第36話〜苦戦〜
再び現れた5体のグラスボーン。
永久湧きかよ、あの骨! 意識をクラウングレイス以外に割かれるのは嫌だが、幸いF級だからステータスが高くないのが救「骸歌『屍は生者への渇望に取り憑かれている』」──んもぉぉぉなんだよ次は⁉︎
クラウングレイスが祈りを捧げるように両手を合わせると、グラスボーンの身体を灰色のモヤが覆う。
雑魚モンスター生成、それを操るボス、ボスの能力行使で様子の変わる雑魚モンスター……これから弾き出される答えはッ。
「バフだ! ステータス変わるぞ、普通のF級モンスターだと思うな! 爆散があるから一瞬で潰すんだ!」
「フム、ヤハリ貴方ガ先導者デスネ? 連携ヲ取ララルト面倒デス。人形ニ気ヲ取ラレテイル間ニ、貴方カラ先ニ殺リマショウカ。【初級魔法・闇/黒弾】」
祈りを捧げていたクラウングレイスは手を解き、両掌に漆黒の球体を生み出しそれを俺に向かい撃ってきた!
先に俺を殺るって? 野晒しの弱点である俺が、なんの対策もしてないと思ってんのかよ──!
「蛇丸! スネちゃま! 【スケイル・ハンマー】!」
「シャラララァ!」
俺の両脇に控えていた2体は俺を守るように前に出て、向かってくる黒弾に特殊能力【スケイル・ハンマー】を放つ。
【スケイル・ハンマー】は能力使用時、大怪蛇ヴェノの尻尾部分の防御力上昇、攻撃力上昇効果を付与する能力。
蛇丸達の尻尾が2つの黒弾を撃ち払い、俺に届くことはなかった。
硬質化した尻尾の鱗に傷は付いていない。初級魔法って言っていたから、あまり威力は高くないんだろう。
「自分ノ視界ヲ、デカブツデ潰ス。利口デハアリマセンネ」
「んなッ⁉︎」
背後から囁かれる、クラウングレイスの声。
今の一瞬で背後に回って……なんて速さしてやがんだよ、ほぼ瞬間移動じゃねぇか!
「でもさ、背後に回って敵に語りかけるテンプレって、今じゃ通じないぜ?」
「ナニヲ──ッ⁉︎」
「ガルルァ!」
特殊能力【野獣危勘】。危機的状況、または自分達へ危険が降りかかる物を事前に察知する能力。
今の場合、俺に危険が迫ることをいち早く察したヨシコがすぐに俺の元へ戻って来ていたんだ。
死角から殴りかかったヨシコの一撃ではあったが、腕を交差して防御することで直撃を免れるクラウングレイス。
だがそこは素手で攻撃した時にステータス補正がかかるライカンスロープの一撃。
衝撃まで逃がすことは出来ず、クラウングレイスは打たれた球のように弾かれた。
「グルル……!」
歯茎を剥き出しに、相手を威嚇するヨシコ。
そのヨシコに続くように一太郎、ボタンちゃん達もグラスボーンを片付けて俺の元へ戻ってきた。
それを腕を交差させたままジッと見ているクラウングレイス。
「……フム? 怪人狼カラ、想定ヲ超エル力デ殴ラレマシタネ。貴方達人間ノ言ウ、D級モンスターカラハ考エラレナイ。支援魔法ヲ使ッタ痕跡ハナイ。ハテ、何ヲシタノカ聞イテモ?」
「馬鹿正直に話す訳ねぇだろ」
「フフ、怖イ怖イ。怪人狼デコレナラ、ソチラノ白頭ハ想定ノ遥カ上ダト考エタ方ガ良イデスネ。近ヅカナイヨウニシマショウカ、ネェ?」
ヨシコの一撃を受けた両腕を「痛イ痛イ」とわざとらしく揺らし、骸歌を唱え再び5体のグラスボーンが呼び出される。
「あの技、後隙なさすぎるだろ! ズリィ!」
だが、今までと違う動きを見せるクラウングレイス。
その身体を人の形に構成している最中のグラスボーンの頭を掴むと、奴は力任せに俺達へ投げ飛ばしてきやがった!
