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第13話〜【醜人商会】の不正利用〜


「萌美センセー。どう? 近くに良さげなアイテム落ちてる?」

「は、はぃ。い、1.3km先に、わ、ワイルドボアの、毛皮がありますっ」

「おっけー。それ取りに行きますかぁ」

「は、はぃぃ……」


 ボタンちゃんの肩の上に乗りながら、小さく相槌を返してくれるのは、ビニール袋をかぶっていない萌美センセー。

 見慣れた面子が俺達を護るように陣形を広げ、今日も今日とて――萌美センセーのレベ上げじゃ!


 萌美センセーの押しに負けてはじまった奇妙な同居生活も、かれこれ一ヵ月。

 早々にダンジョン攻略に乗り出そうと思っていた俺の計画は見事に崩れ、この一ヶ月は萌美センセーのレベ上げ、ついでに手持ちモンスターであるみんなの戦力底上げに当てていた。


 最初は言葉につまり、呼吸が乱れてコミュニケーションが取れなくなる時もあったが……見てくれ、まだ詰まったりはするが、言葉のキャッチボールが出来るようになったんだ! 萌美センセー!


 積極的に話しかけたからね! 流石に自分より酷いコミュ障の人が相手だと、自分が積極的にならざるを得ない。

 そもそも、萌美センセーには今この世界がどうなっているのかということを教えないといけないから、必然的に会話は増える。おまけに一緒に住んでるし、ちょっとくらい仲良くなれるわな。


 流石と言うべきかセンセーは地頭が良く、俺の教えたことをすぐさま吸収。

 おかげさまで、早い段階でレベル上げに移行しセンセーに戦闘経験を積ませることも出来た。

 【醜人商会しゅうじんしょうかい】以外にも【弓術】という、弓矢を扱えるようになる特殊能力スキルを持っていたから尚更なおさら都合が良かった。


 最初はビビり散らかしぴーぴー泣いていたが、この人の為だと戦闘を続行。

 「出来る出来る! 先生なら出来るよ! 心を熱く、熱く燃やすんだッ!」「先生すごい! やれば出来る子!」と褒めに褒めて、一太郎やボタンちゃんにも手伝わせてまぁ褒め称えた。


 現代っ子は褒めて伸びる。俺もそうだ。褒められて嬉しくない子なんておらん。

 萌美センセーも例に漏れず、「……ぇ、ぇへ、ぇへぇへ…」と誇らしげに戦っていた。


 今や立派な……うん、まぁ? 立派なアーチャーに様変わり。

 俺が近くにいないと電動マッサージ機のように震え出すところ以外、とても立派に戦ってくれるようになった。

 

 レベルも26まで上がり、ステータスなんて俺を凄い勢いで追い抜かして行きよったよ。

 上板橋ダンジョンの近場なだけあり、モンスターが数多くいる。レベル上げの環境としては申し分なかったのが大きかったな。

 

 このレベ上げの一環として行っているのが、萌美センセーの特殊能力【醜人商会しゅうじんしょうかい】を使ったアイテム集めだ。

 

 範囲内にあるアイテムを動かずして入手出来るその能力。一日8個という制約があり、強いが使い辛い能力と思われたが、《盗品リスト》にはそのアイテムまでどのくらい離れているかという距離が表示されている事が判明。

 

 おいおい、マジかと。自分を中心とした範囲内に存在するアイテムを全て把握出来て、オマケに距離を測っていけば容易に場所まで特定出来るってヤバくない? 自分の足で取りに行けばいいんだぜ?


 その能力を使うことで効率良くレベ上げを行いながら、同時に良いアイテムもゲット出来ている。

 俺はアイテムが潤いさらにモンスターを強く出来る、萌美センセーはレベルが上がる。

 完全なるwin-win。もはや正当な能力の使い方をする方が少なくなっている【醜人商会しゅうじんしょうかい】くん可哀想。


 最初は萌美センセーが死なないようにという善意でレベ上げをしようと言ったけど、なんなら俺の方が得している気がするなぁ。

 (微小)クラスよりデカい魔獣結晶やモンスターアイテムは手に入るし、萌美優理の新作や続編が読める日々。


 あれ? もしかして世界が崩壊する前より人生潤ってる? 俺の今までの人生とは一体……。

 

 とまぁ、軽く悲観するフリをするが、なんだかんだ萌美センセーに出会えて本当に良かった。

 

