ランドワーゼという女
コロナだからこそ!!
私は女にとっての最大の幸せを知っていた。それは
【結婚】である。
「いい男性と結婚しなさい!そうすれば、幸せになれるから。」
母はよく私たち三姉妹に言い聞かせていた。なぜそんなに言い聞かせるのか。跡継ぎである男の子を産めなかった母の責任を私たちが背負わされているのか。
長女の姉は非常にきれいな人だった。お見合いも多くの人に誘われていた。母が吟味しているようではあった。母の言う良い男とは、経済力や血筋ことである。
姉がどんなに赤らめていても、その男が貧しければ、母は承諾しなかった。姉がどんなに拒んでも、母さえ良いと思えば、結婚するのである。どうしようもない世界である。
結局、長女は王家の血筋が流れる公爵と結ばれた。我々も名門貴族の血筋が流れているため男も承諾した。姉は何も言わなかった。
「良い男だといいわね。」
私は姉に何度もそっと耳打ちした。
しかし、姉の婚約者は2年後になくなってしまった。
交通事故である。 葬式で誰よりも泣いていたのは母であった。姉はというと出る涙はもうないという感じがした。
母には男が死んだことよりも、王家の血筋が我が一族にも流れなかったことが残念で仕方なかったのだろう。痩せこけてしまった長女には母は関心を持たなかった。
次女の婚姻はその数ヵ月後に決まった。相手は新興企業の社長で顕示欲が強そうな男だった。次女は穏やかで欲のない人だった。だからこそ、相性が良いのかもしれない。母はおそらく利益のために選んだのだからそんなことは考えてもいなかっただろう。
しかし、次女の婚約者の会社は倒産した。その反動で、婚約者は田舎で農業をはじめるなんて言って、母は激怒した。
次女は元々きらびやかな生活に執着はなく、夫の農業を手伝うことを躊躇いなく決めてしまった。母はそれにも激怒して必死に止めていた。
「私、もう決めたから。」
次女はそういうと母には黙って家を出た。残された私は覚悟を決めた。
「次は私だ!!」
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早朝、メイドは私の部屋のカーテンを開けた。気持ちの良い朝だと知った。朝日はメイドを通して私に差し込む。随分、長いこと眠っていたことを知る。
するとドア越しに靴音がした。それもかなり速い音だった。ドアがひねり開けられる。
「ランドワーゼ、、、決まったわよ!!」
何が決まったのか、そんなもの分かっていた。
そうお見合い相手である。母の嬉しそうな声は相当な男を捕まえたことを意味している。
母は周囲からとても誉めれて生きてきた。それは何か偉大なことをしたわけではなく、美しいために、金のある男と結婚しただけだった。しかし、跡継ぎが産めないことが分かると周囲は母を罵った。父でさえも母をしばしば罵った。
私は分かっていた。女の幸せは結婚だけではないことを。
むしろ、結婚が不幸を生んでしまうことさえあるのだ。
しかし、一度結婚というレールに乗るからにはなんとしても幸せにならないといけないという野心があった。
私は長女よりも次女よりも母に似ていた。打算的で相手を利用しようとするところがとりわけ似ていた。女としての幸せを過去の姉の失敗から学び、すっかり母の子供になっていた。
「さあランドワーゼ、準備なさい。」
持っているなかで一番綺麗なドレスを纏い、母は機嫌良さそうに私を案内する。私の歩き方は淑女そのものだった。
アルプスの山の蝶のように歩いて見せた。母曰く、相手は今、勢力を伸ばしつつある政党のリーダーであると。圧倒的なリーダーシップで国民から厚い支持があるそうだ。
(申し分ないわね。)
幸せは目の前まで来ていた。しかし、私は跡継ぎが産めずに愛を失った母のようには絶対になりたくなかった。だからこそ、結婚してからの方が重要だった。
「失礼します。」
愛嬌の良い声が部屋に響き、未来の婚約者は目の前の椅子に王子のように座っていた。
結婚とは、支配する側とされる側がいるようだ。ならば私はこの人生ボードを支配しなければならない。