『鍵(カギ)による、支配と解放』・・・諧謔的物語⑻
『鍵による、支配と解放』・・・諧謔的物語⑻
㈠
無数の星が、闇夜、揺れている。自分の視覚がおかしくなったのかと思ったが、正常だ。思うに、自分はこの現象が夢の中の出来事だったのではないかと考えるようになった。白昼ならまだしも、闇夜の現象体験などあてにならないだろう。完結に述べて、自分は夢の中で異次元へ行く。
これもまた、鍵を想像した、支配者の見せてくれる夢だ。夢は自由である、本質的に自由に拘束されている、高速の光の様に、目覚めた途端何事もなかったかのように、物事は推移するし、困難も不安も、夢の出来事だったと判別できれば、安心するというものだ。
㈡
不可視の現象は、鍵を想起させる。まるで、何も知らなかった赤子の様に、自分は自分としてしか居れないのだ。虚脱しようにも、破壊しようにも、自分は自分としか生きていけないし、死んでいくしかない。自己破壊衝動は、鍵の様に、危険な外界へと向かう。
ただ、単なる思想の発生ならば、万人が恐怖しないが、思想が人を乗っ取ると、世界が恐怖へと落とされる。不可視の現象を食い止めて、ただ、そのままで、絵に放り込むように、封印しなければいけない思想もまた、鍵を必要としているのだろうか。
㈢
水没した宇宙船が、彼方の水平線へと足を伸ばす時、逆に太陽が月にとって代わり、太古の昔は、闇が人々を封印していたのだ。それがやがて人類の力によって、朝も夜も、朝の様に生き生きと生きだしたのであって、それを敗北と取る思想家は少ないだろう。
何れは、人間は、自分からの解放を願いながら、自身を支配している。自分自身の支配、それは、コントロールということだが、問題は複雑であって、自分で自分を解放させることが出来れば、誰にも迷惑を掛けずに、鍵の在り処を、神が導くだろう。