「あ、アイテムとの、距離が、ちぢ、縮まってるので、方向はこっ、こっちであってますっ」

「りょーか……っ! みんな! 2時方向、敵3! カーくん、魔法で先手を撃て!」

「ガァー!」

「ゴブギィッ!」

「ウォンッ!」


 アイテムを求め歩いていると、前方斜め方向に敵影を発見。

 あの巨体の影、オークの集団だな! 俺達に気づかれたことを察した集団は、大股で俺達に向かい駆け出す……が、遅い。


 すでにカーくんがオークの足元に風魔法撃ちだし、オークの足を止める。


「センセー!」

「はぃぃ……!」


 1ヶ月間の特訓もあり、戦いがはじまったらすぐに弓を構える癖が付いていて、すでに照準をオークにセットしていた。


「……ふっ!」


 放たれた弓矢はオークの鼻の穴に命中。「ピギィーッッ!」という奇声を上げるオークに、一太郎とゴンザレスの刃が迫っていた。


「ナイスエイム、センセー。鼻の穴とかエグい所狙ったねぇ。眼じゃないんだ」

「……眼を、ね、狙っ、たんです……」


 しゅんと身を縮ませるセンセーに慌ててフォローを入れる。


「いや、顔に当たれば十分十分! ヘイトを向ければ近接の一太郎達がさらに戦いやすくなるんだから! 当たったもん勝ち! 狙った所を狙った通りに撃ち抜くなんて、これからこれからぁ! まずは的に当てた自分を褒めよう! センセー、偉い!」

「……ほ、ほんと、です?」

「センセー凄い!」

「ぇ、ぇへへ」

「やっぱりセンセーと一緒に戦えると違うなぁ、遠距離で支援出来る人が1人いるだけで凄く助かるなぁ〜」

「も、もう、一度や、やってみます……!」


 ふんす、と鼻息荒く一太郎達と戦っているオークに弓で狙い出すセンセー。

 ちょろい。この人、おだてられたらやっちゃうタイプだわ。悪い人に都合良く使われるセンセーが容易く目に浮かぶ。そうなる前に会えて良かった、マジで。


「よしよし、一太郎達が良い感じに翻弄して消耗してきたな。ボタンちゃん、トドメに暴れてさしあげろ!」

「ブルァァアアッ‼︎」


 猛々しい咆哮上げながら、オークらしからぬ速度で突進していくボタンちゃん。

 ボタンちゃんにビビり動きが止まったオークの顔面に、愛用武器である道路標識が叩き込まれる。

 標識部分が顔面に深々と突き刺さり、易々と一体を仕留めてしまった。流石はボタンちゃん。


 体力の削れたオークを倒すなんて造作もないボタンちゃんは早々に戦闘を決着させ、ドロップした魔獣結晶を持って帰ってきた。


「よし、お疲れ〜みんな。良いチームワークだったぞ。萌美センセーも、ナイスアシスト」

「ぃ、ぃぇ、み、みなさん、つ、強いから……」

「だってよ、お前等」


 萌美センセーに褒められ、皆誇らしげに胸を張っている。

 まぁ、実際強い。というか、“強くなった”。

 上板橋に着けば、早々にダンジョン攻略をしようと思っていたけど今はこの通り萌美センセーのレベ上げを行なっている。

 

 勿論、コイツ等のレベルも上がる。

 レベルが40を超えた辺りだろうか。レベルが上がった時のステータス上昇値が高くなったのだ。

 そのおかげもあり、同階級のモンスター相手ならチームが組んでいるのもあって危なげなく圧勝するまでになった。


 意図せずしてパーティーの強化を図ることが出来て、なんか得した気分。

 すーちゃんは宵闇烏への進化を果たし、カーくんに関してはもうすぐ進化出来るくらいレベルが上がっている。

 

 Eランクのモンスターが俺のパーティーに……う〜ん感慨深い。

 最初はオールGランクで、チクチク頑張ってきたのが昨日のように思える。


 この後も数度の戦闘を挟みつつ、無事にアイテム『ワイルドブルの毛皮』をゲット。

 これを上板橋集会場にまで持っていけば装備品として加工したり、別アイテムとの交換が出来る。


 こういうモンスター固有のドロップアイテムが落ちる確率はそんなに高くないから、まぁまぁ良い装備品になるんじゃないかな。


「よし、今日はこのへんにしましょか。センセーが欲しいアイテムとかある?」

「ぃいえ、な、ないですっ」

「じゃあ帰りますかぁ。今日もお疲れさまな〜お前等〜。もう一踏ん張り頼むぞ!」

「ゴブ」

「ワン」

「ブフ」

「よしよし、良い返事だ」

「……ふふ」

読んでくださり感謝ですっ!

夜に14話を投稿します!

誤字脱字、正しくない言葉の使い方などがあれば教えてください。

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