恐ろしき野望
私はエミリーと話も合うので、一緒に居る事が多くなり、私のお店にも遊びにも来てくれています。
アレクセイも混じり3人でお昼を食べたりもします。
目の端にリクイド殿下とティアの姿をチラチラ目に入りますが、その度に逢い引き記録は欠かせません。
「 ディーネ 今日も記録は、ばっちりかしら」
「当たり前よ、あのバカ王子ゆるさないんだから」
「本当ね、もう呆れてものを言うのも嫌な感じよ」
「でも まだ好きなんでしょ」
分かるんだからねって、ディーネが私に抱きつきます。
「そうだね。あのふたりの姿を見ると、心が痛いわね」
私は顔を歪めてしまう。
「アレクセイはどうなの?とても仲がいいじゃない」
「アレクセイは友達よ、それにリクイド殿下の側近だしね」
「そうね、深入りしない方が身のためね、まぁ私がいる限り愛し子のレイチェルに、あのふたりから危害を受けさせないけどね」
危害を加えたらコテンパンにしちゃうんだから。
「ディーネがいれば、百人力だね」
「そうよ、任せて」
にっこり微笑む。
そうなのだ、上位精霊は怒らせると国をも潰してしまう恐ろしい力を持っているのだ。
まさか私が上位精霊の力で王国を破滅に導き、ティアが聖女の力で救うんじゃないでしょうね。
こわ、今怖いこと考えたわ。
でも、ティアは聖女の力を示していない。
そうこの世界は、ネット小説に出てくる人達が確かにいる。
でも内容が少し違う。
「あー、大事なこと忘れてた」
「どうしたの。大きな声出して、びっくりするじゃない」
「ディーネ、私ティアに意地悪してない、だから何も起こらないんだ」
「えー、そこ。じゃあ意地悪しなければ、普通に婚約破棄だけになるの?」
「そうかもしれないわ。じゃあこのまま私何もしないわ。もうリークと元には戻れそうに無いもの……」
いつかはこの寂しい気持ちが、無くなるんだろうな。
記録だけはとり続けて、私に非がない事を示そう。
「あの女、この頃全く邪魔しなくなって良かったけど、逆に怖いわ」
私は、ティア・マクガイヤー子爵令嬢。
この世界に転生してきた。前世は女子高生をやっていた、紺野真理。
私が読んでいた、ネット小説「転生聖女は王子様と王国を救う」にそっくりな世界。
ヒロインのティアは、悪役令嬢のレイチェルに虐められるはずなのに、今は特に何も無い。
レイチェルが仕掛けてこない
どういう事
あれだけリークにいちゃついてるのに。
本当なら怒り狂ったレイチェルは、闇に落ち。
破壊の魔術、闇に染まりし魔王アングラージの元で、その力を倍増させ、リクイド殿下と王国を破滅に追いやるはずなのに。
それにおかしいのは。
私は、聖女として転生しているはずなのに、その能力が発動しない。
今の私には魅了魔法だけ。
聖女なら使えるはずの光魔法が使え無いなんて、リークに知られたら……。
このまま、上手いことリークと婚約して、王太子后にならないと。
ぼやぼやしていられない、取り敢えずレイチェルに喧嘩をふっかけないとね。
小説通り話を進めないと、私が危ないわ。