連投。5体のグラスボーンが身体を構成しながら俺達の元へ高速で飛来し──、
「骸歌『四散無惨。死してなお浮かばれず』」
──爆散した。
「ッッ! 密集!」
俺の元へ集っていた全員が、俺とセンセーを守るように身を寄せ合う。
一番内側に一太郎達が、その次にヨシコ、その外を身体が大きく頑丈なボタンちゃん達と蛇丸。
宙を飛ぶ2体は少しでも被弾数を減らす為、風魔法で飛来するグラスボーンを撃ち落としてくれていたが、C+級の膂力で投げられた人骨の勢いは想像以上に速く、3体は俺達の間近で爆散した。
ザクザクザクザクザクザクザクザクッッッ。
「……!」
骨片が地面に突き刺さる音、みんなの身体に突き刺さり貫通する音が、痛みを押し殺す為に飲み込む息の音が聞こえてくるっ。
特に一番外側にいたボタンちゃん、猪助、蛇丸、スネちゃまはかなりダメージを食らったはず。
ポーション……いや、速さのない4体はクラウングレイスに近づくだけでも苦労する。
「なら、今は……センセー、目眩しに奴の顔面めがけて矢を! カーくん、すーちゃん! 雷魔法と風魔法を奴に向けて撃て!」
「はい……!」
俺の声を合図に、密集陣形を解く。
みんなが退く最中、その隙間からセンセーの矢が不意打ち気味にクラウングレイスへ放たれる。
それと時間を空けて、雷魔法と風魔法が奴へ迫っていた。
「骸歌『屍は……オット」
新たなグラスボーンを呼び出そうとしていたようだが、それを中断して後ろへ飛ぶことで避ける。
センセーの矢、雷魔法と風魔法は虚空を通り誰もいない地面に着弾。
「危ナイ危ナイ。能力ノ使用中ニ攻撃ヲスルノハ、最初ニ言ッタ通リ無粋ダト……オヤ? “四体足リテイマセンネ”?」
奴は腕を組み、指を顎に当て不思議そうな声音で呟く。
俺はボタンちゃん達の脚の速さではクラウングレイスに近づくのに骨が折れると考え、奴がセンセーの矢と魔法に気を取られている間にヨシコや一太郎達でボタンちゃん達を隠し、匣水晶の中へしまったんだ。
確認すると4体は総じて500前後のダメージを食らっていた。やっぱりあの骨散弾は削り性能が高い。
全回復は無理だろうが、数分も経てば200くらいは回復出来る。ポーションを節約する為に、今は俊敏性と小回りのきくヨシコや一太郎達をメインに立ち回る。
一番大事なのは、奴に匣水晶への“出し入れ”を見られないことだ。
「……ハテ、ハテハテ? 謎デスネェ。アンナ巨体ガ……瞬時ニ姿ヲ消ス。トイウヨリ、コノ聖堂ニスラ居ナイ?」
“ボス”モンスターのクセに、俺達の手の内を探り対策しようとしてやがるぞ、あの骨。
ボスキャラがやって良いことじゃないぞ、それは。
攻略はこっちの武器って相場が決まってるだろう。
ただまぁ、これはゲームではなく現実。明確な意思があるモンスターである以上、時間をかければ俺達の動きを見切り対策をされる。
なら、俺達は個々の強さと数を活かし奴がひとつ俺達を攻略する度、2つ3つの攻略法を見つければ良い。
「……見つけてみやがれ、俺達の攻略法。こっちは、もう“兆し”が見えてきたぞ?」
読んでくださり感謝です。
魔の5時起き23時帰宅の二連勤から帰還しました。
当分二日間も投稿が開くことはないと思います、




