第44話〜嫌〜
意識を失ったセンセーを母浄さんのベッドに寝かせて、俺達は同じダンジョンシリーズを持つ者同士友好を深めていた。
スカルグレイスは自分が話に加わる必要はないと、センセーを看ている。
どこから取り出したのか、編み物をして空いた時間を楽しんでいた。
アイツ、人の部屋で馴染みすぎだろう。
「あの骨の人って、暗内先輩のモンスターっすよね」
「ん? ああ、さっき捕獲した。ボスモンスターだったから強い味方になると思って……あ」
そういえばスカルグレイスに灰色の骸冠を返していなかっけど、これってダンジョンの心臓なんだよな?
その心臓を外に連れ出したら、このダンジョンはどうなる?
「なぁなぁ母浄さん。俺はここのダンジョンボスだったスカルグレイスを捕獲しちまったわけだけど、このダンジョンからスカルグレイスを連れ出したらどうなっちまうんだ?」
「一度私の支配下に置いたダンジョンはダンジョンボスがいなくなっても消滅しないので大丈夫ですよ。そのかわり、ダンジョンから得られる膨大な経験値がなくなってしまいますが……」
「あ〜、まぁ、しょうがないか。防衛の要になるのがこのダンジョンなら、レベ上げの為に失う訳にもいかないし。あともうひとつ、外に出ても大丈夫ってんなら、この迷宮装備を装備したスカルグレイスが外に出てもちゃんと強くなる?」
「はい。ですが本領を発揮出来るのはボスに指定したダンジョンの中だけです。外に出たら、流石にさっき暗内さんが戦った時ほどの力は発揮出来ません。ダンジョンの心臓は、ダンジョンの中にあってはじめて鼓動するので。それ以外は少し強くなるだけの専用装備です」
「なるほ、どぉ……おっけぇ、ありがと」
そうなるかぁ。階級が2つも上がるような装備がどこでも使い放題なわけないか。
とりあえずタブレットから灰色の骸冠を取り出し、スカルグレイスに投げ渡す。
「付ケテモ?」
「お前のだからな。むしろ装備していてくれ」
「アリガタキオ言葉……デハ」
俺が渡した冠をひと撫でしてから、スカルグレイスは角に冠をかける。
それだけなのに、モンスターとして放つ威圧感の重さが増す。
ここはダンジョンの中だから、まだC+級のクラウングレイスになるってわけか。
これが外になったらどれだけ変わるのかが分からないけど、仮にも迷宮装備。間違いなく一太郎やボタンちゃんの持つ武器よりは強い。
カーくん達以外にも魔法を使えるモンスターは欲しかったし、十分強力な戦力追加だろう。
「……そういえば、まだステータス確認をしていなかったな」
毎度お馴染み、タブレットを操作しクラウングレイスのステータスを確認する。
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・種族名/名前/骨教司教クラウングレイス(獣骨人スカルグレイス)/未名
・性別/不明
・階級ランク/C+(+2)
《身体的能力》
・Lv.76(+30)
・HP6860/8990(+5500)
・MP1150/1550(+1000)
・攻撃力=880(+700)
・守備力=890(+700)
・俊敏性=900(+700)
・攻撃魔力=1850(+1000)
・支援魔力=1500(+1000)
・守備魔力=1800(+1000)
《特殊技能スキル》
・【灰骨の教え】
・【特例種族値】
・【中級魔法・闇】Lv.3
・【消費MP軽減(小)】
《装備》
・灰色の骸冠=専用装備者・スカルグレイスが装備時、階級上昇補正。階級上昇にともない各ステータス“超”上昇補正。装備者が正当なC階級に至った時、階級上昇補正は消失し、ステータス補正能力のみが残る。
《レベルアップ必要経験値》
・128/3900
《進化》
・Lv.57到達=攻撃魔力1000以上/守備魔力1000以上=勇牛骨人ビーストグレイス/階級E+→D+
・Lv.58到達=攻撃魔力1000以上/守備魔力1200以上/支援魔力1200以上=骨人僧侶グレイスプレーテ/階級E+→D+
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いや灰色の骸冠の効果量エッグ。
装備したらステータスほぼ全て+1000とかバケモンじゃねぇかオイ。ゲームだったら間違いなくナーフ対象だろこんなん。
まず階級上昇補正とかいう壊れ性能。進化を必要とせず階級上げるとか……。
「……ん?」
迷宮装備の壊れっぷりに震えていたが、良く見れば魔力関連のステータス、E級にしては高すぎないか? 補正抜きにして元の数値は800、てか今のカーくんより高くね?
