないんだ。
はたまた、この長い長い鳥居を歩き続けるということがこのダンジョンの“攻撃”なのか。
確かに、ゴールの見えない道を無限に歩き続けるというのもかなり辛い。物理的にも、精神的にも苦痛を伴う。だが、超大型ダンジョンと言っておきながらそんな単純な攻撃だけをしてくるだろうか。
何か、見落としているところが──
「──……ゆ、夢、ですか、ね…?」
「……へ?」
隣を歩いていたセンセーの呟きに、思わず変な声で返事をしてしまう。
なにをバカな、という意味じゃない。ああ、確かにという納得から出てきた返事だった。
ダンジョンなのだからモンスターが当たり前にいて、ソイツ等を倒して奥へ奥へと進んでいく。ということしか頭になかったから、そういう“ギミック”の想像までしていなかった。
「夢……夢、か。もしかして……夢の中にあるのかな? 夢限鳥居ダンジョンの“本命”は」




