第45話〜京都〜
旧京都、伏見。
かの有名な千本鳥居がある、伏見稲荷大社も世界の再生現象に巻き込まれ、その姿を大きく変容……させてはいなかった。
驚くべきことに、大社のまわりを囲む緑の木々は森林と呼べるまでに成長してはいるが、世界に誇る古き良き日本の建造物としての姿形は損なわれていなかった。
それもそのはず、伏見稲荷大社本殿は超大型ダンジョンそのものではない。その前座に過ぎない存在のため、その形が大きく変わることがなかった。
超大型ダンジョン、京都伏見“夢限鳥居”。
その本質は、千本鳥居にあった。
伏見稲荷大社本殿も夢限鳥居ダンジョンの一部であり、ややこしいことにこの本殿の中にあるダンジョンをクリアした後でないと夢限鳥居は超大型ダンジョンの正しい入口へ誘ってくれない。
なんとも面倒臭いギミックのダンジョンだった。
その前座と言うべき本殿のダンジョンは……すでに“クリアしている”。
連なって半永久的に続く赤いトンネル──夢限鳥居を眺めながら、伏見稲荷大社での激動を思い出し俺はため息をひとつ溢した。
夢限鳥居の付近に生える巨木の一本一本には紙垂の付いた太い注連縄が絡まり、葉は彩鮮やかな赤、黄色、緑の混合色。
秋の紅葉に夏の緑が混ざる美しい景色の中に、無造作に絡まる注連縄が不気味さを付け足すが、結局のところ夢限鳥居が中心にあることで「めっちゃ幻想的じゃん」の一言に落ち着く。
流石は元京都。例え世界が元に戻る為に自然の形態が変わっても、美しさは変わらないとは。
「あぁ〜……綺麗とは言っても、こう何度も見てると飽きるな」
上板橋ダンジョンの最奥地にて放たれた母浄さんの「京都へ行こう」発言から早1ヶ月と15日。
俺……というか、ダンジョンシリーズを持った俺達一行は、同じダンジョンシリーズである【ダンジョンヒーラー】を所持した人間を“救助”するため、ここ京都へはるばるやって来た。
最初は、あんなことを言った後なのに旅行でもしようとしてんのかこの女、と軽い恐怖心を抱いたが、まぁ良く理由を聞けばそんな訳はなかった。
元々、俺を探す理由として、モンスター育成の重要性の高さを伝えたい、戦力増強と複数の理由があったらしいが、その理由の中にはこの京都に居るダンジョンシリーズ所持者を助けるのも含まれていたとか。
なんでも、超大型ダンジョンの最奥地に閉じ込められ出られなくなった。理由は話せない。ただ、【モンスターマスター】を連れてきてもらえればダンジョンから出られる……らしい。
なんともまぁ。これが突然知らないメルアドで送られてきたらブロックして無視してるところだ。
母浄さんや器部、鷹虎宛にメッセージを送れるからちゃんとしたダンジョンシリーズ保持者なんだろうけど。
理由は話せないってのが引っかかる。間違いなく面倒事だとは思う……が、しかし助けを求めているのは【ダンジョンヒーラー】。
“回復役”だぞ、ヒーラー。しかもダンジョンシリーズの。
弱いわけがねぇだろ、そんなん。是非とも一緒に戦ってもらいたい役職だ。
助けることに異論はない。異論はない、が。俺はこの京都を目指す間に、母浄さんへひとつの要求をした。
超大型ダンジョン近辺に着いたら、ダンジョンに挑戦する前にモンスターの大量捕獲、並びに育成を施させてほしい。
出来るならその手伝いもしてくれってね。
今までは少数精鋭でやってきたが、時間経過で天使が来るって言われちまったからな。
モンスター“軍団”とは言えないけど、部隊と言えるほどには手持ちのモンスターを増やした。
どれくらい増やしたかというと、
B級モンスター×4
C級モンスター×21
D級モンスター×47
E級モンスター×32
の合計84体。スカルグレイスを捕獲した時が16体だったと思えば、5倍くらいには増えたかな。
ふふふ、驚いただろう。恐れ慄け、なんとB級モンスターを手に入れたのだ!
