第39話〜呆気なく〜
180度変化した態度に、僅かな静寂が訪れる。
いや、クラウングレイスがずっと「オ助ケクダセェ、オ助ケクダセェ」と連呼しているから静寂ではないのだが、俺達の時間は間違いなく止まっていた。
……え? 誰、コイツ。
カタカタと骨を鳴らしながら、頭を抱えて跪いている。
その姿は、さながら神に救いを祈る信徒のような姿だ。
とてもじゃないが、さっきまで俺達に軽くない傷を与え、互角に戦っていたC級モンスターの力なんて感じない。
演技? いや、違う。本当に“なんの力も凄み”もないんだ。
「……鑑定眼」
【鑑定眼使用による鑑定結果を表示します】
『獣骨人スカルグレイス/階級=E+』
「……階級が、下がってる?」
「ハイ、ハイ。迷宮装備ヲ奪ワレタラ、私ナンテシガナイ骨デシテ……」
「迷宮装備……? センセー、コイツから奪った王冠を俺に」
「は、はい」
センセーがアイテムから王冠を受け取り出し、それを俺のアイテム欄に入れてタブレットを操作し所持アイテムから王冠を選び、詳細を開く。
・『灰色の骸冠』
・灰色に燻んだ、名も亡き王の冠。
・ステータス向上能力なし
んん? おいおい、なんの能力もないじゃないか。迷宮装備なんて大袈裟な名前出しといと、ただの古い王冠だぞコレ。
訝しげな目でクラウン……いや、スカルグレイスに視線を向ける。
「イヤ〜、ソノ、私ノ専用装備ト言イマスカ……エット、ダンジョンボスノ私ダカラ意味ノアル装備デシテ……返シテイタダケルト」
「そっか。ならコレはお前に……てなるわけないだろう。永遠にタブレットの中だ」
「アハハハ、デ、デスヨネ!」
俺に頭を下げながら、周りに立つ一太郎達にも「ドウモスミマセン、スミマセン」とひたすら平謝りする姿を見ると完全に毒気が抜かれてしまった。
鑑定眼からもコイツの階級がE+級ということが分かっている。
弱気な姿勢のわりに、モンスターとしてはそこそこ強いはずなんだが……正直F級のモンスターより弱そうに見える。
「でも一応……カーくん、電撃麻痺」
「ガァ」
「アヒンッッ!」
バヂンッッという電撃の音を鳴らし、倒れ込むスカルグレイス。
過剰なくらい身体をビクンビクンと震わせ、さながら陸に上がった魚状態。逆に危ねぇ、ほらみんな下がれ。角刺さるぞ。
俺は赤井さんの後ろに隠れ、空の匣水晶をスカルグレイスに向け放り投げる。
「アイタッ」
その一言を呟いて、スカルグレイスは匣水晶の中へと吸い込まれていった。
数秒後。王冠を被っている時と打って変わってなんの抵抗もなく簡単に捕獲が完了。
呆気ない幕切れとは、こういうことだろうか。思わず、激戦の跡である大聖堂を眺めてしまう。
そうそう、あの場所で骸歌で骨散弾を喰らい、あっちでボタンちゃんの【強振白斧腕】を……と記憶を遡り、改めて地面に転がる匣水晶に意識を向ける。
いや、呆気な。マジかお前。
本当に捕獲出来て……うん、間違いない。タブレットで捕獲モンスターのステータス一覧を見ても、獣骨人スカルグレイスという項目が追加されているから捕獲は成功している。
スカルグレイスの入った匣水晶を手に取り、コンコンと叩き「出てこい」と一言。
匣水晶から光が放たれ、スカルグレイスが女の子座りで現れた。
「エ、エ、エ? ナ、何事? アレ、モシカシテ貴方ハ……私ノマスター?」
いちいち身体を震わせながらじゃないとリアクション出来んのか? コイツ。
両手を合わせ「貴方ガ神カ……」と震えるスカルグレイスをジト目で見つめる。
「おい、会話は出来るか?」
「ハイハイ、会話ダケガ私ノ取リ柄ナンデス」
「ほぉ、心強い。じゃあ、質問だけど……お前が、“こんなに意思疎通が取れるのも”迷宮装備、もしくはダンジョンボスだからか?」
「イエ、私ハ特例種ト呼バレルモンスター……ラシイデス」
「特例種……? 聞いたことないけど」
らしい、という誰かから教わったかのような言い方に引っかかりを覚えるが、今は先に情報が欲しい為あえて流し、スカルグレイスの話に耳を傾ける。
「私モ最近知リマシタ。自分モ他ノモンスタート何カ違ウナァ〜ト思ッテイタンデスガ、エエ、マサカ自分ガ? ト驚イタモノデ……」
「ああ、OKOK。お前が最近知ったのは分かった。それで、特例種って?」
「ア、失礼。特例種トイウノハ文字通リ、特別ナ例トイウコトデス。普通トハ違ウ出自、成長ヲ遂ゲルモンスター。私ハ、産マレタ時カラ高イ知能ト、人語ヲ喋ル能力ヲ待ッテイマシタ。ダカラE級モンスターデモ流暢ニ喋レテイマス」
「へぇ……なるほど、特例種。そんなのもいるのか。気をつけないと。じゃあ、迷宮装備っていうのは?」
「端的ニ言ウナラ、ダンジョンノ礎ニシテ、ダンジョンヲ生カス核。心臓ト呼ベル物デス。迷宮装備トハ言イマスガ形ハ様々デ、武器ヤ防具、装飾品、ハタマタ内臓ヤ骨トシテ、ダンジョンボスガ所持シテイマス。私ノ姿ヲ見レバ分カルト思イマスガ、ダンジョンボスヲ強化スル力ガアルミタイデス。私ハソウ“教ワリマシタ”」
教わりました、か。言葉の端々から誰かに聞いたことを喋っているというのを感じていたけど、いよいよ誰かに教えられた? という疑問が確信に変わる言葉が出てきたな。
「……教わったって、誰に?」
「──【ダンジョンマスター】トイウ、女性ノ方デス」
読んでくださり感謝です。
何度か文字数のことを言われるのですが、申し訳ない。
書き慣れてきたら平均文字数は上がってくると思います。