なんでこんなに……って、十中八九この【特例種族値】だよな。
《特異系特殊能力》
・【特例種族値】
・通常とは異なる力を持ち生まれた特例のモンスターが所持する特殊能力。通常モンスターとは成長が異なり、レベルアップ時に上がるステータス量が多い。特に特例種のモンスターが伸びやすいステータスはさらに伸びるようになる。
また、所持する特殊能力も強力な物を多く取得していく。
やっぱり。流石は“特例”と名に付くだけはある。こんな特殊能力を持っているのか。伸びやすいステータス、スカルグレイスは魔力関連がそれか。
E級時点でD+級、しかもステータス上昇系の特殊能力を複数取得させているカーくんに勝る魔力値。
効果量の高さが窺える。
「ほぇ〜、改めて見ると、本当にモンスターが捕獲出来てるの凄いっすね」
俺のタブレットを横から覗き込む器部くんは興味深げにスカルグレイスのステータスを見ていた。
「俺、モンスターを仲間にするタイプのゲーム好きだったんすよねぇ。浪漫じゃないっすか」
「器部くんの能力は浪漫じゃないのか? 【ウエポンマスター】だっけ?」
「いや、俺のも負けてないッスよ! 俺の能力はあらゆる装備を造る能力なんす。まだまだ最強性能装備は造れないっすけど、中々の物は造れるっすよ」
「へぇ。確かに浪漫だ。男の子は武器が好きって相場が決まってるからな」
「おお? 暗内先輩、さては分かる人っすね! いやぁ、俄然やる気出てきちゃったなぁ。待っててくださいね、暗内先輩にも良い装備造りますから!」
「おっ、マジで……いや、俺にじゃなくていいな。俺のモンスター達に造ってほしい。俺は身を守る防具だけで良い」
「ええ、暗内先輩ガタイ良いのにぃ。まぁ〜しゃーないッスよねぇ。モンスターを指揮する人が最前線で戦って、死んだら意味ないッスもんね」
「そういうことよ」
あらゆる装備を造れる能力、か。これまた万能そうな能力だ。
1人はダンジョンを創り、1人は装備を造り、1人はモンスターを捕獲。
言い方を変えれば、1人は城を作り、1人は剣を作り、1人は兵を生むとも言い換えられる。むしろこっちの方が分かりやすい。
ダンジョンシリーズはまさに、“なにか強大なモノ”と戦う為に生まれたような特殊能力だな。
天は人間にそんな力を与えた。最初から人間と天使が相入れないってのが分かってたのかね?
だとしたら良い性格してるよ。友達がいない根暗なタイプだ。
そんな性格の良いお天道様のおかげで、俺は世界を救う戦いに巻き込まれそうになっている。
本当に「なんでそうなった?」と問いたい。
さっきまでダンジョンボスを仲間にして戦力強化だぁ! と意気込んでいたのに、今はちっともテンションが上がらん。
母浄さんの話を聞く限り、現存するダンジョンを使い防衛用の砦にし、そこを拠点に俺が育てたモンスターが敵に立ちはだかる。モンスターの手には器部くんが手掛けた名装備達。
想像の域を出ないが、そんな構想を立てているんだろう。
──正直なところ“マジで嫌”と言うのが本音なんだよなぁ。
場の雰囲気は完璧に「みんなで一致団結。世界を護りましょう」みたいになっている。
流石にこの空気で「いやいや、俺は嫌ですwwww」なんて言えるわけがない。
シンプルにみんな良い子達だ。最年長の俺がそんな子供っぽい振る舞い出来るかっての。
表向きは、だ。表向きは付き合う。
俺の目標は、最強のモンスター軍団を築くこと。
世界を救うとか大変そうなのは任せて、俺はそれだけに心血を注ぐぞ。
いや、ほら? 俺が最強のモンスター軍団を作れれば結果的には世界を救うのにも貢献出来るだろうし?
機を見て俺は個別で動かせてもらいたいと言おうと思ったその矢先、母浄さんから放たれた言葉は真っ向からそれを否定するものだった。
「──みんなで、京都に行きましょう!」