……まぁ、B級にカウントされているこの4体の進化元は腐獣キャリオン・ハウンド。
特殊能力と進化条件的に進化はさせやすい部類であり、気づいたらB級にまで育っていた。
モンスターとしての強さを見るとD級そこそこと言った感じではあるが……コイツ等は俺の切り札のひとつだ。特殊能力とか、パワーとかでは測れない別の強さがコイツ等にはある。
コイツ等を使う時が楽しみで仕方ないよ、俺は。
それ以外に変わったことは、とうとう一太郎達がC級に階級が上がったことだろう。
もはや小さなゴブリンでも、犬でも、カラスでもなくなった。
現状、確認出来ているモンスターの最高階級。C級モンスターへと辿り着いたんだ。
頼りになる強モンスターとなった最初期メンバーである一太郎やヨシコ、ボタンちゃん達には数多くなったモンスター部隊の隊長としてモンスターを率いてもらっている。
今も、複数体を手持ちに残すだけでほとんどのモンスターは自分達のレベ上げの為に周辺のモンスターやダンジョンのモンスターを狩りに行かせている。
いや、レベ上げを兼ねた魔獣結晶、ドロップアイテム集めか。総数80を超えるモンスター部隊が一気に集めてくれるおかげで、魔獣結晶の蓄えは腐るほど出来た。
今、夢限鳥居を前にしているのはそんなモンスター部隊の帰りを待っているからである。
「……」
「ひ、ひぃッッ……」
みんなの帰還を待つ俺の両隣には、寡黙な女性が2人。
1人は“前髪をピンで止めて顔を見せるようになった”萌美優理センセー。どういう心境の変化か、顔を見せてくれるようになったんだよ。
慣れていないのか、ずっと赤面しているけどな。
そんなセンセーを興味深げに見つめるのが、小縁の眼鏡がお洒落な鷹虎竜子。
この1ヶ月ほどで多少仲良くなれたが、あまり会話は多くない。
なんでもクールで寡黙な人に憧れているらしく、そういう風に装っているらしいが……側から見れば重々しい威圧感を放つ目つきの鋭い人って感じ。
センセーは、もちろん鷹虎が苦手だ。
だが鷹虎はセンセーと仲良くなりたいらしい。
そんな関係の2人を外野で眺めるのが面白いんだな、これが。
センセーから助けを求めるような視線を感じるが、あえて無視。
せっかく友達が出来る機会を、俺のせいでなぁなぁにするのは勿体ないぞセンセー。
「あぁ忙しい忙しい」とわざとらしく呟き、俺はステータスタブレットを取り出してモンスター達に異変がないかを調べていく。
この、時間が経つごとに強くなるモンスター達を眺めるのが堪らなく楽しんだよなぁ。
お、一太郎のやつレベル上がってるじゃないか。
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・種族名/名前/鬼人種オルガ/一太郎
・性別/♂
・階級ランク/C+
《身体的能力》
・Lv.71
・HP9720/9890
・MP0/0
・攻撃力=3500(+1300)
・守備力=2795(+965)
・俊敏性=1625(+575)
・攻撃魔力=0
・支援魔力=0
・守備魔力=1790
《特殊技能スキル》
・【攻撃力上昇・Lv.5】
・【防御力上昇・Lv.5】
・【俊敏性上昇・Lv.5】
・【攻撃力上昇・Lv.6】×5
・【防御力上昇・Lv.6】×5
・【俊敏性上昇・Lv.6】×5
・【物理属性耐性Lv.1】
・【斬属性耐性Lv.1】
・【鬼人の一撃】
・【鬼気演武】
・【剣術・中級】Lv.7
《装備》
・鬼刀
常時身体能力補正はなし。【剣術】使用時に俊敏性、攻撃力上昇、会心の攻撃を発生させやすくなる。
《レベルアップ必要経験値》
・0/10050
《進化》
・Lv.88到達/攻撃力6500以上/守備力6000以上/俊敏性5800以上/モンスター討伐数3000体を超える/B級モンスターを討伐=赤肌の鬼人シュドウ/階級C+→B
・Lv.88到達/攻撃力7000以上/守備力5500以上/俊敏性8000以上/モンスター討伐数3000を【剣術】のみで超える/B級モンスターを討伐=斬影刃鬼ザンバ/階級C+→B
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読んでくださり感謝です。
腰をやりました。寒い時期にやる人が多いみたいです。みなさんも気をつけてください。




