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第38話〜え?〜


 【強振白斧腕ホワイト・ラリアット】は思惑通り直撃するが、ボタンちゃんはその衝撃と勢いを逃さず、そのままクラウングレイスを地面へと叩きつけた。


 叩きつけられたクラウングレイスを中心に蜘蛛の巣状に大地がヒビ割れ、轟音が鳴り響き、砂塵が舞う。

 ヨシコが与えたさっきの一撃とは違い、完全な隙をついた防御すら許さない完璧な一撃。

 攻撃力上昇に加え、【強振白斧腕】のバフ効果で与えた攻撃は普通のD級を遥かに凌ぐ。

 例えC級と言えどかなりのダメージを負ったはず。


 ダメージを負い動きが鈍った好機いまを逃す俺じゃないぞ!

 

麻痺雷撃パラライズで動きを──」

「──調子ニ、乗ルナヨッッ! 【初級魔法・闇/黒波動ブラック・ウェイブ】ッ!」

「んなッ⁉︎」


 勢い良く立ち上がったクラウングレイスは瞬時に魔法を発動させて、黒い衝撃がドーム状に放たれ強引に距離を離される。

 

 もの凄い勢いで突き飛ばされたが、ダメージはない。すぐに体勢を立て直した一太郎が、地面に打ち付けられる前に俺を抱き止めてくれた。

 一太郎に下ろされた俺はクラウングレイスへ目を向けると、フラフラと覚束ない足取りで立ち上がっている。


 眼窩部分はヒビが入り、黒いモヤが血のように漏れ出ていた。

 

「……ん?」


 立ち上がった奴は、真っ先に自分の角へ手を伸ばした後にヒビ割れた眼窩をさする。

 ……攻撃の直撃を受けた顔ではなく、さきに角を気にした? その角に目を向ければ、あるのは灰色に燻んだ王冠……王冠? ……王冠クラウン……“クラウン”グレイス……。


「……おや? おやおや?」


 もしかして、お前そういうことか? お前の“本体”は牛の頭蓋骨じゃなくて──そっち?

 一瞬、俺が思考の海に深く沈んでしまった時、


「骸歌【屍は朽ち果てど立ち止まれず】!」

 

 奴に骸歌を唱えさせる隙を与えてしまった。

 再びクラウングレイスの周囲を5体のグラスボーンが……いや、“増えてる”?

 呼び出されたグラスボーンの数は、10。

 さっきの倍であり、そこまでの数になるといくらF級モンスターと言えど話は変わる。


 実質、奴等グラスボーンはモンスターというよりも動く爆弾だ。アレを気にしながらクラウングレイスの相手をするとなると……面倒くさっ。あまり考えたくないな。

 

 だが、アレは奴がようやく本気を出してきたっていうことだろう。さっきまでの飄々とした胡散臭い雰囲気をまるで感じない。

 

 本気を出した。つまり、それだけのダメージを負った。

 C級モンスターのHPを“削れた”という証拠に他ならない。


「危険デスッ。オ前ハ、危険過ギル……! 私ガ、何ノ、何ノ抵抗モ出来ズニ一瞬デハアルガ封印サレタ……!」


 プルプルと震える姿に、さっきまでの余裕はない。

 俺に対するヘイトがMAXってか? それならそれで、“好都合”。

 俺の視線の先……俺にヘイトを向けるクラウングレイスのさらに先。

 魔法により飛ばされたライカンスロープのゴンザレス、センセーと目が合う。


 “頭を指差し、タブレットを掲げる”センセーとだ。


 センセーも見ていたんだ、奴が咄嗟に角に手を伸ばしていたのを。

 それを見て、あの王冠を特殊能力で奪おうとしているんだ。

 なるほど、確かにあの王冠がアイテムであればセンセーの能力で奪うことが出来る。

 咄嗟に確認してしまうということと、名前にさえクラウンと付いているんだ。あの王冠が全く無関係な訳はない。

 奪えるのなら、何かしら起きるだろう。


 となれば、俺がやれるのはひとつ。

 センセーの行動に気づかれないように、クラウングレイスのヘイトをさらに稼ぐ。


「はは、そんなに俺の能力が怖かったか⁈ 5体しか呼んでなかったグラスボーンを10体も呼んじゃって。さっきまでの余裕はどうした! やれやれとか首を振ってやがっただろう! 俺が代わりにやってやるよ。やれやれ、C級モンスターもネタが割れれば大したことないなぁ?」

「ッッ人間ガァ! 【中級魔法・闇……クソッ。足止メモ出来ナイトハ、使エナイ人形デスネェ!」


 怒髪天。眼窩に溜まる黒いモヤを勢い良く噴出させ、奴は魔法を発動させようとしていたが、横から赤井さん(青鎧ブルーナイト)が狛犬コマケン(双犬獣オルベラム)の背に乗り剣で斬りかかる。

 

「邪魔ナ……!」


 クラウングレイスはすぐ近くにいたグラスボーンの頭を掴み、力任せに赤井さんへ叩きつけようとした所で、双犬獣の真価が発揮される。

 双犬獣オルベラムは2体で1体と数えるモンスター。赤井さんが跨がる狛犬コマケンとは別の片割れが、グラスボーンを掴んだ腕に噛み付いた。


「ガゥルルル……!」

「コノッ」


 噛みつかれたことを瞬時に理解したクラウングレイスは掴んだグラスボーンを離し、その離したグラスボーンの上に狛犬コマケンを押し付けて……まさか!


「骸歌『四散無惨。死してなお浮かばれず』」

「ギギャッッ」


 ゼロ距離から骨の散弾を食らってしまった狛犬コマケンは、一瞬にしてHPを失いその身体を光にして消えてしまう──のは、計算通りだと言わんばかりに、赤井さんの下でニヤリと笑う狛犬コマケン


 【喪失強化ブースト・オブ・ザ・デッド】発動。

 効果は、双犬獣オルベラムが倒された時に前ステータスを+200。

 跳ね上がるステータスは、クラウングレイスをさっきのボタンちゃんのように混乱させる。


 そこへ乱入する、ヨシコ達ライカンスロープ隊。ニノ助達、進化エヴォルブゴブリン隊。それに続く赤井さんと狛犬コマケン

 

「良いぞ! 完全に流れを取った!」


 流れが俺達に来ていると、さらなる追い風が吹く。


「さ、智さん! お、王冠、と、盗れましたぁ!」


 あのセンセーが離れていても聞こえる大声で俺にそれを伝えてくれる。

 確かに、角にあった灰色の燻んだ王冠はなくなっていた。

 やっぱあれアイテムだったのか!


「ッッ! ア、ァァァァアアアアッ! ナ、ナイ⁈ ナ、ナンデ、ドウヤッテ……⁉︎」

 

 王冠を奪われたクラウングレイスの豹変ぶりは、凄まじかった。

 王冠がその角にないと分かると、頭を抱えて跪きプルプルと震え出し──



「降参! ダメ! ムリ! ヒィィィィ、オ、オ助ケェ……! 悪イモンスタージャナインデスゥ……!」

「………………え?」

読んでくださり感謝です。

日間ランキング5位に復活していました。ありがてぇ……と思いながら書いております!

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― 新着の感想 ―
[一言] 調子に乗った後ののび太君の様なムーブ・・・!!
[一言] 王冠付けたら気が強くなっちゃうタイプの人だこれ......!
[一言] プルプル ぼく わるいスライムじゃないよ!
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